NHK職員が出演者からの性被害でPTSDに 局側の“不適切対応”認定で会長が謝罪「痛恨」
NHKは5日、職員が番組出演者から意に沿わない性被害を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症して休職したこと、その際に組織として不適切な対応をしたとする外部専門家による調査検討委員会の報告書を公式サイトなどで発表した。職員側からの配慮要望や医師の意見を軽視し、前例踏襲の対応に終止していた実態が明らかとなり、井上樹彦会長が不適切な対応について深謝した。

「前例踏襲」に医師意見軽視…外部専門家による報告書を発表
NHKは5日、職員が番組出演者から意に沿わない性被害を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症して休職したこと、その際に組織として不適切な対応をしたとする外部専門家による調査検討委員会の報告書を公式サイトなどで発表した。職員側からの配慮要望や医師の意見を軽視し、前例踏襲の対応に終止していた実態が明らかとなり、井上樹彦会長が不適切な対応について深謝した。
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発表によると、被害を受けた職員(以下、A職員)は、番組出演者らとの懇親会の後に性被害に遭い、その後、体調を崩して欠勤・休職に追い込まれた。PTSDと診断されたA職員は、被害から1年数か月後に職場へ被害事実を打ち明け、フラッシュバックなどを避けるため所属部局以外での復職(「特段の配慮」)を強く求めていた。
しかし、人事局などの担当者は「現所属での復職が原則」として取り合わず、主治医や所属部局の産業医が「別の職場での復職」を提案したものの受け入れられなかった。A職員は繰り返し異動を申し出続けたが、希望が叶ったのは被害から3年余りが経過したあとだったという。
事態を重く見たA職員が昨年4月、労働組合を通じて申し入れを行ったことを受け、NHKは同年5月、弁護士で元最高裁判所判事の池上政幸氏を座長とする「職員等の権利・利益の擁護等の在り方をめぐる調査検討委員会」を設置。約1年間にわたり関係者35人へのヒアリングや計34回の会合を重ね、調査を進めてきた。
調査検討委員会が提出した報告書では、NHKの対応における問題点と原因が厳しく指摘されている。
【調査検討委員会が指摘した主な問題点と原因】
○「特段の配慮」の欠如と原則主義:例外を認めると他の休職者への影響が広がると懸念し、前例踏襲に終止。厚労省の復職手引きにある「元の職場への復帰原則」を誤解し、原則遵守自体が目的化した。
○組織的対応の欠落と報告不足:事案の深刻さに関する共通認識が持てず、リスクマネジメント室や担当役員等への報告・再発防止策の検討がなされなかった。
○主治医・産業医の意見の軽視:医師が異動を求めていたにもかかわらず、慎重な検討を行った形跡がなく軽視された。
○PTSDへの理解不足と疑問視:PTSDの症状への理解が乏しく、打ち明けが被害から1年数か月後であったことから、被害事実そのものへ懐疑的な見方が発生・継続した。
○職員の消極的姿勢:多くの関係者が「自分にできることはやった」とする一方、A職員の心情に配慮し汗をかく職員はおらず、自らの担当範囲のみで捉える縦割り・機能不全に陥っていた。
今回の調査結果を受け、NHKの井上会長はコメントを発表。組織の対応の不備を認め、深く謝罪した。
「本件被害が発生したことは痛恨であり、さらに、その後のNHKの対応により、Aさんにさらなる負担をかけ、復職まで時間を要するなど、キャリアに大きな影響を与えたことを重く受け止めています。NHKを代表して、当時の対応の不適切さを心よりお詫び申し上げます。Aさんが、心身の健康を回復し、安心して働き続けられる環境を整えていきたいと考えています」
NHKは今後の対応として、今年1月に「NHKハラスメント防止・撲滅宣言」を発出したほか、4月には「NHK人権方針」を策定。さらに8月1日にはカスタマーハラスメント防止に向けた規程改正を行った。
今後は、人権デューディリジェンス(人権DD)の確立(2026年度中に試行予定)や、苦情救済窓口(グリーバンスメカニズム)の開設(2026年中に開設予定)を進めるほか、「職場のメンタルヘルスケアガイド」の改定などを通じて、組織風土の抜本的な改革と再発防止に取り組む方針としている。
放送局員が、出演者に性被害を受けたケースは2025年3月、フジテレビが第三者委員会の調査報告書で発表している。元タレント・中居正広氏と女性アナウンサーを巡るトラブルで、その際も局側の「不適切な対応」が問題視されていた。
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