アコギの名手・58歳押尾コータロー、原点は「巨大チューバ」と「7年間のベース生活」 明かした遠回りの真相

アコースティックギタリストの押尾コータローが、デビュー25周年に向けて今月21日に東京国際フォーラムで「25th Anniversary Live Prologue “MY BEST”」東京公演を開催する。2002年に『STARTING POINT』でメジャーデビュー。アコースティックギター1本で鮮烈な音を奏で続け、オープン・チューニングやスラップ奏法、タッピング奏法を駆使した演奏スタイルで人気を博してきた。ENCOUNTはこの機に押尾をインタビュー。音楽活動の原点や師匠の存在、40代で訪れた心境の変化を聞いた

自身の歩みを語った押尾コータロー【写真:GEKKO】
自身の歩みを語った押尾コータロー【写真:GEKKO】

デビュー25周年に向け、21日に記念公演

 アコースティックギタリストの押尾コータローが、デビュー25周年に向けて今月21日に東京国際フォーラムで「25th Anniversary Live Prologue “MY BEST”」東京公演を開催する。2002年に『STARTING POINT』でメジャーデビュー。アコースティックギター1本で鮮烈な音を奏で続け、オープン・チューニングやスラップ奏法、タッピング奏法を駆使した演奏スタイルで人気を博してきた。ENCOUNTはこの機に押尾をインタビュー。音楽活動の原点や師匠の存在、40代で訪れた心境の変化を聞いた(取材・文=コティマム)。

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 現場ですぐ目に入ったのは、押尾の右手にほどこされた紫、シルバーなどの色が入ったジェルネイルだった。爪を保護し、強化するために始めたという。

――ネイルが美しいです。

「生爪だと、スチール弦なので1回のコンサートで爪が削れて弾けなくなってしまいます。ジェルネイルだと硬いし、厚みが違うんですよ。削れたとしても補修ができるので安心感があります。今はプロの方にやってもらっていますが、最初の10年間は自分でスカルプチュアでの補修をやっていました」

――デザインも毎回変えているのですか。

「今月は宇宙っぽいイメージですが、夏やクリスマス、お正月などはそれに合わせた感じのものにします。ライブの時はネイリストと『この色合いで考えてみましょう』と相談して、衣装と合わせているんです」

――今回のライブ『MY BEST』は、2027年に迎える25周年に向けたものです。コンセプトを教えてください。

「デビューから24年間、ギター1本のインストゥルメンタルという、歌のない音楽をやってきました。その中で、僕の音楽を好きになって、ずっと応援してくれるファンの皆さんがいて、その声に勇気をもらって新しい曲を作る……そんな繰り返しの毎日でした。『MY BEST』は25周年に向けて、何よりも『感謝』を伝えたい。選曲は僕だけでなく、長年現場をともにしてきたスタッフの意見も取り入れました。僕自身の推し曲と、皆さんが聴きたい曲、双方が納得できる“ベストな選曲”になったと思います」

――音楽人生の原点もお聞きします。最初はブラスバンド部だったそうですね。

「中学の時、新入生歓迎会で聴いた『ロッキーのテーマ』のトランペットがめちゃくちゃかっこよくて、『絶対にトランペットをやるぞ』と意気込んで入部しました。ところが、顧問の先生に『君は体が大きいからこれだ』と渡されたのが、巨大なチューバ(笑)。目立つメロディーとは無縁の低音楽器。でも、その3年間があったからこそ、今でも低音を支えるリズムやグルーヴを大事にできているのかもしれません」

――ギターはいつから。

「高校でもブラスバンド部に入るつもりでしたが、部員が1人しかいなくて活動していませんでした。諦めて帰ろうとしたら隣がフォークソング部で、先輩が声をかけてくれたんです。そこでギターとの縁がつながりました。ブラスバンド部が活動していたら、チューバを吹いていたと思います(笑)」

師匠・中川イサトに対して「恩知らずだった」と話す押尾コータロー【写真:GEKKO】
師匠・中川イサトに対して「恩知らずだった」と話す押尾コータロー【写真:GEKKO】

師匠・中川イサトを尊敬も…バンドでベース担当の過去

――その後、フォークグループ・五つの赤い風船のギタリストでフィンガーピッカーの草分け的な存在でもある中川イサトさんのギター教室に入ります。ここが師匠との出会いです。

「僕は中川イサトの大ファンで、“中川先生”というか、“アイドルの中川イサト”に会いたいという気持ちで教室に入りました。雑誌や教本の白黒ページの中にいた人が、目の前で、『カラーの生身の、本物の中川イサトが動いている!』と興奮しました。他の生徒が『中川先生』と思っている中で、僕だけは『イサトさんに会いに来た! イサトさんみたいになりたい』と思っていました。それぐらい好きだったんです」

