鞘師里保がガールズラブ作品で開く俳優としての新境地 「今までで一番エネルギーをかけた」撮影の裏側

歌手で俳優の鞘師里保が、9月10日放送スタートのMBSドラマ特区枠『付き合ってあげてもいいかな』(木曜深夜0時59分)で、俳優の小西桜子とダブル主演を務める。本格的なラブストーリーに初挑戦する鞘師に、同作への意気込みや表現者としての心境の変化について聞いた。

インタビューに応じた鞘師里保【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】
インタビューに応じた鞘師里保【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】

ドラマ『付き合ってあげてもいいかな』で主演

 歌手で俳優の鞘師里保が、9月10日放送スタートのMBSドラマ特区枠『付き合ってあげてもいいかな』(木曜深夜0時59分)で、俳優の小西桜子とダブル主演を務める。本格的なラブストーリーに初挑戦する鞘師に、同作への意気込みや表現者としての心境の変化について聞いた。(取材・文=下城万由子)


【PR】世界の公道が舞台…ラリーの最高峰『WRC』をABEMAが全戦無料生中継

 同作は、国内外で累計100万部超えを記録し、GL(ガールズラブ)コミックスの金字塔とも言われる同名漫画が原作。大学入学を機に出会った猿渡冴子(鞘師)と犬塚みわ(小西)が付き合い始めたことで直面する、価値観のズレや欲望、恋人同士の葛藤を丁寧に紡ぎ出す。鞘師が演じる冴子は、明るくお調子者でムードメーカー的な存在の大学生だ。

 原作や台本を読んだ時の印象を尋ねると、鞘師は真剣な面持ちで口を開いた。

「いろんなラブストーリーがある中で、付き合った後の2人の関係性の変化やすれ違いがすごく丁寧に描かれているのが特徴だなと感じました。きれいなところも、そうでないところも鮮やかに描かれていて、とてもすてきな作品です」

 自宅で原作を読み進める中で、思わず感情が高ぶる瞬間も多かった。「感情を揺さぶられるシーンが多く、涙があふれてしまうこともありました。やりがいと同時に、大切に向き合わなければと強く思いました」と振り返る。

 本作は女性同士の恋愛を描いており、鞘師はその本質的な人間ドラマに魅力を感じている。

「すれ違う部分や嫉妬心、何かを与えたいという気持ちは、多様な立場の人に共通する思いだと感じています」

 周囲の目をどう気にするか、過去のトラウマをどう乗り越えるかといった葛藤について「そうした周囲の環境や声といった外的な問題が立ちはだかることもある中で、最終的には『お互いをどう思っているか』が最も大切。どんな環境でも、2人で通わせている思いは2人だけのものだなと、すごく感じました」と、言葉を選びながら真っすぐな思いを語る。

本格的なラブストーリーの主演に初挑戦する【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】
本格的なラブストーリーの主演に初挑戦する【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】

ダブル主演を務める小西の印象は

 そんなドラマを共に紡ぐ相手役の小西とは、今作が初共演。恋人同士という親密な関係性を築く過程には、特有の難しさがあったようだ。

「初日に『肩を組んでもいいのかな』と躊躇する部分もあったのですが、小西さんが遠慮せずに『お願いします』と言ってくださって。結果的に、遠慮しないでぶつかれる関係性を築くことができました」

 小西と自然体で関係性を構築していく中で、その独特のテンポ感にも助けられたという。

「2人でずっと集中してお芝居をしていると、どうしても一定のリズムになってしまうことがあるんです。でも小西さん特有のリズム感のおかげで、ハッとさせてもらう瞬間が多く、とても助けられました」

 これまで、オフィスコメディーなどに出演してきた鞘師だが、本格的なラブストーリーの主演は今回が初。恋愛ものならではの魅力について尋ねると、自身の内側をじっくりと見つめ直すように語った。

「ドラマはコミュニケーションの上に成り立つものですが、ラブストーリーは特に1対1の距離が近いです。その近さゆえに見えてくる自分や相手の人間らしい深い部分に触れられるからこそ、挑戦してみたいと思いました」

