格闘家の薬物依存を描いた問題作『スマッシング・マシーン』はRIZINファンに刺さるのか 榊原CEO「今はぴったりのタイミング」

15日に映画『スマッシング・マシーン』が全国公開されるのを記念して、13日にRIZINの公式YouTubeチャンネルで特別番組「レジェンドたちが禁断のPRIDE裏話! | スマッシング・マシーン公開記念 PRIDE同窓会SP!」が配信された。

ズラリと揃った「PRIDE同窓会SP」でのひとコマ
ズラリと揃った「PRIDE同窓会SP」でのひとコマ

薬物使用のファイターは「息づかいが獣と練習しているみたい」

 15日に映画『スマッシング・マシーン』が全国公開されるのを記念して、13日にRIZINの公式YouTubeチャンネルで特別番組「レジェンドたちが禁断のPRIDE裏話! | スマッシング・マシーン公開記念 PRIDE同窓会SP!」が配信された。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 同映画は、“霊長類ヒト科最強”と称されたマーク・ケアーの人生を描いた実録ドラマ。ケアーが無敗の戦績を誇る中、プレッシャーや鎮静剤(薬物)への依存、恋人との関係悪化に苦しむ様子が緻密に描かれている作品で、第82回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した。

 また、この映画ではケアーが闘ったPRIDEの舞台裏も明らかにされており、今回のYouTube特番にはPRIDEのリングを熱狂させた伝説的ファイターたち、小川直也、桜庭和志、高阪剛、川尻達也に加え、RIZINの榊原信行CEO、笹原圭一広報部長、PRIDEや現在のRIZINで映像制作を手掛ける佐藤大輔氏ら当時の関係者が集結。同映画の魅力やPRIDE時代の秘話を振り返る内容となった。

 番組内では、注目度の高い発言が次々と飛び出した。例えば、高阪は映画のテーマのひとつである鎮痛剤依存について、「(外国人選手は)ほぼ100%(使用していた)」と話すと、「簡単に手に入っちゃう、アメリカの事情もあるかもしれない。日本みたいに保険(制度)が手厚くない。今は分からないですけど、自分が住んでいた1998年当初って、保険に入れない人がやたらと多くて、ドラッグストアで手に入れるしかなくて。そうなると処方箋も緩いというか……」と明かした。

 その上で「力もそうだけど、息づかいが獣と練習しているみたい」と話し、当時、練習中に耳にした相手の息づかいを紹介し、「喉が狭くなるんですかね」と振り返った。

 さらに、2004年から始まった「PRIDE武士道」から参戦した川尻は、自身の激戦として知られる五味隆典戦(2005年9月、有明コロシアム)が印象深いが、「僕自身もこんな格闘技をやれると思っていなかったし、25、26歳までやって、普通に就職しようと思っていたなかで、初めて中量級に日が当たって、もしかして格闘技で生きていけるかもしれないってとこで、このチャンスを逃したら二度とチャンスはないと思っていたから、必死にライト級を成立させるために、分からないなりに盛り上げてやってきた」と心境を告白。

 PRIDE時代にホイス・グレイシーとの伝説的な90分間(2000年5月、東京ドーム)を闘った桜庭は、現在、RIZINの参戦中の長男・大世が「(その頃は)2歳か3歳くらい」だったと語ると、当時を振り返りつつ、最近、大世がRIZINで試合を行った際にセコンドにつかなかった件にも触れ、「俺はセコンドにはつかないよって、最初から言ってました」とコメントした。

 さらに桜庭は、大世との練習に関するエピソードにも触れ、「こっちがしんどい時に限って来るんだよね。疲れているところに来るから、『できない』って言っちゃうこともある」と語りつつ、「あくまで練習仲間として接しているので、親子の関係はそこでは関係ない」と言い切った。

小川直也(左)と桜庭和志の珍しい遭遇(RIZIN公式YouTubeチャンネルより)
小川直也(左)と桜庭和志の珍しい遭遇(RIZIN公式YouTubeチャンネルより)

「PRIDEを振り返れる気分になってる」

 同特番内で触れられたのは桜庭VSホイス、五味VS川尻以外にも、小川VSエメリヤーエンコ・ヒョードル(2004年8月、さいたまスーパーアリーナ)、VSステファン・レコ(2004年4月、さいたまスーパーアリーナ)、高阪VSマーク・ハント(2006年5月、京セラドーム大阪)など、懐かしくも壮絶すぎる激闘の数々だった。

 ちなみに、今回のMCを務めた鬼越トマホークの良ちゃんは自身のXで、「人生で一番緊張しました! MCとして全然機能してなかったけどPRIDEのレジェンドとの仕事ができて心の底から光栄です! 小川直也さんと桜庭和志さんが並んでる姿を見て台本が全部吹っ飛びました」と投稿した。

 たしかに小川と桜庭があのPRIDE時代について並んで話す姿は、これまで見たことのない驚きの構図であり、大げさに言えば、前代未聞ともいえる場面だった。

 とにかく、今回の特番では興味深い場面が多数散見されたが、なかでも榊原CEOが口にした以下の言葉が印象に残った。

「10万円あるうちにプロモーターが5万円を抜いて、(残った5万円を)選手で分けると揉めるじゃないですか。だから選手にまず平等に取ってもらって、それが実現した後、上がった利益は全部次の興行に突っ込まなくちゃいけない。そこで計算してそこでものを作るとつまらないものになる。だからこれ(実現不可能なマッチメイク)をやるためにどれくらいかかるかって発想でここまで来ちゃったので、(常に)お金はない」

 そうやってこれまでのビッグイベントを自転車操業的に続けてきた矜持を口にしていたが、一方、その榊原CEOは番組内で紹介されたケアーからのメッセージ内で「平凡なショーは絶対にやらない人」と評されていた。これも非常に心に刺さる言葉だった。

 配信開始から丸一日以上が経過した現在、再生回数は5万5千回を突破。歴史を振り返ることはすなわち未来を想像するきっかけにもなる。

 実際、それを物語るかのような印象的なやりとりが、番組内での佐藤氏と榊原CEOによる言動だった。

 佐藤氏は「PRIDEを振り返れる気分になってるな。PRIDEが終わってから10年くらい、PRIDEの『プ』の字も出したくなかったけど」と話すと、これに続けて榊原CEOは「ちょっと懐かしいよね。ファンの気持ちも少し余裕ができて、当時を振り返れる心境になってきたんじゃないかな。今はそのタイミングにぴったりだと思う」と応じたのだ。まさに温故知新。古きを温(たず)ねて新しきを知る姿勢こそが、明るい明日を作り出すと信じてやまない。

 なお同特番のコメント欄には250件以上の声が寄せられ、「これはオジ歓喜すぎるコンテンツ」「桜庭と小川が並んで話してるなんてすごい」「PRIDE世代として、このメンツは胸熱すぎ」といった視聴者の興奮が伝わるようなメッセージで盛り上がっている。

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