40歳目前にぶつかったシンガーとしての壁、中田裕二が克服した「過去に囚われない自分らしさ」

2021年はソロデビュー10周年を迎える
2021年はソロデビュー10周年を迎える

エンターテインメントは、誰かの何かのきっかけになるとても重要な役割

 1曲目の「プネウマ」は、息吹きとか風、精霊、生命、神様……。いろんな意味があるんですが、コロナによって人間が生きる上で当たり前に存在しているものが、当たり前じゃなくなったというところが大きくて。人はいろんな自然の力を借りて生かされているという、ものすごくちっぽけで、どうしようもない存在なんだってところから意識を持たなくちゃいけないのに、「人間様だぞ」っていうおごりが、すごくあるように感じて、そんなことを歌にしています。

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 2曲目の「BACK TO MYSELF」は、全部1人でレコーディングしました。ちょっと懐かしニューウエーブっぽい感じの音ですよね。歌詞に「孤独とは自由だよ」っていう言葉を使いましたが、これまではやたらと“シェアリング”文化が幅を利かせていて音楽でもそんなトレンドもあって、それはそれで素晴らしい流れなのですが、いざこういった今の状況に陥った時、初めて孤独を味わう人たちは不自由さを感じてしまってものすごくダメージが大きいんです。だから“孤独な楽しみ方”みたいなものを習得しながら新しい人付き合いをするとまた相手のことがよく分かったりすることもあると思うんです。

 4曲目の「おさな心」は、“こうでなければいけない”という固定概念みたいなものが、知らないうちに平気で人を傷つける言葉になってしまっていて。あの時はそうだったのかもしれないけれど、今は違う。そんな“常に変わりゆくものだから”ということを曲にしました。

 8曲目の「DAY BY DAY」は問題提起とか掘り下げるだけではなく、どういう心の持ちようでいたらいいんだろうって自分なりにですけど、曲にできたらいいなと思って作りました。

 10曲目の「君が為に」は、今まさに孤独な自分を責めて追いつめてしまう人が増えていて。僕も自分を追い詰めたりしたことが何度かありましたが、それぐらい人間て弱くて紙一重で、これは本当に悲しくて大変な問題だと思います。

 出来るならば近くにそういう言葉を差し伸べてくれる人がいてくれるのがいいのですが、誰もがそういう人がいるわけでない。そんな時にこそ歌で誰かに手を差し伸べられたらと思い作りました。芸術の力ってまさにそういった場面で発揮されなくてはいけないものだと思っていて。この曲を聞いたからなんとか踏み止まれたとか、この映画を見たから持ちこたえられたとか。僕たちのやっているエンターテインメントって、誰かの何かのきっかけになるとても重要な役割だと思います。

 この自粛期間中にまだまだたくさんの曲が出来て、またいつでもレコーディングできる準備は出来ていますので、次回作も楽しみにしていて欲しいですね。

 コロナ禍によって新しいことも始めています。音楽とは違うジャンルの人と仕事上のセッションをはじめました。これからは、お互いに知恵を出しあって、この状況で何が出来るかって具体的に共に探していきます。大切なのは過去に囚われてはいけないということですね。

 もう1つ新たな趣味を見つけました。和装です。週の半分ぐらいは和装で過ごしています。着付けも今はだいたい5分ぐらいで出来ますよ。和装で街を歩くこともあります。意外と快適なんですよ。袖が開いているから換気もしてくれますし、とにかく着心地がいい。背筋も伸びるし、素材と暮らすというか布と暮らすって感覚です。気分も上がりますし、和装のままギターも弾きますから(笑)。

□中田裕二(なかだ ゆうじ)1981年生まれ。熊本県出身。2000年にロックバンド「椿屋四重奏」を結成。フロントマンおよびすべてのレパートリーのソングライターとして音楽キャリアをスタート。「紫陽花」「恋わずらい」「いばらのみち」に代表される、ロックバンドの枠にとらわれないスケール感と個性あふれる楽曲で人気を集める。11年のバンド解散直後からソロとしての活動を開始。コンスタントなオリジナル作品のリリースから他アーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースなど精力的に音楽活動を展開。確かな歌唱力に裏打ちされた艶のある歌声、幼少時に強く影響を受けた70~80年代の歌謡曲/ニューミュージックのメロディセンスを核に、あらゆるジャンルを貪欲に吸収したバラエティに富むサウンドメークとさまざまな情景描写や人生の機微をテーマとした詞作によるソングライティングが幅広い層に支持されている。

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