祖父、父が大河ドラマ主演…緒形敦「いずれ自分も」 『豊臣兄弟!』での気付きと収穫「すごく自信に」

NHKの大河ドラマ『豊臣兄弟!』(日曜午後8時)で織田信澄を演じている俳優の緒形敦。祖父の緒形拳さんは1965年の大河ドラマ『太閤記』で豊臣秀吉を、父の緒形直人は92年の『信長 KING OF ZIPANGU』で織田信長を演じた。3代にわたって大河ドラマと縁を結ぶことになった緒形は、今回の現場で何を感じ、何を得たのか。

インタビューに応じた緒形敦【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じた緒形敦【写真:藤岡雅樹】

『豊臣兄弟!』で織田信澄役

 NHKの大河ドラマ『豊臣兄弟!』(日曜午後8時)で織田信澄を演じている俳優の緒形敦。祖父の緒形拳さんは1965年の大河ドラマ『太閤記』で豊臣秀吉を、父の緒形直人は92年の『信長 KING OF ZIPANGU』で織田信長を演じた。3代にわたって大河ドラマと縁を結ぶことになった緒形は、今回の現場で何を感じ、何を得たのか。(取材・文=猪俣創平)

 仲野太賀が主人公の豊臣秀長(小一郎)を、池松壮亮が秀長の兄で天下人となる秀吉を演じる本作は、強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描く、夢と希望の下克上サクセスストーリー。緒形演じる信澄は、織田信長(小栗旬)の甥にあたる重要な役どころだ。

 出演はオーディションを経て決まったといい、「役者として大河ドラマに出演することが、いつも自分の目標でもあったので率直にうれしかったです。しかも今回、特に自分が好きな戦国時代が題材の大河ドラマということで、身が引き締まる思いもありました」と心境を明かした。

 大河ドラマは、緒形家にとって特別な場所だ。祖父・拳さんは秀吉を、父・直人は信長を演じた。今回、緒形が演じるのは信長の血縁にあたる信澄。「祖父も父親も主演を飾っているので、ご縁を感じるというのが一番強いです」と話し、「NHKのスタジオに行くたびに、『ここで実際に2人が撮っていたのかな?』と考えて、やっぱり不思議な気持ちになりますし、それだけで『頑張らなきゃな』と気合が入りました」と撮影を振り返った。

 そんな撮影現場を「男子校みたいな雰囲気」とたとえる。「仲野さんや池松さん、皆さんが現場を盛り上げようとしているのがすごく見えました。クランクイン前の本読みが初めての現場だったんですけど、『織田信澄役の緒形敦です』と紹介されたら、皆さん『うわー!』『イエーイ!』と盛り上げてくれるんです。僕のような役者で『初めまして』の人からすると、すごくうれしいですし、アットホームに感じる現場でした。そういう意味では芝居もしやすかったです」と感謝した。

 演じるにあたり、信澄という人物について残された史料が多いわけではなかった。そのため、「プロデューサーの方からは『ある程度ミステリアスで、あまり心情をつかめない人物として演じてほしい』と言われたので、そこは意識しました」と明かし、「信澄と関わった周りの人たちを徹底的に調べて、そこをヒントにして脚本に書かれたことも汲み取りながら『こういう感じかな』と自分でイメージしていました」と役作りのイメージを固めた。

 さらに信澄ゆかりの滋賀・大溝城跡を訪れるなど、「実際の匂いとか、その土地の雰囲気を肌で感じてスタジオの中でも意識しました」と入念に準備した。もっとも、当初は「ミステリアス」というオーダーを受けていたが、実際に芝居を重ねる中で、役の輪郭は少しずつ変化していった。

「仲野さんから『その場の実際の相手(共演者)がどう出るかで、心情もいろいろと変わってくるから、そこを大切にしながら演じてみたら』と言われました。実際にそうしてみたら、やっぱりどんどん変わったんです。根底にある信澄の思いや芯の部分は曲げずに、シーンごとの心情や雰囲気は、小栗さんや明智光秀役の要潤さんと実際に対峙(たいじ)してどう感じるかで演じようと思ったら、だいぶ変わりました。それもすごく面白くて、今回はとくにそういう現場で感じたことを大切にして演じました」

『豊臣兄弟!』では織田信澄役として存在感を放っている【写真:(C)NHK】
『豊臣兄弟!』では織田信澄役として存在感を放っている【写真:(C)NHK】

“2世俳優”と見られることは「全然嫌じゃない」

 刺激的な日々を過ごす中で、特に印象深いのは仲野と池松の姿だという。

「仲野さんと池松さんがどこにいてもずっとお芝居の話をしていて、一緒にいた時に信澄のこともいろいろと話してくれました。その中で印象に残っているのは、皆さん芝居をガチガチに固めずに、現場で起きることに対して相手の芝居をしっかりと受けて、自分がどう感じて、どう変化していくのかを楽しんでいる姿でした。それがすごく勉強になりましたし、『あ、そのぐらい自由に楽しんでいいんだ』と、学んだことですね」

 今回の出演をきっかけに新たな気付きもあった。「正直なことを言うと」と前置きし、自身の中にあった思いを打ち明けた。

「父が役者で、祖父も偉大な役者であることは、事実として分かった上で、自分も役者をやらせてもらっています。でも、どこかで『ちゃんとしなきゃいけない』『良く見られなきゃいけない』と考える自分がいたんだと思います。それが無意識のうちに、自分の中で“呪い”みたいになっていました。今回、素晴らしい役者さんたちとお芝居をさせてもらう中で、そういう上っ面なことではなく、もっと自由に、あるがままにやることが自分の良さにつながるんだと気付けました。自分の魅力を評価してもらえる環境だったことも、すごく自信になりました。今回、それに気付けたことが一番の自信にもなりましたし、収穫にもなりました」

 2世、3世として見られることは、否定的には捉えていない。「全然嫌じゃないんですよ。もちろん恩恵をいただいてるっていう意味もありますし、すごくありがたいことで、何にも嫌な思いは一切ないです」と率直に語る。

「ただ、やっぱりどこかで、無意識に生まれてからずっとそういう家系に育ってきたので、29年間ずっと積もっているわけですよ。どこかで見られている意識があったんだと思います。俳優として芝居する上で、何か自分が変なことをしてしまったら、親や家族にも迷惑をかけてしまうかもしれない。そんなことは思っていないつもりだったんですけど、そう思っていたのかもしれないと、今回気付きましたね」

 祖父と父が主演を飾った大河ドラマ。今回、その場所に立ったことで新たな目標も生まれた。

「また大河ドラマに出演したいと思いました。あと、父も祖父も主役を飾っているので、いずれは自分も、という願望ができました。まだまだそんなことを言える立場じゃないんですけど、そこを目指して頑張っていきたいと、今回の撮影が終わって強く思いましたね」

 祖父、父、そして自分へとつながった縁を力に変え、俳優・緒形敦は自分だけの“天下”を目指して歩み始めている。

□緒形敦(おがた・あつし)1996年6月20日、神奈川県出身。2017年、TBS系日曜劇場『陸王』で俳優デビュー。主な出演作に、Prime Video配信ドラマ『MAGI-天正遣欧少年使節-』(19年)、NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(同年)、映画『レジェンド&バタフライ』(23年)など。26年、フジテレビ系連続ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』で父・直人演じる安藤直司の若かりし日を演じて話題に。待機作として、26年8月21日公開の映画『ウォーターガーディアンズ』が控えている。特技はサッカー、英語、絵を描くこと。174センチ。

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