14歳でデビュー、2年のホテル暮らし…佐津川愛美がたどり着いた「日常を面白がる」生き方

俳優・佐津川愛美(37)の初エッセー『今日も、自分を生きる練習』(幻冬舎)が6月10日に刊行された。本書は、彼女が33歳から37歳までの約5年間にわたって紡いできた連載をまとめた一冊で、日々のささやかな発見や葛藤が等身大の言葉でしたためられている。自分と向き合い立ち止まったからこそ見えてきた、佐津川らしい「生き方」とは。

インタビューに応じた佐津川愛美【写真:増田美咲】
インタビューに応じた佐津川愛美【写真:増田美咲】

自身初のエッセーが刊行

 俳優・佐津川愛美(37)の初エッセー『今日も、自分を生きる練習』(幻冬舎)が6月10日に刊行された。本書は、彼女が33歳から37歳までの約5年間にわたって紡いできた連載をまとめた一冊で、日々のささやかな発見や葛藤が等身大の言葉でしたためられている。自分と向き合い立ち止まったからこそ見えてきた、佐津川らしい「生き方」とは。(取材・文=下城万由子)


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 ウェブマガジンでの連載がもとになった本書。書籍化のきっかけは、担当者からの熱いアプローチだった。「マネージャーさんから連絡があって、椅子から転げ落ちそうになりました」と予想外の提案だったと笑いながら明かした。

「なんとなく生きていると書くことがなくなっちゃうんです。日々の生活を送る中で、『あ、このエピソード書こう』と思う時もあれば、月2回の締め切りのタイミングに合わせて、必死に絞り出す時もあります」

 そうして書かれた文章は、構成を考えずに思ったままを書き連ねたものとなっているが、周囲からは「映画みたい」「生活の細部をちゃんと捉えて文章にされている」と評されることも多いという。「自分では特に意識して書いていたつもりはないのですが、そう言っていただくと、私の役者としてのいいところがそこに現れているのかもしれないなと思います。」。

 33歳から37歳までのおよそ5年間の心情が描かれた本作。佐津川にとって、この連載が一冊の本となったことで、考え方にも変化が生まれた。

「日々の悩みをずっと書いてきただけなので、結果として自分の中では何一つ解決していないんです(笑)。でも、本にしていただくことで、『解決はしていないけれど、それでいいのかもしれない』と思えるようになりました。無理に解決して前に進むわけじゃなく、悩みながら生きていけばいい。それが生きるってことなのかもな、と。本のタイトルを提案していただいた時に、自分の中で『私の人生ってこういうことなんだ』と腑に落ちたんです。私は今、生きる練習中なんだって。今までの自分の人生で不正解なことはない、そういった気付きがすごく大きかったです」

 14歳で芸能界へ入り、映画『蟬しぐれ』(2005年)でデビュー。右も左も分からないまま大人の社会へと飛び込んだ。本の中では、当時の葛藤についても触れている。

「頑張ってきたなという思いと同時に、当時の自分に『味方になってあげられなくてごめんね』という気持ちもあります。『もうちょっと楽に生きてもいいんだよ』と声をかけてあげたいです。でも、それが私の生き方だったし、きっとあの経験がなければ役者としての私も存在しなかったと思っています。役者は、うれしいこともつらいことも、すべての経験がプラスになる職業だと思っているので、後悔の気持ちは一切ないです」

エッセーに込められた思いとは【写真:増田美咲】
エッセーに込められた思いとは【写真:増田美咲】

完璧ではない毎日も「生きる練習」

 過去の葛藤を否定するのではなく、役者としての糧として受け止めている。一方で、思い立ったらすぐに動く行動力も持ち合わせている。1人で海外旅行に出かけることもあり、昔から「間取りを見るのが好き」で、引っ越しも多かったという。その延長線上にあったのが、2年間に及ぶホテル暮らしだった。1か月ごとに滞在する場所を変えながら、その時々の自分に合う生活を探っていった。

「元々は1年くらいのつもりで始めたのですが、気付けば2年もたっていました。毎月、『今の私はどういう場所に住みたいんだろう?』と、その時の仕事の状況や心境に合わせて、生活のことをちゃんと考える。それがすごく面白くて」

 日当たりが悪く、思い描いていた生活とは違った月もあった。それでも、環境を変えるたびに新しい発見があり、その不便さも含めて日々を面白がるきっかけになっていた。

 そんな佐津川が現在、情熱を注いでいるのが『映画と仲間filty』の活動だ。自身の芸能生活の原点でもある「映画」の現場の魅力をより多くの人に届けたいと考え、25年にスタート。トークイベントや子ども向け映画撮影のワークショップなどを企画・プロデュースしている。「我が子同然の思いで立ち上げた」と語るこのプロジェクトは、自身がデビュー時に現場で感じたことを、子どもたちに伝えていきたいという想いが原動力だ。

「学校に行けずにいたお子さんが、『人と関わることを頑張れるようになりました』と言ってくださったり、みんなの未来につながるようなきっかけをプレゼントできたらと思います。休憩時間に、初めて会ったお子さん同士が楽しそうに遊んでいる姿を見るだけで、この場を用意できて良かったなってすごく思います。大きく活動を広げたいわけではなく、自分の目の届く範囲で大切に育てていきたいです」

 子どもたちの未来につながる活動にやりがいを見いだす一方で、自身の人生設計や将来については、じっくりと立ち止まって考える暇もなく駆け抜けてきた。

「実は、人生設計というものをこれまで真剣に考えたことがなく、ただ突っ走って生きてきてしまったんです。この仕事を始める前は、20歳ぐらいで結婚して、若くしてママになることが夢だったんですけど、仕事を一生懸命やってきたら、気付いたらこの年齢になっていました。これからはちゃんと自分の人生設計についても考えたいなと、まさに最近になって思い始めてきたところです」

 今回のエッセーに込められた思いは「ただ日常を面白がる」ということ。つまらない毎日も、見方を変えるだけで、面白いと思える部分はきっとあるはず。人生をもっと面白がりながら、同じ時代を生きる仲間たちと日々を楽しみながら生きていきたい。そんなささやかな希望が、この一冊には込められている。

 解決しない悩みも、思い通りにいかない毎日も、すべては「生きる練習」だ。佐津川が紡ぐ言葉は、完璧ではない自分をそっと抱きしめ、明日からの日常を少しだけ面白がるための、優しいヒントに満ちている。

□佐津川愛美(さつかわ・あいみ)1988年8月20日、静岡県生まれ。2005年、映画『蝉しぐれ』で俳優デビュー。映画『ヒメアノ~ル』、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』などに多数出演。25年に『映画と仲間filty』を立ち上げ、トークイベントをはじめ、子ども向けの映画撮影ワークショップなどの企画・プロデュースを手掛けている。現在は日本テレビ系「おちたらおわり」に出演中。

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