佐々木蔵之介、演劇の教えは「迷ったら大きい声を出せ」 映像現場でも大切にする芝居の芯
WOWOWオリジナルドラマ『ALIUS -特定事象捜査ファイル-』(日曜午後10時、全6話)で主演を務める佐々木蔵之介。劇中では、科学では説明できない不可解な事件に挑む刑事・佐野省吾を演じる。取材で印象に残ったのは、作品の内容だけではない。「間違ってもいい」「生っぽいものを信じたい」。佐々木は、現場での立ち方についてそう語った。

WOWOWオリジナルドラマ『ALIUS -特定事象捜査ファイル-』で主演
WOWOWオリジナルドラマ『ALIUS -特定事象捜査ファイル-』(日曜午後10時、全6話)で主演を務める佐々木蔵之介。劇中では、科学では説明できない不可解な事件に挑む刑事・佐野省吾を演じる。取材で印象に残ったのは、作品の内容だけではない。「間違ってもいい」「生っぽいものを信じたい」。佐々木は、現場での立ち方についてそう語った。(取材・文=平辻哲也)
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座長として心掛けていることを聞くと、佐々木はこう言った。
「率先してセリフを間違いますぜ、という感じにしようかなぐらい」
もちろん、本当に間違えたいわけではない。現場の空気の話だ。
「間違わずに、その通りやらなあかんとなったら、ちょっと伸び代がない。小さく収まるので、間違ってもいいから、ちょっと弾けるぐらいのものがあってほしい。あんまりきっちりじゃなくていいなと思っています」
『ALIUS』は、佐々木自身も「チャレンジング」と表現する作品だ。だからこそ、現場にも余白が必要だった。
「チャレンジングな現場においては、カチカチ決めるんじゃなくて、伸び代というか、余裕ですよね。間違ってもいい。感情が動いたら、いろいろ揺れる。それで間違ってしまうこともある。でも、安全運転しようと思ったらできるけど、それじゃあまり触れない。ミスってもいいから、ちょっと進んでいくぜという方にしたい」
今回の現場でも、そうした意識はあったのか。
「具体的には分からないですけど、収めよう、収めようとしてはいけないだろうなと。やっぱり生っぽいものを信じた方がいい。リハーサルの通りに決まったままではなくて、その時に生まれた瞬間を大切にしていきたい」
佐々木は、舞台でキャリアを積んできた。劇団「惑星ピスタチオ」の看板俳優として活躍し、1998年に退団して上京した。演劇で培った考え方は、今も残っている。
「よく演劇で、迷ったら大きい声を出せ、みたいなことがあるんです。芝居に迷うんやったら、大きい声を出せ、と。収めようと思ったら、それは何でもできる。でも、迷って変に細工するんやったら、大きい声を出した方がいい」
声量の話だけではない。芝居の芯の話だ。
「要するに自信を持てということですよね。迷って小さい感情しか動かへんのやったら、大きい声を出すには、ちゃんと感情を持たないと大きい声は出ないはずなんです。自信を持たないと大きい声は出ない。小さい声でごまかすことはできる。ごまかして芝居っぽいことはできるけど、大きい発声をちゃんとするには、しっかり芯を持たないとできない」
その感覚は、映像の現場にもあるのか。
「映像でもそういうところってあります。違うのかもしれないですけど。演劇で迷うんやったら、感情でちょっと迷って、方法を探るぐらい。そのうちに分かってくる」

58歳になっても消えない迷い…「ずっと思い続けて」
今年で58歳。経験を重ねれば、迷いはなくなるのか。そう聞くと、佐々木は即座に否定した。
「いやいや、やりながら迷っています。スタート前も迷っているし、やりながらも迷っています。本当に何が正解かも分からない」
家で台本を読む。現場に向かう車で読む。テストで読み、リハーサルで読んで、また違うと思う。
「こっちの方が伝わるかなとか、僕が想像していた相手役の言葉よりも、このままで入った方がいいのかな、どうなのかなって、ずっと思い続けています。もう本番は迷わんようにしています。それをやったら切りがないので、映像では。本番がオッケーだったら、もうそれは考えないでおこうと思っています」
舞台では、また違うという。
「舞台は、ずっと迷い続けなきゃいけないと思うんです。千秋楽まで、ずっとそれをやり続けなきゃいけない」
完成した映像作品は見るのか。
「見ます。やってきたら、見ておかなきゃと思います。映画なら、できるだけ劇場にも足を運びます。昨日も(主演した)『幕末ヒポクラテスたち』を見てきたんです。映画は、お客さんと一緒に見られる。テレビはもう無理ですし、演劇も客席には入れない。映画館は、極力見に行っています」
迷いながら現場に入り、本番では迷わないようにする。間違いを恐れず、感情が動く余地を残す。佐々木蔵之介は、座長としてそういう空気を作ろうとしている。
□佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)1968年2月4日、京都府京都市出身。神戸大農学部卒業後、広告代理店勤務を経て、劇団「惑星ピスタチオ」の旗揚げに参加。看板俳優として活躍し、1998年に退団して上京した。2000年、NHK連続テレビ小説『オードリー』で注目を集める。近年の主な出演作に大河ドラマ『麒麟がくる』『光る君へ』、TBS系連続ドラマ『ハンチョウ』シリーズ、映画『超高速!参勤交代』『空母いぶき』『ゴジラ-1.0』など。
○作品情報『ALIUS -特定事象捜査ファイル-』
7月19日午後10時からWOWOWで放送・配信されている全6話のクライムサスペンス。警視庁捜査1課の刑事・佐野省吾は、3年前に突然去った元妻・薫の存在を心に抱えながら、不可解な事件に向き合う。都内の地下駐車場で、喉に4本のナイフが刺さった脳神経外科医の変死体が発見され、佐野は科警研から出向中の神崎透流、バディの羽住杏奈とともに捜査に乗り出す。出演は佐々木蔵之介、中川大志、恒松祐里、坂井真紀ら。監督は山本大奨、脚本は小島聡一郎。原作はALIUSプロジェクト/WOWOW・楽天。制作プロダクションは東北新社、製作著作はWOWOW。
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