丸山隆平が語る“自身の半生”演じる難しさ 地元を歩き記憶をたどる作業は「セラピー的」

自身の半生を題材にした舞台『water』(9月27日開幕)で、自分自身を投影した「わたし」を演じるSUPER EIGHTの丸山隆平。創作過程では、劇作家・演出家の藤田貴大氏と地元・京都を歩き、幼少期からの記憶をたどった。それは丸山にとって「ちょっとセラピー的」な時間にもなったという。自分自身を演じる難しさ、そして原点の京都で改めて見えてきたものを聞いた。

舞台『water』で“自身の半生”を演じるSUPER EIGHTの丸山隆平【写真:藤岡雅樹】
舞台『water』で“自身の半生”を演じるSUPER EIGHTの丸山隆平【写真:藤岡雅樹】

舞台『water』で地元・京都を巡る取材

 自身の半生を題材にした舞台『water』(9月27日開幕)で、自分自身を投影した「わたし」を演じるSUPER EIGHTの丸山隆平。創作過程では、劇作家・演出家の藤田貴大氏と地元・京都を歩き、幼少期からの記憶をたどった。それは丸山にとって「ちょっとセラピー的」な時間にもなったという。自分自身を演じる難しさ、そして原点の京都で改めて見えてきたものを聞いた。(取材・文=平辻哲也)


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 藤田氏と京都を巡る中で、丸山は子どもの頃には言葉にできなかった感覚と改めて向き合った。

「在日とか部落とか、小学校、中学校とかの時はあまり分からず」

 当時は、その背景や意味まで理解していたわけではない。ただ、子どもながらに「なんかここ空気違うな」と感じる場所はあった。大人になって改めて京都を歩くと、「あ、確かに気配が違う」と思うこともあり、川と土地の歴史とのつながりにも思いを巡らせたという。

 藤田氏やスタッフと一緒に歩いたことで、幼い頃に感じ取っていたものを考え直すこともできた。

「子どもながらに感じ取っていた、いいか悪いか別として違和感みたいなものが、はっきりはしてないですし、理解までもできてないけど、“ある”ということが明確になった」

 また、藤田氏と京都を歩いているときに感じたのは自分にとっては当たり前だった慣れ親しんだ場所が、藤田氏らにとっては全く知らない土地だ、ということだった。その視点の違いに触れ、「空間の歪み」のようなものも感じたという。

 もっとも、『water』が京都の社会的、歴史的な背景を前面に押し出す作品というわけではない。丸山によれば、藤田氏も「あえて浮き彫りにして色濃くは描かない」と考えている。むしろ描かれるのは、現実の丸山隆平と、藤田氏が作り出した「わたし」との間にある曖昧な世界だ。

「僕という人間がここに存在していて、これが本当なのかどうか分からなくなる」

 観客自身の記憶や経験と重なりながら、その境界が揺らいでいくことも作品の面白さだという。丸山は藤田氏の緻密な構成に「どういう脳みそしてんのやろ」と感じながらも、「見に来て下さる方には翻弄されることも楽しんでいただけるのでは」と信頼を寄せる。

 そんな作品で難しいのが、丸山自身をベースにした「わたし」を演じることだ。自分では「こういう人間だ」と思っていても、他人の目には違ったりする。

「この舞台上にいる『わたし』を見て、なんかこいついけ好かないと思う人もいるかもしれないし、『あ、なんだかんだ人間らしくて、自分にもそういうとこあるかもしれない』と思う人もいるかもしれない」

 藤田氏がフィクションとノンフィクションの間で作り上げた「丸山隆平」が、観客にどう映るのかは本人にも分からない。まして、自分自身を「自然に」演じるとなると、さらに複雑だ。

「自然にと言われてもセリフがある時点で、自然ではなくなると思うんです」

 藤田氏の演出では、立ち位置や歩くタイミングまで細かく決められている。セリフを発している時点で、「自然」ではない。その上で、観客をどう作品の世界へ引き込むのか。

「それをどうのめり込ませるかを表現したいので、必死です」

 京都を巡る取材では、すっかり忘れていた記憶が突然よみがえることもあった。かつての通学路など、思い出の場所を目にした瞬間、「あ、ここ、これ、ありました、ありました」と、それまで眠っていた記憶がつながっていった。

 当時の自分がどう受け止めていたのか。今の自分ならどう考えるのか。記憶の食い違いができるだけ出ないよう、一つずつ整理していった。

「全部が今の自分の基盤になっていると感じました」

 その作業を丸山は「ちょっとセラピー的なものがある」と表現する。そして今回、京都公演が行われる京都劇場にも特別な記憶がある。丸山が『牛若丸』役で初めて舞台に立った場所には、実家から走って通っていたという。

 自身の半生を題材にした作品で、かつて初めて立った舞台へ戻る。

 丸山は、その巡り合わせを「ここまでやってきたからこそ、そういう運命にたどり着いた感じ」と受け止める。

「続けてきたからこそ見えてくる景色がある」

 京都を離れ、SUPER EIGHTとして活動を続け、俳優としてもさまざまな作品を経験してきた。その時間があったからこそ、自分自身を演じる舞台で、原点の場所へ戻ることになった。

□丸山隆平(まるやま・りゅうへい) 1983年11月26日生まれ、京都府出身。SUPER EIGHTのメンバー。バラエティー、ラジオ、ドラマ、映画、舞台など幅広く活動。近年の主な出演作に映画『金子差入店』、舞台『浪人街』『oasis』、ドラマ『FOGDOG』など。主演映画『薔薇の鎖』が12月11日公開予定。FM COCOLO「Groove-Method」ではDJを務める。11月24日、26日には「Groove-Method LIVE 2026」が大阪、東京で開催される。

舞台『water』
作・演出:藤田貴大(マームとジプシー)
出演:丸山隆平/青柳いづみ、伊藤万理華、植木祥平、内田健司、平井まさあき(男性ブランコ)、山本直寛/持田将史(s**t kingz)ほか
東京公演:2026年9月27日~10月25日、東京グローブ座
京都公演:2026年11月7~10日、京都劇場
企画製作:東京グローブ座

ヘアメイク:中嶋竜司(HAPP’S.)
スタイリング:袴田能生(juice)

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