弱小プロレス団体はなぜ一部上場企業のグループに入れたのか 高木三四郎を独占直撃

――高木さんは経営者ですけど、見本にしている方はいますか。

「経営者というよりは、プロデューサーですかね。経営者じゃない。ボク自身は。DDTはプロデュースとアイディアで上り詰めてきた団体だと思っています。立場的には戦略的な要素よりは、どちらかというと細かい戦術的な部分でプロデュースとかそういった面白い部分で興味を作ってのし上がってきた団体だとボクは思っている。そういう意味では、小室哲哉さんだったり、秋元康さんだったりというような物事を1から作り上げるっていう人たちのことは参考にしたりしましたね。特に秋元さんは、AKB48は、ミニマムのところからパイを広げていったところでは非常に参考にしていますし、それまでアイドルっていうのはものすごい高嶺の花だったし、近づけるものじゃなかったのを、「会いに行けるアイドル」っていうコンセプトでムーブメントを作ったのはすごいなと思いますよね。ボクは結構、秋元さんのやり方は参考というか、真似はしていますね。会場にも何度か行って、その熱量とかも感じましたし」

――DDTのプロレスもお客さんとの距離が近いです。AKBとの共通点でしょうか。

「そうですね。新日本プロレスさんは距離を作って今の立ち位置を作っているように見える。ウチはその分、距離を詰めてやっているところかなと思います」

――プロデューサーとしての手腕はどこで勉強されましたか。

「ボクはもともと学生時代にクラブイベントなんかもやったりしていて、比較的お客さんが楽しみたいという欲求みたいなものをくみ取ることはできたので、それに対して、こういうふうにすればお客さんに喜んでもらえるっていうのを身近に体験していたので、それをプロレスという土壌を借りてやっているだけです。だから、結構その時代にやっていたことが参考になっている部分はありますね。結局、集客するビジネスって一緒なんですよ。いかに顧客っていうか、普通の一般の人をそこに向かせることができるかっていうところなので。それは100人集めるとか1万人集めるとか規模感はあれど、そのやり方とかは変わらないですね」

――プロデューサーとして胸を張れるところは。

「自分の仕掛けたことでお客さんが喜んでもらえる、満足してもらえる、そこですね。自分が仕掛けたことでお客さんがあっと驚くみたいな、自分が仕掛けたことでお客さんが楽しんでもらって、感動してもらえる空間を作るところはプロデューサーならではだと思います。それは、パフォーマンスをする人間としてもそうです」

――興行規模、年商で業界2位を自負しています。

「じゃないですかね。適当なこと言うのもあれですけど、(首位の新日プロとの)その差は8倍から9倍くらい離れていますけど、でも、そのくらいあるんじゃないですか。(その他の団体より)間違いなく上ですね」

――新日プロを追い抜きたいとも発言しています。

「もちろんです。いつかは追い抜きたいと思っています。それくらいの気持ちではいますよ。じゃないとやっていて面白くない」

――同じ両国大会を比べた時、新日プロに劣っていると思うところは。

「もう単純に知名度と歴史ですね。そこだけです。やっている内容はぶっちゃけた話、そんなにそこまで差があるとは思っていないですよ、個人的に。ただ、知名度と歴史が圧倒的な差がある。歴史は埋めようがないし、でも知名度はなんとか埋めようができるのかな。そこにトライしようかなと思っていますけどね。歴史は勝てないです。向こうが歩んできた40何年の歴史と、ウチの20の歴史というのは全然違うので。そこは、詰めていくしかない」

――知名度を上げるためには。

「露出でしょうね。あとはタレント力を上げるといったところじゃないですかね」

――ここ数年でプロレス団体の社長はレスラー出身者からビジネスマンへと大きく転換しました。高木さんは考えは?

「経営者がちゃんとやるべきだと思いますね。プロの経営者がやるべきだとボクは思っています。レスラー上がりではないほうがいい。間違いなく。たまたまボクがやっているだけの話なので、そのほうが都合がいいだけで、別にボクは社長の職はいつでも誰かに譲りたいなと(笑い)。プロデュースはしたいですけど、社長業はもうしんどさしかないので。ただやる人間がいないし、ボクがやるしかないからやってるだけの話であって。ボクのやっていることは本当にゲリラ戦みたいなものなんですよ。ボクはゲリラ戦はすごい得意なんです。100人から1000人ぐらいまでの興行を仕掛ける側で回れば、たぶんボクは強い。絶対負けない自信はあるんですけど、これが5000人、1万人とか何万人とかなってくると、さすがにボクも勝てない部分とかある。だけどゲリラ戦では絶対負けない自信があるので、ゲリラ戦ですよね。ボクの本領というのは」

――そういう意味でもサイバーエージェントの力は大きいですね。

「たまたまボクがやっていたゲリラ戦がニッチな業界にマッチしていて、すごく王道というか、プロレスのど真ん中っぽくなってきているだけの話であって、資本力でこられると絶対勝てないですね。そこに対決するには、そういう企業の力とか、ちゃんとした経営者がいたほうがいいと思いますよね」

――どうしたら中小企業の人が、上場企業の一員になれるのでしょうか。

「ブレないことですね。ボクは立ち上げた時から絶対にこの業界で1位を取ってやろうという気持ちだったので、そこの気持ちがブレてないんですよ、全く。だから、そこは大事だと思います。最初から『ウチは業界3位か4位でいいや』みたいな人たちのことなんか、誰も応援しないし、誰もノレないじゃないですか。だからボクはまだまだ1位になるつもりでいる。そこじゃないですかね。どんな業界でも、業態でもいいんですけど、何かの1番を取ろうと、1番になってやろうという気構えがないとダメだと思います。そうするためにはどうすればいいのかっていうところを自分なりにトライアル&エラーして見つけていくしかないですね」

□高木三四郎(たかぎ・さんしろう)1970年1月13日、大阪・豊中市生まれ。95年2月16日、PWCの渋谷オンエアー・イースト大会でデビュー。97年5月14日、東京・北沢タウンホールにてDDTを旗揚げ。経営とプレイヤーの両面からDDTを支えている社長レスラー。一時期、WRESTLE-1のCEO(のちに相談役)を兼務し、多忙な日々を送っていた。海外戦略にも力を入れており、2019年4月4日にはアメリカ興行を成功させている。175センチ、105キロ。

次のページへ (3/3) 中小企業のバイブルをアピール
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください