ピコ太郎、痛風&膝の負傷を乗り越え…年間80.8曲制作プロジェクト完走 支えになった“家族”の存在

世界的ヒット曲『PPAP』から10年。ピコ太郎が2025年8月からスタートさせた、1年間で80.8曲を配信するプロジェクト『Tottemo Release 80.8』が、26年7月29日のリリースで完走した。ほぼ毎週1~2曲ペースで新曲を発表し、全曲にミュージックビデオ(MV)を制作する異例の企画。少数精鋭で走り続けた1年の裏では、プロデューサーの古坂大魔王とともに体も悲鳴を上げていた。1年ぶりに話を聞くと、ピコ太郎は開口一番、笑いながら本音を漏らした。

インタビューに応じたピコ太郎【写真:荒川祐史】
インタビューに応じたピコ太郎【写真:荒川祐史】

ほぼ毎週1~2曲発表の過酷スケジュール「やんなきゃよかった(笑)」

 世界的ヒット曲『PPAP』から10年。ピコ太郎が2025年8月からスタートさせた、1年間で80.8曲を配信するプロジェクト『Tottemo Release 80.8』が、26年7月29日のリリースで完走した。ほぼ毎週1~2曲ペースで新曲を発表し、全曲にミュージックビデオ(MV)を制作する異例の企画。少数精鋭で走り続けた1年の裏では、プロデューサーの古坂大魔王とともに体も悲鳴を上げていた。1年ぶりに話を聞くと、ピコ太郎は開口一番、笑いながら本音を漏らした。(取材・文=平辻哲也)


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「やんなきゃよかったです(笑)」

 制作量は想像以上だった。「大体1週間に1曲から2曲配信のペース。しかも全部ミュージックビデオがついている」。撮影も大がかりなチームを組んだわけではない。都道府県ソングの多くは、ピコ太郎、マネジャー、後輩の3人ほどで撮り、古坂が編集。avex側を含めても、プロジェクトをフルで動かしたのは「3~4人くらい」の少数精鋭だったという。

 そんな1年の途中で、ピコ太郎を襲ったのが痛風だった。古坂もほぼ同じ時期に発症したという。

「痛風って『風が吹いたら痛い』って言いますよね。あれ、うそですね。風が吹かなくても痛いですピ(笑)。最悪じゃないですか。風は関係ないですね」

 本人の表現はさらに生々しい。

「皮膚を裂いて、神経を出して、それに低周波治療機器を貼って最強にした状態が2日間続くようなものですピコ。だから拷問ですね。あんなに痛いと思わなかった。何もできないですし、寝ることもできない。常に足を誰かがトンカチで殴っているような、しかも定期的に、ずっと、ずっと」

 痛みが治まるまでには約10日かかったという。

「10日のうち4日間は激痛で、そのうち2日間が超激痛だった。こんなに痛いんだったら、もう足はいらないなと思ったくらいでした」

 膝にも不安を抱えている。過去には靭帯や半月板の手術を経験し、今回も靭帯を損傷。ところが、その3日後にはテレビ収録が待っていた。

「ちゃんと踊りましたピコ。途中、ビシッて音が鳴ったんですけど(笑)」

 しかも、『PPAP』をはじめとするピコ太郎のダンスは膝に優しいとは言い難い。

「ピコ太郎の踊りなんて、足を横にクネクネやる、そういう踊りばっかりですからね(笑)」

 そこまで体を酷使して80.8曲を作った背景には、年齢への意識もあった。

「この年齢、この体調で、こんなに頑張れるのって、もう人生において最後かなと思ったんですピコ。ここから後は頑張ると死に直結するんで(笑)。古坂さんは50代、僕は60代ですけど。アイデアが出るうちはやっておこうと思った」

 ところが、出し切ったつもりでも創作のスイッチは切れなかった。

「全部出し終わったのに、あれから10曲ぐらい増えているんですピ。だから、もう1枚アルバムを作れるんですけど、これはちょっと数年後にしたいですね(笑)」

過酷な制作を支えたのは家族だったという【写真:荒川祐史】
過酷な制作を支えたのは家族だったという【写真:荒川祐史】

『PPAP』の“逆”だったプロジェクト

 過酷な制作を支えたのが、古坂の家族だった。自宅にレコーディングスタジオがあるため、古坂は育児や家事の合間を縫って作業を続けていた。楽曲『ママだいすき』などには小2の長女と5歳の次女も参加している。

