ユースケ・サンタマリアが語る転機と独自の指針 『踊る大捜査線』は「ビギナーズラック」

シリアスからコミカルまで変幻自在に役を生き、ダイナミックな俳優人生を歩んできたユースケ・サンタマリア(55)。5月15日公開の映画『君のクイズ』(配給:東宝)でも、得体の知れない雑誌記者・片桐俊作を演じ「何かやりそうだ」という緊張感を与えてくれる。そんなユースケは、陽気なキャラクターから不気味な怪演まで、世間のパブリックイメージとどう対峙してきたのか。初期の大ヒット作にまつわる狂騒、そして正解のない世界でユースケが信じ続ける「独自の指針」について聞いた。

インタビューに応じたユースケ・サンタマリア【写真:冨田味我】
インタビューに応じたユースケ・サンタマリア【写真:冨田味我】

世間とのギャップに悩んだ過去「変な役をやりたいとずっと思っていた」

 シリアスからコミカルまで変幻自在に役を生き、ダイナミックな俳優人生を歩んできたユースケ・サンタマリア(55)。5月15日公開の映画『君のクイズ』(配給:東宝)でも、得体の知れない雑誌記者・片桐俊作を演じ「何かやりそうだ」という緊張感を与えてくれる。そんなユースケは、陽気なキャラクターから不気味な怪演まで、世間のパブリックイメージとどう対峙してきたのか。初期の大ヒット作にまつわる狂騒、そして正解のない世界でユースケが信じ続ける「独自の指針」について聞いた。(取材・文=磯部正和)

 本作でメガホンを取った吉野耕平監督とは、『沈黙の艦隊』(2023年)に続くタッグとなる。完成した映像からは、オファーを受けた瞬間にユースケが自身の役割を的確に悟り、見事に体現したことがうかがえる。今回は、企画自体の設定にも強く惹かれたという。

「吉野監督とは前に1本やっていて、今回は役柄こそ違えど根っこの部分がほぼ一緒のようなキャラだったんです。だからすぐに『これを求めているんだな』と分かりました。吉野監督は画にとてもこだわる方で、そこに揺るぎがない。だからこそセリフ回しなどは、とても自由にやらせてもらいました」

 キャリアの変遷とともに、求められる役柄は大きく変化してきた。かつては明るさを期待されていた男が、近年では不穏な空気を漂わせるキーパーソンとして重宝されている。しかし、こうした見え方のシフトは、決して緻密な計算の産物ではないようだ。

「自分ではそんなの操作できないし、セルフプロデュースしようとしてもうまくいきません。最初はバラエティーをいっぱいやっていて、『いつもの感じでパーッとお願いします』と言われることが多かった。当時は『芝居でも陽気にふるまわなければいけないの?』という反発や疑問があって、違う風にやりたくて変な役をやりたいとずっと思っていました」

 求められるのは陽気で明るい役が大半。しかし、自分の意図とは別に新しい顔を求められ始める。

「世間のイメージと僕の考えにはいつも時間差があって。変な役をやりたいと願い続けていたら、時がたって突然そういう役が来るようになったんです。今はもう何がきてもやれるぜっていう思いはあります。『こいつ何者だ!』と思わせておいて、結局、何もやらなかったなというのも面白いじゃないですか(笑)」

自身のターニングポイントについて話した【写真:冨田味我】
自身のターニングポイントについて話した【写真:冨田味我】

第一線で活躍し続けるワケ「ゴールがないことが飽きない要因」

 ユースケに、ターニングポイントについて尋ねると意外な答えが返ってきた。

「どの作品も大事です。本当に印象に残っている作品は多い。でもやっぱり人気があった作品の反響は大きいですよね。でもその話をいつまでもするのは、ずっとそれにしがみついているみたいで嫌なんです。街で声をかけられるような大ヒット作は、狙ってできるものじゃありません。初期の頃の『踊る大捜査線』なんて、まさに僕にとってビギナーズラックみたいなもので(笑)。あの作品で多くの人に知ってもらえたのは事実ですけど、あれぐらい充実感のあるものを追いかけてしまうときりがない。自分自身も、当時は何もできないただの若造で。なのに、意識していたわけではないのですが、あれぐらいのものを求めすぎてしまっていたかも。でもそんなの続くわけがない(笑)」

 絶対的なゴールが存在しない俳優業。常に手探りで役を構築していく日々の中で、暗闇を照らす光となるのは、他でもない自分自身の内なる感覚だ。正解がないからこそ生じる苦悩と喜びを、ユースケは等身大の言葉で語ってくれた。

「正解がない、ゴールがないというのは、飽きない要因でもあります。結局のところ、自分が演じていて『あ、今なんか俺いいんじゃないか』と思える自分の気分が指針です。すごく褒めてもらって20の賞賛があっても、1つ心無いことを言われるだけでかき消されたりする。そんなものなんです。だから答えがなくても、その時々である種、自分の答えが見つかればいい」

 自分の中で判断がつかない迷いが生じた時は、現場を共にするクリエイターや役者たちの反応が確かな道標となる。

「どっちか分からない時は監督に相談しますし、共演している人が『今なんか変な気分になりましたよ』とか言ってくれるとゾクゾクします(笑)。そういうところでジャッジしながら、折り合いをつけて進んでいくしかないんですよね」

 大ヒットという過去の奇跡にすがることを潔しとせず、常に目の前の作品と真摯に向き合い続ける。正解のない俳優という孤独な生業の中でユースケが信じるのは、己の肌感覚と現場で生まれる生きた反応だ。パブリックイメージに抗う反骨心から培われた確かな演技力と、軽やかなスタンスを持ち合わせるユースケ。そんな深い演技が『君のクイズ』でも遺憾なく発揮されている。

□ユースケ・サンタマリア 1971年、大分県出身。レギュラー番組の『ナゼそこ?+』(TX)でMCを務める。近年の主な出演作に、ドラマNHK大河ドラマ『光る君へ』(24/NHK)、『全領域異常解決室』(24/CX)、『スキャンダルイブ』(25/ABEMA)、『DOCTOR PRICE』(25/YTV)、映画『交渉人 真下正義』(05/監督:本広克行)、『ストロベリームーン 余命半年の恋』(25/監督:酒井麻衣)、『黒牢城』(26/監督:黒沢清)ほか。舞台『ミュージカル おとこたち』(23/演出:岩井秀人)、『OUT OF ORDER』(23/演出:マギー)などがある。吉野耕平監督作品は、映画『沈黙の艦隊』(23)に続き2作品目。

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