【プロレスこの一年 #24】馬場と猪木の引き抜き合戦 ハンセンの電撃移籍、初代タイガー鮮烈デビュー 81年のプロレス

(左から)アニマル浜口、ラッシャー木村、寺西勇(写真は83年)【写真:平工 幸雄】
(左から)アニマル浜口、ラッシャー木村、寺西勇(写真は83年)【写真:平工 幸雄】

ホームリングを失った国際勢が新日本に参戦

 7月には国際プロレス最後のシリーズ「ビッグ・サマー・シリーズ」がスタートした。16日に韮崎で開幕した全13戦のサーキットは北海道羅臼町民グラウンドで終幕、14年10か月の歴史に幕を閉じたのである。国際最後の王者(IWA世界ヘビー級)はラッシャー木村。木村は8・6室蘭での金網デスマッチでジ・エンフォーサーを破り、防衛。これが最後の同王座戦となった。

 ホームリングを失った国際勢のうち、木村&アニマル浜口&寺西勇の3人は新日本に戦場を求めた。9月7日、新日本が10・8蔵前での対抗戦を発表。大会に先立ち、木村らは新日本9・23田園コロシアムに来場、大デモンストレーションを敢行はずだったが、リングでマイクを取った木村が「こんばんは」とあいさつしてしまったため場内は失笑に包まれた。場を必死で取り繕ったのが浜口。これが有名な「こんばんは事件」である。

 伝説となった田コロでは、ほかにもさまざまなビッグインパクトがあった。アンドレ・ザ・ジャイアントVSハンセンのド迫力バトルが行われ、メインでは猪木が戸口を下しIWGPへ前進。タイガーと戦ったソラールの左肩脱臼というアクシデントまで、いまでは語り草だ。

 田コロで失態を演じてしまった国際軍団だが、10・8蔵前では新日本との対抗戦で2勝1敗の勝ち越し、今後の展開につなげることに成功した。浜口が元国際の剛竜馬を破り、寺西は藤波に敗れた。メインは猪木VS木村の大将戦で、木村が反則勝ちをせしめ取り、遺恨を残したのである。

 この翌日、全日本も蔵前でビッグマッチを開催。「創立10周年記念興行」で、馬場&ブルーノ・サンマルチノ組がシン&上田馬之助組と対戦。インターナショナルヘビー級王座戦はブロディがドリーを破りベルトが移動。リック・フレアーが鶴田を退けNWA世界ヘビー級王座を防衛。ミル・マスカラスがマイティ井上を相手にIWA世界ヘビー級王座を守った。

 新日本では藤波がヘビー級転向を表明し、WWF認定ジュニアヘビー級王座を返上。11・5蔵前は国際軍団との対抗戦第2ラウンドで、木村健吾が寺西、藤波が浜口に勝利。猪木VS木村の再戦は、猪木が腕ひしぎ逆十字固めによるTKO勝ちで雪辱を果たすとともに、新日本を3戦全勝へと導いた。同大会ではタイガーとグラン浜田による一騎打ちが行われ、タイガーが先輩の浜田にリングアウト勝ち。タイガーは藤波返上により空位となったWWFジュニア王座へ照準を定めた。

 しかし、タイガーにデビュー以来最大の試練が到来する。12・8蔵前でメキシコの帝王エル・カネックと対戦。日本でこそジュニア扱いされていたものの、カネックは事実上のヘビー級選手。実際、UWA世界ヘビー級王者でもあった。タイガーはヘビーの壁に苦しみ、両者リングアウトの引き分けに持ち込むものの、この試合で左足首を骨折してしまった。全治3週間の診断を受け、年始(1982年1月1日)に組まれているキッドとのWWFジュニア王座決定戦に暗雲が立ちこめたのである。(文中敬称略)

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