年内引退の上福ゆき、今後の生活は「マジでノープラン」 収入ゼロの恐怖や葛藤も…貫く美学「ピークで辞める」

東京女子プロレスの最高峰王座であるプリンセス・オブ・プリンセス王座挑戦直後、年内でのプロレスラー引退を発表した上福ゆき。“Casual Beauty”と呼ばれた彼女は、ピークでの引退を決意した。上福へのインタビュー後編は、引退を決意した理由、そして引退ロードについて聴いた。

引退を決意した理由を語った上福ゆき【写真:橋場了吾】
引退を決意した理由を語った上福ゆき【写真:橋場了吾】

『最後までかっけーな』という辞め方をしたいという願望はあった

 東京女子プロレスの最高峰王座であるプリンセス・オブ・プリンセス王座挑戦直後、年内でのプロレスラー引退を発表した上福ゆき。“Casual Beauty”と呼ばれた彼女は、ピークでの引退を決意した。上福へのインタビュー後編は、引退を決意した理由、そして引退ロードについて聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 6月29日、上福ゆきは髙木三四郎・サイバーファイト副社長、甲田哲也・東京女子プロレス代表同席のもと、引退発表記者会見に臨んだ。会見の中で、上福は「ピークで引退するのがイケてる」と語っていた。

「(引退を考えたのは)今年の5月の頭から半ばぐらいですね。(荒井への挑戦決定と)同じくらいです。ピークは……勘です。スロットと一緒ですよ。続けていたら勝てるかもしれないし、全部ダメになるかもしれない……なので今がオールインしている状態。この判断が正しかったかどうかは、引退の日に分かるんじゃないですかね(笑)。今日昨日のみならず、ずっといつ辞めてもいいように全力で東京女子と向き合ってきたので……明日『お前、クビ』と言われてもいいように。いつキリがいいとか、いつまでやれるとかというのは、自分の感性で成り立っていると思うので、自分的にはこんなもんでしょっていう感じですね。(後悔は)一切ないです。いつか辞めるんでね、辞めるんだったら一番いいときじゃないかっていうのは本当に思っていますし、誰かに『最後までかっけーな、こいつの辞め方』っていうのは言われたい願望はあったんじゃないですかね。それが、ピークで辞めるというので、今タイミングがハマったと」

 甲田代表は、記者会見の中で「上福のやることにはいつも意味があった」と語った。

「すごく嬉しかったですよ。本当にそのままだったんですけど、自分から『これは意味があるからやりたいんです』と言ったことはないですし、甲田さんからもコメントすることはなかったんです。自分がアジア(のマーケットに)挑戦したいって言ったときも、行けばいいんじゃない? くらいでしたし。言いたいことを言わなくても、理解してくれていたんだな、甲田さんも私に対して愛情を向けてくれていたんだなというのを再認識できて、嬉しいなあと思いました。皆『まだできる』と言ってくれたんですけどね、ここは(山口)百恵スタイルで(笑)」

 7月18日の東京女子・後楽園大会では、上福にとってゆかりのある選手が揃う『上福&隈取&ハットリ桜vs髙木三四郎&今成夢人&桐生真弥』という6人タッグマッチが組まれた。

「隈取とは昔からの知り合いで、O-MENZを広めたいという彼の希望もあって髙木さんに紹介して、みたいな彼がプロレス界に入る機会を作った感じですね。ハットリは友達が少なそうだし、くすぶっているんで。隈取という面白い仲間を紹介するから、私がいなくなっても頑張れよという。今成さんは映像班として試合を撮影しに来たとき、試合前に無駄に緊張したときに話しかけに行って、ちょっかいを出しまくっていました。本当、お兄ちゃんみたいな感じです。(引退までに)まだまだ絡みたい選手はいますね」

この姿を見られるのもあと半年弱だ【写真:(C)東京女子プロレス】
この姿を見られるのもあと半年弱だ【写真:(C)東京女子プロレス】

引退する怖さはある。でも、辞めないと次の自分に出会えない

 12月26日の後楽園大会が引退試合となるが、11月27日には後楽園でアジャコング、VENY、飯野雄貴、夏すみれの参戦が発表されているプロデュース興行、そして12月10日には地元・藤沢市湘南台で最後の凱旋興行が決まっている。

「(プロデュース興行は)これまで紡いでくれた縁を自分がつなげて、その関係性の楽しさや新たな発見を、ファンの方々はもちろん、レスラー本人たちにも感じてもらえたらいいなと思っています。(凱旋興行は)最後にしっかり感謝を伝えたいっていうのはもちろんありますし、藤沢という街も忘れないでほしいなというのもありますね。これまで地元の方々もたくさん協力してくれたので、最後に盛大にできたらいいなと思います。(引退試合は)東京女子とのお別れだから、本当シンプルでいつも通りの東京女子がいいです。希望をいうと、シングルはしたくないですが(笑)、カードは自分で決めたいなと思っています。いつものように、自分を曲げずに、嘘をつかずにみんなで頑張る一員というのは特に変わらないので、最後の最後まで東京女子を広められたらいいと思いますし、本当に『あなたがいてよかった』と思われたいですしそうありたいですね」

 最後に、上福は東京女子についてこんな話をしてくれた。

「東京女子には、ベルトを獲って頑張ってくれる選手がいるから、逆に私はここまで自由にやれたと思っているんですよ。東京女子の軸から絶対にぶれない真面目な子たちがベルトを巻いてくれていたおかげで。自分はのびのびと海外に行ったり、SNSでも好き勝手に言わせてもらったりしているので。実は、この役割は自分で探したんですよ。学校で『掃除当番で当てられたことしかやらないやつはダメだ』ってずっと教わっていたんで(笑)。自分で掃除する場所を見つけるということが、絶対社会に出てから生きてくるんだ、と小学校のときの担任が言っていました(笑)。

 社会に出て、与えられた仕事しかやれないやつなのか、自分で仕事を見つけて率先してやれるやつなのか、それはすべて掃除から始まっているんだよと。なので、私はずっと『やるべきことは自分で探せないとダメなんだ』と思っていました。新しいことを始めることも、今までやってきたことを辞めることも、めちゃくちゃ怖いことだと思うんですよ。でも、辞めてから次が見えると思うので、ビビっちゃダメですよね。今、電車に乗って仕事に向かっている時点で、何をビビっているのって。

(今は)怖いですよ、だって収入はどうするの? ですよ。自分が今までやってきたプロレスラーというアイデンティティーってものもなくなるわけですし、シンプルに給料をもらっていたものもなくなるわけですし。仲間とも会えなくなる、頼っていた人を頼れなくなる、そんなのはいっぱいありますけど、辞めないと次の自分に出会えないですから。私は性分的にひとつのことしかできないので、東京女子に関しては一回区切らないと次に進めないので。アルバイト生活から始まる人生になったとしても、辞める勇気を持てば頑張れると思います。いや、マジでノープランなんですよ(笑)」

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