バズって仕事量10倍→挫折を越えてM-1決勝へ 「優等生ではなかった」めぞんが抱く“使命感”とは

『M-1グランプリ 2025』ファイナリストのお笑いコンビ・めぞんが今月24日、東京・新宿のルミネtheよしもとで単独ライブを開催する。458席のチケットは完売しているが、配信チケットを求めるファンも続出している人気ぶりだ。前年2回戦敗退から決勝に勝ち進んだ2人は、一体どんなコンビなのか。結成からバイトに明け暮れた日々、YouTubeで知名度を上げた転機、後輩たちへの思いなども含め、彼らの現在、過去、未来を聞いた。

インタビューに応じためぞんの吉野おいなり君(左)と原一刻【写真:増田美咲】
インタビューに応じためぞんの吉野おいなり君(左)と原一刻【写真:増田美咲】

バイト漬け生活はYouTube成功で一変

『M-1グランプリ 2025』ファイナリストのお笑いコンビ・めぞんが今月24日、東京・新宿のルミネtheよしもとで単独ライブを開催する。458席のチケットは完売しているが、配信チケットを求めるファンも続出している人気ぶりだ。前年2回戦敗退から決勝に勝ち進んだ2人は、一体どんなコンビなのか。結成からバイトに明け暮れた日々、YouTubeで知名度を上げた転機、後輩たちへの思いなども含め、彼らの現在、過去、未来を聞いた。(取材・文=薦田真実)

――まずは、コンビ結成の経緯を教えてください。

吉野「NSCの時にお互い相方がいない状態でネタ見せしたら、2人とも地獄のようにスベって、『誰でもいいから今すぐ2人になりたい』ってことで組みました」

――コンビ名はどのようにして決めたのですか。

吉野「最初、原から『ドリルマスター』って候補が送られてきました。『すぐに別の案を考えなきゃいけない』と思った時に、僕の家の本棚に(漫画の)『めぞん一刻』があったから、『めぞん』になりました。追い詰められて、そこにあった本の名前をつけた江戸川コナンと全く同じです」

――そこで、原さんの芸名が「一刻」になったのですね。

原「NSCを卒業して芸名を決めるタイミングで、『どっちか負けた方が罰ゲームで“一刻”名乗ろうぜ』みたいなノリがあって、ダーツ勝負になりました。吉野はダーツ得意で、僕はダーツ全然やったことないのに引き受けちゃって。当然負けて、一刻を名乗ることになりました。原一刻はちょっと恥ずかしかったんですけど、今は響き良くて気に入ってます」

2020年12月、吉野がルームメイトであるピュートの竹内智也、軟水のつるまると共に『板橋ハウス』としてTikTokへの動画投稿を始め、注目を集めた。YouTubeへも動画を投稿するようになり、現在では登録者が77万人超の人気チャンネルだ。

吉野「それまでは2人とも、月に2、3回吉本のライブ出て、それ以外はずっとバイトしてるみたいな感じで地道にやってました。ルームシェアを始めてからも、最初は動画を回さずに、朝5時とかまで意味もなく家の中で遊んでいたんですけど、『もったいないし、動画を回そう』ということになりました」

――原さんは、板橋ハウスの動画編集を担当されていますね。

原「吉野がネタを全部書いてくれているので、板橋ハウスの撮影もあって『負担大きいかな』というのもあって編集を手伝うようになりました。(コロナ禍の)特別定額給付金でコンビのYouTubeを始めようとパソコンを買っていたので『(動画編集は)独学で勉強して』という流れですね」

――板橋ハウスがバズって、環境は変わりましたか。

吉野「(吉本の)劇場からたくさんライブ入れてもらって、外ライブ(主催が吉本ではないお笑いライブ)とかも呼んでもらうようになりました。多分、月20回くらいに増えた感じですね。ただ、(コロナ禍を経て)久しぶりに劇場に立った時、声が小さすぎて社員さんに『何言ってるか一文字も聞こえない』って言われました。家の中の声量でしゃべりすぎました(笑)」