――目の前に推しがいて、直接教えてもらえるのは興奮ですね。

「イサトさんが『インディアンカレーを食べる』と言ったら、僕もインディアンカレーを食べる。とにかくマネしました。ひげも生やしたし、弾き方も、首の角度も。完全にマネしたかった。だから、僕は変な生徒でしたよ(笑)。他のみんなは先生に言われた曲を練習するけど、僕は早々に練習を仕上げて、イサトさんが他の生徒を教えている姿をずっと見ていたから」

――ギター教室後は、バンドも組まれています。インストゥルメンタルのイメージだったので意外です。

「『中川イサトが好き』と言いながら、ロックバンドを組むんですよ(笑)。ギター1本でやっていく自信とイサトさんみたいにソロでやっていく自信がなくて、J-ROCKみたいな音楽を始めました。本当はギターの予定でしたが、ベーシストが見つからなくて7年ベースをやりました。アコギ仲間から『もう、ギター弾かないんだ』ってガッカリされたこともあります。そこからアコギとボーカルの少人数スタイルに変えて、少しずつ、今のような1人でやるスタイルになりました」

――最終的にはやりたい形に。

「そうですね。ロックバンドで遠回りして、1人になった時にいろんなバンドを掛け持ちして、そこからソロギターをやり始めました。オリジナル曲もないし、これでやっていく自信もまだなかったですが、『今までイサトさんに教わったテクニックを使える』と思い出して」

――バンド時代はイサト師匠とは会っていたのですか。

「バンド活動中は全く会いに行けなかったです。本当に恩知らずですが、全然違う活動をしていたので会いづらかった。ソロのギタリストとして、インディーズ盤1枚目のアルバムを作った時に、やっとイサトさんのライブに会いに行って、アルバムをお渡ししました。すごく喜んでくれましたね」

――これまでの歩みの中で学んだこと、得たことはありますか。

「若い時は『こういう仕事はしたくない』と思っていた時期もありました。でも、ある時『全部自分のスキルにつながる』と思うようになって。そうすると全部が楽しくなった。嫌なものでも、評価されなくても、『ちゃんとやります』と言えるようになった。それから、今は一期一会を大事にしています。『来年やりましょう』と言っても、来年がないかもしれない。『永遠にできるわけじゃないんだ』と、年を重ねて思うようになりました。だからライブも、『今日しか来られない人がいるかもしれない』と思ったら、絶対にいい加減なことはできない。一つひとつのライブを大切にしていきたいです」

――その境地にはいつ頃たどり着いたのでしょうか。

「40歳の時です。手や腰などの痛みに見舞われた時に『いつまでできるのかな』と。それまでは『いくらでもできます』と思っていたけど、体力には限界がある。じゃあ、『どこで体力を温存すればいいかな』と思うようになりました。今は、フルパワーで全曲やればいいということではなく、ライブの中での緩急も含めて、長く続けていくためにバランスを意識しています」

――最後に、ギタリストとして大切にしていることは。

「僕は人を見ながら弾くんです。一番前でも、2階席でも3階席でもしっかり見る。そうすると3階席の人も『あ、見てくれた!』と喜んでくれる。ある人は、『ギタリストは下を見て弾くのがかっこいい。客席は見ない』と言います。でも、3階席の人を見てもいいじゃないですか。ギターインストゥルメンタルのライブに初めて来てくれた方が、『来て良かった』と思えるものは何なのか。それをいつも考えています。『分からない人は聴かなくていい』じゃなく、ギターのことを知らない人にも、『押尾コータロー良かったね』と思ってもらえるように、これからもずっとやり続けていきます」

□押尾コータロー(おしお・こーたろー)1968年2月1日、大阪府生まれ。2002年に『STARTING POINT』でアコースティックギタリストとしてメジャーデビュー。同年10月に全米メジャーデビューを果たす。スイスの「モントールジャズフェスティバル」に02年から3年連続出演。押尾コータローOfficial YouTube Channelでは奏法解説などを行う。MBSラジオ『押尾コータローの押しても弾いても』(金曜深夜0時)に出演中。

ポルシェ、カマロ、ゲレンデ…人気女優の人生に寄り添った愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

<「押尾コータロー 25th Anniversary Live Prologue “MY BEST”」東京公演>
日時:6月21日 開場午後4時15分、開演午前5時
会場:東京国際フォーラム・ホールC
料金:8500円(全席指定、税込み)
問い合わせ先:キョードー東京 0570-550-799(平日午前11時~、土日祝午前10時~午後6時)
https://tickets.kyodotokyo.com/oshio25th

押尾コータロー公式ホームページ
https://www.kotaro-oshio.com/schedule/news

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