四千頭身・都築、深夜ラジオは「命がけ」 狂気の覚悟「ここが否定されたら終わり」

「都築 ラジオ」とGoogle検索すると「面白い」とサジェスト表示される。お笑いトリオ・四千頭身の都築拓紀は、それほどまでに“ラジオスター”としての地位を確立しつつある。しかし、パーソナリティーを務めるラジオ番組『サクラバシ919』(ミクチャ×ラジオ大阪、木曜担当)での「1人しゃべり」は、決して最初から順風満帆だったわけではなかった。かつては空回りし、もがき苦しんでいた男が、なぜ「ラジオに命を懸ける」と公言するまでに至ったのか。深夜の2時間に29年の人生を捧げる熱量と覚悟に迫った。

深夜の2時間に29年の人生を捧げている都築拓紀【写真:増田美咲】
深夜の2時間に29年の人生を捧げている都築拓紀【写真:増田美咲】

『サクラバシ919』の木曜パーソナリティー

「都築 ラジオ」とGoogle検索すると「面白い」とサジェスト表示される。お笑いトリオ・四千頭身の都築拓紀は、それほどまでに“ラジオスター”としての地位を確立しつつある。しかし、パーソナリティーを務めるラジオ番組『サクラバシ919』(ミクチャ×ラジオ大阪、木曜担当)での「1人しゃべり」は、決して最初から順風満帆だったわけではなかった。かつては空回りし、もがき苦しんでいた男が、なぜ「ラジオに命を懸ける」と公言するまでに至ったのか。深夜の2時間に29年の人生を捧げる熱量と覚悟に迫った。(取材・文=島田将斗)

 三四郎やアルコ&ピースなど、ラジオ界で確固たる地位を築く先輩たちの背中をそばで見てきた。「できんだろ」、そう思っていたが、いざマイクの前にたった1人で座ってみると自分でも気づかないうちに高い壁にぶつかっていた。

「最初の方は本当にポンコツだったんです。『できんだろ』と『できるように見せなきゃ』みたいな気持ちが入り混じって。「一人で2時間」にかかっちゃって。一生懸命真面目にやってるんですけど、生真面目すぎて『頑張って色んな話をしなきゃ』と空回りしていましたね」

 その当時の自分を、的確な比喩で振り返る。

「歩けない子どもと一緒っすね。歩こうとするけど、上半身だけ前に出て足がついてこなくて倒れちゃう。そんな感覚でした。でも、スポーツと一緒で数をこなせば、ちょっとずつ足がついてくるようになった。2時間の生放送に向き合った時、思ったより自分のフォームがなくて。数打ってやっと見つかった、みたいな感じですね」

 試行錯誤の末に見つけた都築の“フォーム”。それは「同窓会や飲み会で、久々に会った友達に話す感覚」だった。

「放送で届けるっていうよりは、旅行とか行ったら友達に『こないだ行ったんだけどさー』って話すと思うんですよ。その距離感に近づけた感じがありました。一人しゃべりとは言え、そういう感覚で球を投げることが、自分に一番合ってましたね」

「企業努力」を明かした都築拓紀【写真:増田美咲】
「企業努力」を明かした都築拓紀【写真:増田美咲】

毎週の2時間は「魂の提出」

 さまざまな場所を訪れた経験をラジオで語るのも他にない武器だ。

「ニュースや旅番組で紹介されたお店って、『いいな』と思っても実際には行かないじゃないですか。でも、僕が実際に行って体験して話せば、ある種の擬似体験になる。テレビの画面を通すより、ラジオの音声を通して入る情報の方が、現実への距離が近くて自分にも当てはまる気がするじゃないですか」

 元々はインドア派。「根本の性格を直すためにも、マインドコントロールで重い腰を上げた」という。その一歩とも言えるのが、人生初の海外一人旅となった韓国への旅行だった。言葉の壁やトラブルを乗り越え、リスナーに伝えたかったのは、等身大のメッセージだ。