役作りで苦労したこととは【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】
役作りで苦労したこととは【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】

 本作での役作りは、鞘師にとってこれまでにない挑戦でもあった。冴子の複雑な内面を表現するため、撮影直前まで朝から気持ちを作る日々。冴子が発する言葉の裏に隠された真意を探る作業も求められた。当時の苦労を、穏やかな語り口で振り返る。

「冴子は発している言葉と思っていることが全然違う時があるんです。どういう気持ちでその言葉を発しているのか、それによってみわはどう反応するのか。そこを探る作業がすごく難しかったです。個人的には、今までで、一番時間とエネルギーをかけた作品だったかもしれないです」

 一見すると明るい“陽キャ”の冴子だが、周囲の目を気にしてバランスを取ろうとする繊細な一面も持つ。鞘師自身も「周りとの調和を優先するあまりに思ってもないことを言ってしまったり、無理をしてしまう時が、若い頃には特に多くありました」と共感し、「私が冴子を愛してあげて演じられたら」と愛情を込めた。

 劇中では、軽音サークルでの活気ある大学生活が描かれる。2011年から15年までモーニング娘。のメンバーとして活動し、10代の頃から厳しい芸能界の第一線で活躍してきた鞘師にとって、こうした日常は新鮮な体験であり、憧れでもあった。

「部活やサークルには、とても憧れがありました。今から大学入ろうかなって、何年かに1回くらい思います(笑)。もちろん、モーニング娘。時代のメンバーが私の長く続く友人になってくれているのは決定的に違う部分であり、私の宝物になっていると思っています」

 共演者たちもアラサー世代が多く、撮影現場では「全員で『青春を取り戻してるね』みたいな感覚が強くて、それが面白かった」と、楽しげに声を弾ませた。

今後挑戦したい役柄についても語った【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】
今後挑戦したい役柄についても語った【写真:Jumpei Yamada(Bright Idea)】

今後チャレンジしたいのは意外な役柄

 今作で3度目のドラマ主演。過去の主演経験を経て、現場に向かう心境にも変化があったのだろうか。「言語化するのがすごく難しい」と少し間を置きながら、丁寧に言葉を探す。

「気負いすぎずに、スタッフの皆さんやキャストの皆さんと一緒に撮影を楽しみたいという思いが、結果的に座組みの空気感を作っていくと感じています。そういった気持ちを最優先にして現場に向かっていました」

 そんな鞘師だが、自身の性格を「めちゃくちゃ人見知り」と語る。現場でのコミュニケーションについては、「根本の性格はあまり変わらないので、できるだけ上手に皆さんと関係を築いていけるよう、できる範囲でチャレンジしています。無理していると、それが伝わると思うから」と笑う。

 今後演じてみたい役柄を尋ねると、鞘師は冴子とは対照的な役への興味を口にした。

「今回は『冴子はこう喋るんじゃないか』と常に考えたり、自分の中でテンションを上げる準備が必要な役柄だったので、すごくゆるい、へにゃへにゃした役をやってみたいです。真逆を行ってみたい気持ちはありますね」

 一つ一つの役柄に真摯に向き合い、着実に俳優として表現の幅を広げている鞘師。不器用で愛おしい“へたくそ”な恋の行方とともに、彼女が今後見せてくれる新たな顔にも期待が高まる。

□鞘師里保(さやし・りほ)1998年5月28日、広島県東広島市出身。幼少期よりアクターズスクール広島にてダンスを始める。2011年に当時12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビュー。15年12月末に同グループを卒業し、その後ダンス留学のため渡米。20年に芸能活動を再開し、23年にBS松竹東急『めんつゆひとり飯』でドラマ初主演。その後も、テレビ東京系連続ドラマ『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』など数々のドラマに出演。25年秋に開幕したミュージカル『デスノート THE MUSICAL』では弥海砂役を熱演。2026年9月2日には自身の不完全さや葛藤をテーマにしたコンセプトEP『OWN』を発売するなど、俳優・音楽活動ともにさらなる活躍の場を広げている。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください