ジローラモが語る“ちょいワルおやじ”の本質 大切にする「大人の余裕」と「ハングリー精神」
月刊誌「LEON」で「ちょいワルおやじ」という言葉を生み出し、日本の大人の男性たちに革命を起こしてから20年。バブルの熱狂から現在のどこか閉塞感の漂う日本社会まで、長年この国を見つめてきたパンツェッタ・ジローラモ。そんな彼が初主演を務める映画『TAVERNA DE GAGA-人生はまだまだ面白い-』が9月11日に公開を迎えた。劇中では、人生の終えんを迎え、希望を失った“じいさん”たちと共に、人と人との絆、そして何歳になっても人生は輝けるという力強いメッセージを伝える。映画の持つメッセージに共感することが多かったというジローラモが、年齢を重ねることを恐れず、常に輝き続けるために大切なことを語った。

バブルの熱狂を知る男が憂う日本の今
月刊誌「LEON」で「ちょいワルおやじ」という言葉を生み出し、日本の大人の男性たちに革命を起こしてから20年。バブルの熱狂から現在のどこか閉塞感の漂う日本社会まで、長年この国を見つめてきたパンツェッタ・ジローラモ。そんな彼が初主演を務める映画『TAVERNA DE GAGA-人生はまだまだ面白い-』が9月11日に公開を迎えた。劇中では、人生の終えんを迎え、希望を失った“じいさん”たちと共に、人と人との絆、そして何歳になっても人生は輝けるという力強いメッセージを伝える。映画の持つメッセージに共感することが多かったというジローラモが、年齢を重ねることを恐れず、常に輝き続けるために大切なことを語った。(取材・文=磯部正和)
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日本が世界中で最も熱狂し、すべてが輝いて見えたバブル期。その絶頂期に来日した彼にとって、現在の日本社会を覆う重苦しい閉塞感は気がかりなものだった。かつての熱気を肌で知っているからこそ、特に若者たちから生気が失われている現状に、強い危機感を抱いているという。
「初めて日本に来た時はバブルでした。大阪のマハラジャディスコとか、なんて楽しい国なんだと思いましたよ。でもその後はバブルが終わって大変だった。今だに若い人の元気がないと感じることが多い。それはもったいない。下がってしまったことに対して寂しいから、何かハッピーにできないかなといつも考えています」
だからこそジローラモは、テレビの画面越しに底抜けの明るさを発信し続けてきた。「年齢を重ねたからといってうつむく必要はない」という彼の生きざまそのものが、閉塞感にもがく現代人へ向けた強烈なエールとなっている。陽気な振る舞いの裏には、明確なサービス精神が隠されていた。
「テレビの前で落ち着き込むと、みんな死んじゃうから。パワーを感じさせるために、もっと元気にならないといけないんです。一般的にイタリア人には陽気なイメージがあると思います。もちろん暗い人もいっぱいいますが、僕は元気でいたい。それが僕の役割だと思っています」

「ちょいワルおやじ」が日本の父親たちにかけた魔法
今から約20年前。ジローラモがアイコンとなって世に放った「ちょいワルおやじ」という概念は、家族のために自分を押し殺してきた大人たちへの温かい賛歌だった。身なりを整え、他者の視線を意識することは、単なるファッションの枠を超えて、忘れていた人生の活力を呼び覚ます強烈なカンフル剤となった。
「おやじがなくした力を、もう一回リフレッシュさせた感じで、あれは良いことだったと思うんです。家族のために頑張って自分のことを忘れていたおやじが、『まだモテるよ』『かっこいいよ』と言われるのってうれしいじゃないですか」
年齢を重ねることは消化試合ではない。ワクワクする気持ちを取り戻し、自分自身に自信を持つことで、周囲の人間をもハッピーにする「大人の余裕」が生まれるのだと彼は微笑む。老いを恐れるのではなく、経験を積んだからこそ出せる色気や包容力がそこにある。
「大人の余裕を活かせることは大事で、年金生活だから死ぬしかないじゃなくて、チャレンジすればするほど元気になります。元気なおやじと、元気じゃないおやじ。どっちと一緒にいたいですか? かっこいいジャケットを着て、ちょっといい匂いがして、女性が『ご飯行きたいな』と思うようなワクワクを備えていたいじゃないですか!」
余裕を重んじる一方で、ジローラモが常に内面にたぎらせているのが「ハングリーさ」である。生まれ持った才能に恵まれたトップの人間を、どのようにして出し抜くか。その泥臭い闘争心と向上心こそが、新たなカルチャーを生み出し、人を惹きつける最大の武器となるのだ。
「新しいことは社会的にみんな欲しいと思います。普通のイケメンは子どもの時からチヤホヤされるアドバンテージがある。でも、2番目、3番目の男が一番に勝つためにはどうするか。元々のハングリーな気持ちで、洋服や時計を使ってルックスを作り、しゃべりをうまくして目立つ。それが重要なんです」

失敗は「過去」、終わったことより前を向くマインド
かつてのテレビ出演時も、スタイリストがいない状況で自らブランドに声をかけ、戦略的に自らを演出してきた。ただ与えられた役割をこなすのではなく、自ら空気を読んで仕掛ける貪欲さが、彼の唯一無二のポジションを確立させた証左である。
「当時はスタイリストもついていませんでした。だから自分でスタイリストを連れて行く環境を作ったんです。出れば出るほど宣伝になるから、タケオキクチ先生やアルマーニから『うちの洋服を使ってください』と声がかかって。そうやって、いろんな人が興味を持ってくれました」
常に順風満帆に見える彼だが、長いキャリアの中では「別の選択をすべきだった」と悔やむ夜もあったという。しかし、決して同じ場所で立ち止まらない。終わったことをいつまでも嘆くのではなく、驚異的なスピードで未来へとベクトルを切り替えるのだ。
「何回も失敗したし、『あれはダメだったな、違う感じでやればよかったな』と思うこともあります。だけど、それはしょうがない。過去のことは過去だから、前向きに行かないといけない。昔は楽しかったじゃない、前に、前に、前に行かないといけないんです」
年齢や社会の枠組みにとらわれず、新しいことに挑戦し続ける。一見矛盾する「大人の余裕」と「ハングリー精神」を完璧なバランスで共存させながら、彼はこれからも自らの人生を謳歌していく。その突き抜けたマインドこそが、停滞する社会を明るく照らす光となる。
「どんなことがあってもポジティブでいることですね。大変なことがあっても前を向いて何かをやること。それは大きいと思います。落ち込んでいる日本を明るくしてくれるバイタリティーを、もっと見せていきたいですね。本当に、国籍が変わらなければ政治家になりたいくらいですよ」
年齢を重ねて身につけた「大人の余裕」と、現状に満足しない「ハングリー精神」。一見矛盾する二つを完璧なバランスで共存させ、常に自分をアップデートし続ける姿勢こそが、彼が第一線で愛され続ける理由なのだろう。バブルから現在まで、時代がどれほど移り変わろうとも彼の本質はブレない。常に前を向き、ポジティブなエネルギーを放つその生きざまは、私たちに強力なエールを送ってくれている。
□パンツェッタ・ジローラモ 1962年9月6日、イタリア出身。88年に日本に移住。その後はNHK『NHK外国語会話 イタリア語会話』への出演を機に知名度を高め、フジテレビ系『森田一義アワー 笑っていいとも!』などに出演。月刊誌「LEON」の専属モデルを務め、「ちょいワルおやじ」というフレーズを全国区にした。以降もバラエティーやドラマなど多方面で活躍。2026年9月11日から初の主演映画『TAVERNA DE GAGA-人生はまだまだ面白い-』が公開される。
磯部正和
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