「障害者も性欲はある」当事者の苦悩に猛バッシング、「去勢しろ」と暴言も…性処理巡る“タブー”に一石

障がい者支援を語る上で、避けては通れないのが「障がいと性」を巡る問題だ。今月中旬、「障害者も性欲はある」と切実な本音を吐露した当事者のSNS投稿が炎上、「去勢しろ」「薬を飲んで性欲を抑えろ」など、激しい誹謗(ひぼう)中傷が寄せられた。タブー視や黙殺されがちな障がい者の性欲について、社会はどのように考えていくべきなのか。難病当事者で、ほぼ寝たきりの生活を送るネタケーさんに、赤裸々な問題提起に込めた真意を聞いた。

障がい者の性について切実な本音を語ったネタケーさん【写真:本人提供】
障がい者の性について切実な本音を語ったネタケーさん【写真:本人提供】

動かせるのは右肘から下と左手の指先だけ…わずかに動く手先で重度障がい者の日常を発信

 障がい者支援を語る上で、避けては通れないのが「障がいと性」を巡る問題だ。今月中旬、「障害者も性欲はある」と切実な本音を吐露した当事者のSNS投稿が炎上、「去勢しろ」「薬を飲んで性欲を抑えろ」など、激しい誹謗(ひぼう)中傷が寄せられた。タブー視や黙殺されがちな障がい者の性欲について、社会はどのように考えていくべきなのか。難病当事者で、ほぼ寝たきりの生活を送るネタケーさんに、赤裸々な問題提起に込めた真意を聞いた。

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「僕は難病で体が動かない。生きる上で必要な性欲も処理できない。

 朝起きると、白い汚れがパンツに付いていることがある。そういった時は着替えも行ってもらわないとならない。

 正直、生理現象であるが故に辛い」

 10月15日、ネタケーさんは当事者としての切実な悩みをSNS上に吐露。一連の投稿で、「障害者も性欲はある。性処理も福祉の一つと捉える国もある。日本も検討すべきだと思う」と訴えたところ、大きな反響が寄せられた。

 ネットの反応は賛否両論。「本人にしかわからない辛さって間違いなくある」「福祉の中でも『性』が置き去りにされない社会になってほしい」といった共感の声の一方、「介護士は風俗嬢じゃない」「公費で射精介助が必要ってこと?」「自費で既存の性サービスを利用すればいい」など、疑問の声も多く寄せられている。

 中には「去勢しろ」「性欲減退の薬を飲ませるべき」など、優生思想やヘイトスピーチとも取れる極端な意見も。直接ネタケーさん個人を攻撃する内容のものもあり、炎上状態となっている。

 ネタケーさんは2002年生まれの24歳。1歳になる前に、全身の筋力が徐々に低下する指定難病「脊髄性筋萎縮症」と診断された。生まれてから一度も自分の足で立てたことはなく、現在、自らの意思で動かせるのは右肘から下と左手の指先だけ。家族やヘルパーから24時間体制で介助を受ける傍ら、わずかに動く手先で重度障がい者のリアルな日常を発信している。

「小・中・高校と特別支援学校で、クラスに生徒は自分1人。高校でようやく2人クラスになりました。同年代の人との交流はほとんどなく、友達と呼べるような人もいなかった。健康な体に生まれていたら、もっといろいろな経験をしたかったという思いは正直あります」

 大学進学を目指して受験勉強に励んだが、ここでも大きな壁があった。体の状態から通学には手厚い介助が必要だが、介助サポートを受けられるのは国公立大学のみ。制度上、原則ヘルパー派遣が認められていない私立大学の受験はかなわず、国公立一本に絞るも受験は失敗。進学先は通信制大学しか残されていなかった。

「スクーリング(対面授業)で通学することもありましたが、学生の年齢層もまちまち。祖父母世代の方が多くて、行くたびにクラスのメンバーが違い、自分から輪に入るのは難しかったです。結局、大学の4年間でも友達はできないままでした」