初のM-1決勝進出は「ずっと驚きでした」【写真:増田美咲】
初のM-1決勝進出は「ずっと驚きでした」【写真:増田美咲】

ネタ磨きで「50人くらいに意見を聞き」

一方で、24年の『M-1グランプリ』では2回戦敗退。同年10月の『マイナビ Laughter Night第10回チャンピオンライブ』で初の賞レース決勝進出を果たし、マイナビ賞を受賞。翌25年には『ツギクル芸人グランプリ』と『M-1グランプリ』で決勝に進出した。

――劇場で出番が増えてからの約4年間で、どのような変化があったのでしょうか。

吉野「2023年は自分の中で漫才が面白くなっていってる感覚はありましたが、賞レースの結果伴わないみたいな。2024年は着々と力をつけてきたはずが、M-1で2回戦落ち。前年の3回戦まで行ったネタも結構評判が良くて、近しい芸人から『今年もっといけるんじゃない?』と言われてたのにです。自分たちの感覚と現実が違ってかなり厳しかったですね」

――1年後には決勝進出。理由は何だと思いますか。

吉野「僕は幼い頃からガンダムのプラモデルとかを作ってたんですけど、一つひとつのパーツを集めて組み立てていったら、1年目から組み立ててきたピースがそろって、『ガンダムができた』っていう感じでしたね」

原「『2回戦は超えたい、準々決勝に行きたい』と思ってたので、決勝行けるとは正直思ってなかったですね。自分たちの体感で手応え良くても、『これだけウケたら通れる』とかの指標が全くない中だったので、ずっと驚きでした」

――初めてのM-1決勝にはどのようにして挑みましたか。

吉野「準決勝から決勝の間もずっと1本をブラッシュアップしてかなり微調整し続けていました。『2025年はかなりM-1頑張ろう』と思ってたんで、1本のネタで50人くらいの芸人に意見を聞きました。僕が『逃げろ!』って言いながら後ろに跳ぶっていうところがあるんですけど、最初は『今、俺の目の前で何が起きてるんだ!』と言って後ろに跳んでたんです。『もっと、いいセリフないかな』とずっと考えてて、原に『逃げろ!って言おうと思うんだけど、どう思う?』って聞いたら、『えっ、逃げろ?』って冷笑されたんですよ」

原「そんなにはしてねーよ」

吉野「『あれ? これ良くないのかな』と思ったけど、一応ライブでやってみたらめっちゃウケたんです。他の芸人にも聞いて、『このウケてる感じ全然いいと思うよ』とか『面白い』って言ってもらったんで、最終的に『逃げろ』が一世を風靡(ふうび)いたしました」

原「やめろ(苦笑)」

――決勝進出を受け、『板橋ハウス』メンバーを含めて同期芸人の反応はいかがでしたか。

吉野「同期は意外と喜んでくれつつ、みんなの『絶対に負けない』みたいな視線が今かなり怖いです。全員目が燃えてるんで、いつでも追い抜かれるみたいな雰囲気があります。頑張らなきゃなと」

原「僕らNSCの時から優等生ではなくて、選抜クラスに入ってたわけでもなく、劇場のピラミッドシステムでも下の方だったりして。急にM-1の決勝に出られたので、そこがみんな燃えてるところなんじゃないのかなって思いますね」

 そんな2人は、今月24日にルミネtheよしもとでの単独ライブ『吉野原ペアvs地獄の三人衆』を開催する。コンビにとって最大キャパだが、劇場チケットはすぐに完売した。

原「ルミネでやらせてもらえるっていうのは、ファイナリストになった特権だって感じがしますね」

吉野「東京吉本の芸人としてはルミネでやるっていうのが目標なんで、うれしかったです。それなのに地獄の三人衆が来たんですよ……。僕の元々お笑いの師匠である方と、僕の闇落ちした親友とお笑いロボの3人が来たんで、『戦うしかない』っていう感じです」

