水野新太、亡き母に捧げるデビュー戦「絶対に見守っている」 登場曲『翼をください』に込めた思い
天国の母に大舞台で勝利を捧げる。現DEEPフェザー級暫定王者の水野新太(23=フリー)は「RIZIN.54」(8月11日・TOYOTA ARENA TOKYO)で強豪・リー・カイウェン(中国=30)と対戦する。2024年8月10日に最愛の母が死去。今年6月に発表されたRIZINデビュー戦は、偶然にも命日の翌日にマッチアップされた。決戦を間近に控え、インタビューで心に秘めた思いを明かした。

8月11日にRIZINデビュー「この試合を捧げます」
天国の母に大舞台で勝利を捧げる。現DEEPフェザー級暫定王者の水野新太(23=フリー)は「RIZIN.54」(8月11日・TOYOTA ARENA TOKYO)で強豪・リー・カイウェン(中国=30)と対戦する。2024年8月10日に最愛の母が死去。今年6月に発表されたRIZINデビュー戦は、偶然にも命日の翌日にマッチアップされた。決戦を間近に控え、インタビューで心に秘めた思いを明かした。(取材・文=浜村祐仁)
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幻想的な雰囲気がアリーナを包んでいた。5月に開催されたDEEPフェザー級暫定王座戦。水野の入場と共に場内には『翼をください』が鳴り響く。格闘家として唯一無二とも言える登場曲の選曲には、深い理由があった。
「お母ちゃんが死ぬ2日前くらいに、いきなり翼をくださいを歌い始めたんです。歌詞の意味を考えたときに、『今、感じていることなんだな』って思って。自分は家族のために戦っているという思いが強いので、お母ちゃんの気持ちを背負えると思って入場曲に選びました」
2年前の8月、水野の母親は若くしてこの世を去った。
「3年半くらいずっとがんと戦っていたんです。病院でもうやることがなくなったので、最後は家で過ごそうと、1週間ほど帰ってきていました」
「家族は(最期が近いことを)分かっていたみたいです。でも、自分は治ると信じていました。『治療のために一回帰ってきただけで、また良くなって病院に戻る』と思っていました」
当時、プロデビュー戦から3連勝を飾り、DEEPでの初陣が決まっていた。試合まで1か月。本当に戦えるのか。ファイターとしてステップアップを続ける中での母との別れに、気持ちは揺れ動いた。
「正直、試合ができるメンタルではなかった。とにかく練習に行くのが辛かったです。試合を延期することも考えた。ただ、ここで逃げていたらダメだなと。お母ちゃんも『戦ってほしい』と思ってくれているはずだって。ここを戦い抜いて、お母ちゃんのために勝って自分の中でケジメをつけようと思いました」
試合は2R・TKOでの勝利。自分に打ち勝ってつかんだ白星が、後のDEEPフェザー級トーナメント優勝、そして今年5月の暫定王座戦で戦った、元RIZINフェザー級王者・牛久絢太郎からの勝利に繋がった。
「格闘技をやっている間は(悲しみを)忘れられます。自分が一生懸命やって試合で勝つことで、家族が喜んでくれているというのが、今の大きな支えです」

明かした思い「絶対に近くで見守ってくれている」
物静かに、しかし、意思のある話し方が水野の特徴だ。脚本家だった母親に触発され、自身も日本映画大学に進学。その後、大学4年生時に中退し、格闘技の道に進んだ異色の経歴を持つ。母親はその決断に反対だったと話すが、試合会場には必ず足を運んでいた。
「『危ないから試合しないで』みたいな感じだったんです。やっぱり息子が試合をして負けたり、怪我をしたりするのが怖かったみたいで。格闘技は何が起こるか分からない世界だから、本当は試合を見たくないという感じだったんですけど、いつも応援に来てくれていました」
待望の大舞台での観戦は叶わなかった。それでも、その胸はいつも母親への思いで溢れている。
「今はもういないです。でも、絶対に近くで見守ってくれていると思っています。だから試合前は特にお母ちゃんのことを考えることが多いですね」
リー・カイウェンと対戦する8月11日のRIZINデビュー戦は、奇しくも二回忌となる命日の翌日となった。「本当に1日違い。マジで負けられないという気持ちが強い」と強気に意気込む。
早すぎた母との別れに、心にはさみしさも去来する。「最初の1年とかは本当にキツかった。さすがに『もういないんだな』という実感はありますけど、いまだに無理ですよ。全然乗り越えられてはいなくて、今でも夢に出てくることがいっぱいあります」。素直な思いを打ち明けた。

それでも、戦いの舞台からは決して背を向けない。最後にはファイターらしい目つきに変わった。
「RIZINという大きな舞台でしっかり自分を表現したいです。良い勝ち方をして、この試合をお母ちゃんに捧げます」
大切な人との別れはいつも突然だ。喪失感で胸が押しつぶされそうな日もある。それでも、共に生きた証だけはいつまでも残り続けるだろう。大空へ翼を広げて飛んでいった水野の母も、キャリアを懸けたRIZINデビュー戦はきっとリングのそばで力を貸してくれるはずだ。
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