 将来は自分で訪問介護の福祉系事業所を立ち上げたいという夢があり、現在は実家で両親と暮らしながら、別の大学に入り直し専門知識を学んでいる。1日8~9時間ほどは、訪問介護のヘルパーの介助を受ける毎日だ。

 高校生の頃からSNSを通じて寝たきりの生活を細々と発信してきたが、今年3月、将来の事業展開を見据えてアカウントを一新。「夢の実現のためには、影響力を持たなければ」と積極的な投稿を始めた。

「以前は個人的にやりたいこと、書きたいことを脈絡なく投稿していただけでしたが、同じ障がいのあるインフルエンサーの方々を見て、自分も発信の方向性を決めようと。自分で訪問介護事業所を作りたいという夢も持ちつつ、いずれはネット番組などのメディアにも出演して、障がい当事者から見える福祉や社会課題を問題提起していきたい」

ベッドの上でほぼ寝たきりの生活を送る【写真:本人提供】
ベッドの上でほぼ寝たきりの生活を送る【写真:本人提供】

「若い女性の介助者がいい」まったく別の文脈で投稿した過去の発言が切り取られ、拡散

 今回、物議を呼んだ投稿も、そんな当事者のリアルな苦悩をつづったものだった。「障がいと性」をテーマにした発信は以前から行っており、ある程度反響の手応えは感じつつも、ここまでの広がりはまったくの想定外だったと振り返る。投稿当日はそこまで大きな広がりはなかったものの、翌日の夕方ごろからインプレッションが急上昇。過去にまったく別の文脈で投稿した「必ずしも同性介助を行う必要はないと思っている」「若い女性の介助者がいい」という発言が切り取られ、拡散されたことが原因だった。

「拡散されたのは、担当介助者との人間関係に悩んでいた時期の、愚痴のような投稿でした。冗談を交えた軽いノリで投稿してしまったことは、表現が不適切だったと反省していますが、それを悪意ある印象操作に利用されてしまった」

 投稿は炎上。「去勢しろ」「薬で性欲を抑えろ」といった批判や誹謗中傷が殺到し、「死ね」という直接的な暴言まで寄せられたという。

「批判や反対意見があるのは当然ですし、受け止めます。ただ、議論の域を超えた人格否定は本当につらい。障がい者は『彼女が欲しい』と言うことさえ許されないのでしょうか」

 日本では現状、障がい者の性に関する福祉制度は存在しない。一部では、重度身体障がい者への性的介助を行うNPO団体もあるが、利用エリアや費用面の問題など、課題も多い。

「自分も存在は知っていますが、利用したことはありません。そういったサービスがあっても、家族と同居中の当事者は、なかなか利用のハードルが高いのが現実です。性の福祉といっても、直接的な行為だけではありません。まずは当事者へのカウンセリングを行い、適切な支援につなぐなど、一人で抱え込まず、相談できる窓口を設けることが現実的な第一歩ではないでしょうか」

 実際、欧米を始めとする諸外国では、カウンセリングや助成金制度など、障がい者の性の問題に対し、公的な支援を設けている国も存在する。

「障がい者の性欲を『ないもの』『不必要なもの』とタブー視せず、公の枠組みで捉えている点が日本とは大きく違うと思います。日本は性をネガティブに捉えたり、タブー視したりする傾向が強いですが、教育も含めて、適切な情報提供や議論が社会全体でなされるべきだと思います。インクルーシブ教育(障がいや国籍、性別、文化的背景などの違いにかかわらず、すべての子どもが同じ環境で共に学び合う教育の在り方)を行い、幼少期から心の障壁を減らしていくことも1つの方法ではないでしょうか」

 性の問題は、障がい者に限らず誰もが抱える普遍的なテーマでもある。誰しもが自然に持つ性欲という存在をタブー視せず、どう議論していくのか。社会全体の成熟度が問われている。

次のページへ (2/3) 【動画】一連の騒動について本人の口から語った動画
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