水を飲んだだけでクレーム、「病院は守ってくれない」…現役看護師が明かす“捨て駒扱い”厳しい現実

職場におけるクレーム対応は、現代社会の課題の一つになっている。こうした中で、現役看護師のSNS投稿が大きな反響を呼んだ。「『看護師が水を飲んでいた』というクレームが」……。命を預かる医療現場で走り回り、休憩も十分に取れないことがある仕事だが、最低限の水分補給まで問題視されるような状況に、疑問や憤りの声が相次いだ。問題提起をした病院勤務の看護師の女性に話を聞いた。

看護師が水を飲んだだけでなぜ……(写真はイメージ)【写真:写真AC】
看護師が水を飲んだだけでなぜ……(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「ペットボトルを飲みながら仕事するなんてどういうことだ」のクレームも

 職場におけるクレーム対応は、現代社会の課題の一つになっている。こうした中で、現役看護師のSNS投稿が大きな反響を呼んだ。「『看護師が水を飲んでいた』というクレームが」……。命を預かる医療現場で走り回り、休憩も十分に取れないことがある仕事だが、最低限の水分補給まで問題視されるような状況に、疑問や憤りの声が相次いだ。問題提起をした病院勤務の看護師の女性に話を聞いた。

「『ナースステーションで看護師が水飲んでた』ってクレーム入ったらしい…いや、看護師も人間なんよ。水くらい飲ませて」

 投稿は、休憩もままならない状況で働いているにもかかわらず、水を飲むことさえ問題視されるような扱いはしんどいという趣旨の訴えだった。

 これに対して、「看護師さんはロボットじゃないよ」「水飲んでクレームって…水分補給は生きていくために最低限のことなのに」「クレームを入れた人は、看護師が水を飲んだことで何か影響あるの?」など、クレームへの憤りの声が寄せられた。

 さらに、医療従事者とみられるユーザーから「私のところもありました。患者から見える場所でお茶飲んでるのあり得ないってクレームでした」「ウチも水飲んだりトイレ行ったりで患者待たせるとクレーム入りますよ」「うちは見つかったら絶対アウトです!」といった反応があり、他の病院でも同様の事例が起きている可能性をうかがわせた。

 投稿者自身も、過去に似た経験をしてきた。新人時代、大学病院のICU(集中治療室)に勤務していた時のことだ。患者から見えにくいよう、囲いがある機材洗浄用の流し台付近で水分を取った。

「その時、ユニットには私一人だったので休憩室に出ることはできず、PCPS(経皮的心肺補助)の装置なども動いていたので、かなり緊張していた記憶があります。水分が欲しくなり、患者さんに背中を向けて見せないように工夫しながら飲みましたが、意識がはっきりしていた患者さんがそれを見ていて、クレームになりました」

 先輩からは「流しのところに水分を持ってきて、適宜飲んでいい」と言われていた。それでも患者側から指摘が入ったことで、「気を付けるように」と注意を受けた。

 転職先の病院でも、同じような出来事があった。ICUと休憩室がドア1枚で仕切られていたが、常にドアは開いており、休憩中の看護師の様子が外から見える環境だった。そこで水分を取っていたところ、患者の家族が「ペットボトルを飲みながら仕事するなんてどういうことだ」と怒り出したという。

 その時は師長が対応して収めたが、しばらくはユニット内への水分の持ち込みが禁止に。別室に休憩場所が作られたものの、ICUでは緊急入院などがあると別室まで行けないことが多く、投稿者は「ご飯も食べられないことがざらだったので、どうにかしてほしいと師長に言った記憶があります」と振り返った。

「病院は守ってくれない」 看護師が語る現場の実情

 水分補給へのクレームだけではない。投稿者は、暴言や暴力にもさらされてきた。

 ICU勤務時には、せん妄状態になった患者から「人殺し」と言われたことがある。さらに、拳で殴られたり、ビンタをされたりしたこともあったという。

 ただ、投稿者がより重く受け止めているのは、その後の病院や上司の対応だった。

「そういうクレームや暴力沙汰があっても、病院は守ってはくれませんでした。それどころか、師長や看護部長から『殴られるような看護をしてたんでしょ』『あんたはこの病院の目の上のたんこぶ、面汚しなんだよ』と言われたこともありました」

 こうした理不尽の積み重ねが、看護師の意欲を削っていく。投稿者は、看護師が水分を取ることへのクレームについて、職種の差も背景にあると感じている。

「医者がペットボトルを飲んでいても、まず文句を言われることはないですよね。医者がナースステーションにペットボトルを置きっぱなしにすることも日常茶飯事ですが、それを見て患者の家族が『看護師が水分を置いている』と判断してクレームをつけることもあります」

 もちろん、医療現場で患者への配慮は必要だ。だが、だからといって看護師が水を飲むたびに、患者や家族の視線を気にしなければならないのか。

 投稿者は、友人やSNSでつながっている看護師たちにも、同じような経験があるかを聞いた。すると、少なくない人が、一度は似たようなことを言われた経験があったという。

「クレームがあっても病院は看護師を守ってくれない。看護師は捨て駒だと思っている病院側の考えが見えるので、その現実に失望して、いつ辞めようかと考えている看護師は多いと思います」

 病院にクレームが入るたびに、現場スタッフ全員に通達され、師長らに「どうすればクレームが上がらないか考えろ」と言われたこともあった。投稿者は、そうした姿を見ると「出世して上り詰めようという気はまったくなくなります」と語る。

 命の現場を支える看護師への、心ない理不尽クレーム。立場の弱い看護師にどこまで我慢を求め続けるのか、医療現場のよりよい制度づくりが求められている。

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