「『レコーディングするよ』って言うと入ってきて、自然と普通にソニーのヘッドホンをするんですね。調整してレコーディングして、終わったらお菓子をもらいに行く(笑)。生活の中にレコーディングが入っているんですピコ」

 娘たちは「テイク1、テイク2で終わっちゃう」という腕前。報酬もきちんと用意された。

「プリキュアのシール入りチョコを払った。最近はちいかわに変わりました(笑)」

 ピコ太郎が古坂宅から配信する時も、家族総出だった。

「本番中に僕が調子に乗って水をこぼしたら、タオルを持ってきてくれるんですピ。すごい協力してくれました、家族全員で。撮影も奥様が『5秒前』ってやってましたからね」

 少人数だからこそ、通常なら難しい発想も勢いで実現した。10周年プロジェクトにはLiSA、小林幸子、MAXのMINA、中尾ミエ、Beverly、矢島美容室のマーガレット・カメリア・ヤジマ、DJ Hello Kittyら多彩な顔ぶれが参加している。

「これだけ曲を出すからできたんですね。勢いがついたんですよ。じゃないと、LiSA、小林幸子、MAXのMINA、中尾ミエ、Beverly、矢島美容室のマーガレット・カメリア・ヤジマ、DJ Hello Kittyをブッキングできない。普通に考えたら無理なんですピ」

 所属レーベルもレコード会社も異なる。通常なら調整だけでも難航するところだ。

「本来だったら『無理です』っていうところを、みんなに言いに行ったんですよ。そしたら行けちゃったんですね(笑)。だから、何でもそう。1歩踏み出せば100歩歩けるんだなというのを今回知りましたピコ」

 取材時点では、配信上の「完走」を迎えてもMV制作は残っており、そのまま9月27日の10周年ライブの準備に突入していた。

「今、『やんなきゃよかった』って言ったんですけど、もうちょい経って体力が回復すれば、良かったなと思えるんですピ。でも、今ちょっとピークを迎えていまして(笑)」

 45秒の『PPAP』で一気に世界を回った男が、今度は80.8曲を1年かけて作った。本人が面白がったのも、その極端な対比だった。

「PPAPは1曲ポンって出したら一斉にドーンって広がって、1曲で10年持った。逆もいいなと思って。1曲で10年持って、80.8曲で1年やった。その差が面白い。ちょっと俯瞰で見たら、それに気付いてくれる人がいるんじゃないかと思って、一応仕込んでやったことではあるんですピコ」

 45秒の1曲で世界を席巻した男が、10周年には80.8曲を1年かけて作った。少人数のスタッフと古坂の家族を巻き込み、痛風や膝の故障を抱えながら、それでも新曲を作り続けた。「やんなきゃよかった」と笑うのは、それだけやった実感があるからだろう。

□ピコ太郎(ぴこたろう) 千葉県出身のシンガー・ソングライター。2016年、YouTubeに投稿した『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』がジャスティン・ビーバーにSNSで紹介されたことをきっかけに世界的ヒット。米ビルボード「Hot 100」にチャートインし、同チャートにランクインした「最も短い曲」(当時)としてギネス世界記録に認定された。17年には来日したトランプ米大統領を迎えた晩さん会に出席。SDGs推進大使として国連本部でパフォーマンスするなど、国内外で活動を続けている。

デジタルEP『Tottemo Release 80.8 (12)』
2026年7月29日配信。全10曲で、『Are you CEO?』『Shipp Petaaan feat. マーガレット・カメリア・ヤジマ』『47都道府県 feat. 小林幸子』『0.8 Pen-Pineapple-Apple-Pen』などを収録している。

『PPAP X PT ~PPAP10周年プレミアムライブ~』
2026年9月27日、東京・池袋harevutaiで開催。『Tottemo Release 80.8』の楽曲やデビューから10年間の楽曲を、映像演出などを交えて披露する予定。子ども向けのイヤーマフも無料で貸し出す。

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