『電波少年』“T部長”の土屋敏男氏、今も変わらぬ“口出しをさせない”作品づくりのスタイル
土屋敏男氏が企画・プロデュースした映画『わたのまち、応答セヨ』(2025年劇場公開)が、10月12日午後8時からイッツ・コミュニケーションズをはじめとした100社を超えるケーブルテレビ局で一斉放送される。放送を前に、土屋氏が、作品への思いや見どころについて語った。

叫ばれる地方創生「この作品はそのヒントに」
土屋敏男氏が企画・プロデュースした映画『わたのまち、応答セヨ』(2025年劇場公開)が、10月12日午後8時からイッツ・コミュニケーションズをはじめとした100社を超えるケーブルテレビ局で一斉放送される。放送を前に、土屋氏が、作品への思いや見どころについて語った。
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――『電波少年』の“T部長”こと土屋敏男さんが、自治体(愛知県蒲郡市)からの依頼で衰退した地方産業をテーマにしたドキュメンタリー映画を作るというのは意外でした。
「僕は頼まれたら嫌とは言わないし、そこには何かがあるだろうと思ったんです。監督の岩間さんも僕と同じ日本テレビ出身で、一緒に仕事はしたことはなかったけど馬が合ったから声を掛けて一緒に蒲郡市に行きました。ただ、市には映画を作るにあたり1つだけ条件を出した。それは“一切口出しをしないこと”。実際、完成するまで一度も見せなかったしチェックも受けなかった。
仮にそれをしていたら面白いものができなかったのではないでしょうか。これは『電波少年』のころからの僕のスタイルで、もし会社に『誰も知らない若手芸人(猿岩石/有吉弘行・森脇和成)に香港からロンドンまでヒッチハイクでいかせますけど、どうですかね』と相談してたら『なんじゃそりゃ? 危ないだろうからやめとけ』となってましたよね。この映画では、市との間にケーブルテレビ(三河湾ネットワーク)が入ってくれたのが成立の仕方として良かった」
――映画で、種から綿を育て三河木綿を織る地元の職人・鈴木さんに焦点を当てたのは?
「最盛期には市内に約1000あった繊維産業の会社が今では10社ほどになっている。ただ、生き残っている会社はどこも間違いなくいいものを作っていて、『皆さんの商品を海外で展示してみませんか?』と提案したら、『そんなことは考えていない。自分たちは現状で精いっぱいなんだ』と。また、勢い余っておっしゃったとは思うのですが『映画を撮るなど余計なことをしてくれるな』とも……。
そんな中で岩間監督が毎週蒲郡市に通い、自転車で走り回っていろいろな人に話を聞く中で出会ったのが鈴木さんでした。鈴木さんは80歳を超えてなお『1200年前にこの地に綿が伝来した。その綿にこだわっていくことが、自分たちの根っこなんだ』という哲学、“本気”を持つ人だったんですね。もちろん他の皆さんにも本気はあったとは思うのだけど、鈴木さんは目の前のビジネスではないものを見ているというか。
僕もこれまでに無い新しいテレビを作るという気持ちで『電波少年』をやっていたけど、“アポなし”とか当時の常識とは違うから、プロたちには『こんなのテレビじゃない』と酷評された。でも、中高生は熱狂的に見てくれたし、何十年か経つとそれが次のテレビになった。今や街ブラ番組にしてもアポなしが当たり前じゃないですか。岩間監督も僕も、鈴木さんに自分と通じるものを感じたし、その本気をとらまえて一緒に世界に出てみようと考えたんです」
――この映画を機に、かつての三河木綿を現代風に甦らせる「三河木綿復刻プロジェクト」が立ち上がり、イギリスの「ロンドン・デザインフェスティバル」への出展につながりました。
「映画を撮っていることが知られるにつれ、街がザワザワし始めていったんです。そんな中で、市の繊維業者の石川さんが蒲郡市博物館で江戸時代の三河木綿のデザイン帳を見つけ、そこからプロジェクトが生まれました。『自分たちのルーツ、それは世界中のどこにもない価値あるものなんだ』という本気の思いからです。
そこへ思いを同じくする若手の岡田さんが加わり、プロジェクトがどんどん進んでいく。岡田さんは復刻プロジェクトの前に、『東京ガールズコレクション』に市として作品を発表する施策に関わっていたのですが、発表して“めでたしめでたし”で終わらせなかったんです。
地域活性化って、本気になった若い人たちの目の色の話だから、本当はそこからなんですよ。野球、サッカー、映画、音楽、アニメなど多くの分野で日本が海外に打って出て勝負していますが、街の地場産業でも、自分たちの本気さえあれば世界で十分戦える。やはり死に物狂いで作る、ある種の狂気ともいえる本気を見つけないと。本気こそが人の心を打つんです」
――10月にはイッツコムをはじめとした全国100社超のケーブルテレビ局で「わたのまち、応答セヨ」が一斉放送されます。
「手探りで始まった映画撮影ですが、最後にロンドンで奇跡が待っていました。映画を機にそこに集まってくれた人々の本気が連なり“円環”がピタッと合う感じというか。途中でいろいろなことがありながらも綿の神様、映画の神様が撮らせてくれたのだと思いましたね。地方創生が叫ばれて久しいですが、この作品はそのヒントになるのではと思います。
よく変化には『よそ者、馬鹿者、若者』が必要と言われます。よそ者が来て刺激を与え、地元の馬鹿者が呼応し、最終的に若者に火が着くという意味なのですが、どの地方も若者に火が着くまで、若者が本気になるまで至っていないのではないか。地方の多くの皆さん、特に若い人にこの映画を見てもらって『よし、自分たちも!』と思ってほしい。
放送だけではなく、例えばそれぞれの地方で小さな上映会を開いて僕らを呼んでもらったら、地元の若者たちと話をしてみたい。僕たちが願う未来って、若者の未来のことですから」
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