「海外に行くのって、着くまでが面倒なだけなんですよ。航空券取ってホテル取って……って。でも行っちゃえば、究極お金を払えば飯は出てくるし、言葉が通じなくても人の形はしてるんだから目を見れば『飯食いたいんだな』ぐらい伝わる(笑)。僕は賢い人間じゃないし、リスナーも僕のことを馬鹿だと思ってる。でも、馬鹿な僕が一人で海外に行って帰ってこれるんだから、『私でも行けんじゃん』と思えたらいいなと。実際に、僕のイベントに『迷ってたけど新潟から来ました』っていうリスナーもいましたね」

 一人旅の面白さに目覚め、今では正月恒例の行事になった。現地で起きたことをラジオで話す際には明確なルールがある。それは「リスナーに考えさせないこと」だ。

「世間が良いと言ってる作品を見る時って、僕自身も気負うんですよ。『良いと思わなきゃ』とか『どこか見落としたのかも』って。でも、深夜ラジオの一人しゃべりなんて、そんなセンサーをバチバチに張られても困る。脳のリソースを割かずに楽しめるに越したことはないんです。だから『考えずに感じてほしい』。考えすぎている世の中の人たちに、脳の違う栄養になっていればいいなと」

 しかし、考えずに情景を思い浮かべてもらうためには、語り手側の緻密な計算が必要になる。

「できるだけ考える時間を減らすために、状況描写は割と丁寧にしてる方なのかなって。話が長いのはそういうところもあるんですよ(笑)。夜行バスの話一つとっても、ロータリーの雰囲気とか、そこに出てくる人をいっぱい話した方が、想像の中でデッサンが崩れていかない。いかにリスナーを考えさせないかっていうのは、パーソナリティー側の企業努力ですよね(笑)」

 そこには、局やスタッフへの強い「恩返し」の思いがある。

「いただいた2時間なんだから、恩を仇で返すような奴にはなりたくない。一番パンチ力のある2時間を出した方が、関わってくれてる人のためになると思うんです」

「ラジオの形をした魂に、俺という肉体がついている」【写真:増田美咲】
「ラジオの形をした魂に、俺という肉体がついている」【写真:増田美咲】

「山添さんやしんいちさんは逃げ道がある」

 リスナーには「考えずにダラダラ聞いてほしい」と笑うが、都築は壮絶な覚悟を持ってラジオブースに入っていく。同番組の水曜日を担当するリンダカラー∞のDenも「都築さんはラジオに命を懸けている」と畏敬の念を抱いているが、そんなラジオとは一体何なのか。

「生命体としての核ですね。ラジオの形をした魂に、俺という肉体がついている。人間がそのまましゃべることって、ラジオほどないと思うんですよ。側(がわ)で繕うわけにいかない。1週間生きてきた中での凝縮された2時間の魂を提出しているんです」

 漢字が読めないこともある、メールの文脈が分からないこともある。嘘偽りなく、29年間の人生の引き出しからすべてをさらけ出す。だからこそ、そこには「逃げ道」が存在しない。

「もしこの2時間が『つまらない』ってされちゃったら、芸人として、人間として終わり。自分の生きてきた29年間が全否定されちゃう。僕は自分の29年に誇りを持っているので、それを否定されるわけにはいかないんです」

 他曜日のパーソナリティーたちの名前を挙げながら、自らの立ち位置を「崖っぷち」だと表現した。

「Denとか、お見送り芸人しんいちさん、相席スタートの山添さんはいいんですよ。この2時間が否定されても、他に肯定してくれる場所や技術がある。でも俺は、ここが否定されたら終わっちゃう崖っぷちまで来ちゃったんです。デスゲームなんです。自分の足で進んだのか、追い込まれたのか分からないけど、振り向いたらもう崖でした。もう一歩足を踏み入れたら死ぬ危険区域です。このラジオとつながってる線がプツッと切られたら、俺は死にます」

 毎週、命を削るように魂を提出し続けている。「ラジオに命を懸ける」という言葉は、決して大げさな表現ではなかった。

「生きるためには懸けるしかないから。一機しかないデスゲームです。よく『必死』って言いますけど、必ず死ぬんじゃなくて、『必ず死なない』という意味の必死ですね、俺は。また1週間必ず生きて戻ってくる」

 己の人生を懸けている2時間だからこそ「都築 ラジオ 面白い」とサジェスト表示されているのだろう。都築が深夜に行っている“命懸けのデスゲーム”から、当分耳が離せそうにない。

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