原「僕もルミネでやるのが夢だったんですよ。家族旅行で東京に来た時、ルミネでお笑いを見たので、思い出の場所なんです。でも、タイトルが『吉野原ペアvs地獄の三人衆』なんで、家族は分かってない可能性があります(笑)」

――どんなライブになりそうですか。

吉野「我々は珠玉のネタを3本用意してます。原も今そのために特訓していて、その特訓の映像がネタとネタの間で見れると思います」

原「特訓がハードだったので、ぜひ見ていただき、『頑張ったんだな』って思ってほしいですね」

吉野いわく、今回の単独ライブは、めぞんの漫才と原と“地獄の三人衆”との漫才とが交互に行われる「三番勝負形式」だという。

吉野「実質、原はもう6本出ずっぱりになってしまうので。原への負担がでかいです」

原「三人衆お前だろ! お前がめっちゃ着替えが多いんだよ。これ。あんまり漫才の単独で聞いたことないって、その回数の着替え」

吉野「(笑)」

「続けてきて良かったです」と10年を振り返った【写真:増田美咲】
「続けてきて良かったです」と10年を振り返った【写真:増田美咲】

後輩芸人をゲストにライブ主催

今回の単独ライブのように、めぞんの主催ライブは、独特の世界観やアニメや漫画をモチーフにしたテーマが設定されていることが多い。だが、昨今は芸歴の浅い後輩芸人をゲストに迎えたライブの主催が目立つ。どのような意図があるのだろうか。

吉野「今の吉本は、若手がめっちゃ面白いのにライブに出れてない子があまりにも多い。なので、『ちょっとでも(舞台に立つ機会が)増えればいいかな』と思って、なるべくいろんな子を見て、自分たちの主催に呼べるようにって考えてますね。若手の出番が少ないっていうのは10年後とかに吉本興業のお笑いのレベルが下がるんじゃないかなと思います。なので、お笑いの発展のために『どうにか阻止しなければいけないな』と。もはや、我々に意志はありません。お笑いの発展のための礎となるべきですので」

原「思想怖いな。誰の指示でやってんだよ」

――その思いは、ご自身が1、2年目のころになかなか評価されなかったことが原点ですか。

吉野「いえ、それは関係ないです。僕らが1、2年目の時は本当につまらなかったです(笑)」

――4月に芸歴10年となり、6月にはコンビ結成10年。この10年を振り返っていかがでしょう。

吉野「いや~、続けてきて良かったです」

原「僕は中学・高校の6年間で部活を5個やったりとか、何も長続きしなかったので、『それぐらい良いものに出会えたのかな』と思ってますね」

まだ、テレビ出演の機会は多くないが、24日のライブは劇場チケット完売で、配信チケットは売れ続けている。M-1グランプリには今年も挑戦予定。お笑い好きの間では、2人への期待が日に日に高まっている。

□めぞん 2016年6月9日、東京NSC22期在学中にコンビを結成。『マイナビ Laughter Night第10回チャンピオンライブ』(2024年)でマイナビ賞を受賞、『ツギクル芸人グランプリ』(2025年)、『M-1グランプリ』(2025年)では決勝に進出した。YouTubeチャンネル『めぞん情報局』、音声SNSアプリ・stand.fmでの自主ラジオ『めぞんの「ねこ日記」』を配信中。5月24日開催の単独ライブ『吉野原ペアvs地獄の三人衆』オンライン配信チケットがFANY Onlineにて発売中。

□吉野おいなり君(よしの・おいなりくん) 1994年2月3日、福岡・北九州市生まれ。171センチ、61キロ。血液型A。

□原一刻(はら・いっこく) 1994年7月22日、宮崎市出身。178センチ、63キロ。血液型O。

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