いじめ被害者に「転校しかない」 教育長の“追い討ち”で過呼吸に? 市の対応に保護者怒り
埼玉・白岡市で2022年に「いじめ重大事態」に認定された事案について、いじめが認定された後の市の対応に不適切な内容があったとして、被害児童の保護者が謝罪と再調査を求めている。ネット上に公開された音声には、真摯(しんし)な対応を求める保護者の訴えに対し「私はあなたにいじめられている。いじめと感じたらいじめなんでしょ?」とあしらう教育長の発言や、「私は加害者を信じる」という校長の発言、一連の音声公開を示唆した保護者に「それはダメだよ! 教育長の人権はどうなるの?」と迫った市長の発言などが収められている。白岡市教育指導課は、公開された音声の事実関係について、「個別にコメントすることは差し控えさせていただきます」としている。

早退した被害児童の机に乗って大はしゃぎ、金銭を巡るトラブルも
埼玉・白岡市で2022年に「いじめ重大事態」に認定された事案について、いじめが認定された後の市の対応に不適切な内容があったとして、被害児童の保護者が謝罪と再調査を求めている。ネット上に公開された音声には、真摯(しんし)な対応を求める保護者の訴えに対し「私はあなたにいじめられている。いじめと感じたらいじめなんでしょ?」とあしらう教育長の発言や、「私は加害者を信じる」という校長の発言、一連の音声公開を示唆した保護者に「それはダメだよ! 教育長の人権はどうなるの?」と迫った市長の発言などが収められている。白岡市教育指導課は、公開された音声の事実関係について、「個別にコメントすることは差し控えさせていただきます」としている。
問題の事案は2021年度、白岡市内の市立小学校で発生。当時6年生だった女子児童が、同級生から「キモイ」「死ね」などの暴言や、無視や仲間外れにされるなどのいじめ被害に遭い、22年3月には金銭を巡るトラブルに発展した。
被害児童の保護者は、一連の経緯について「加害者のうちの1人の女の子とはもともと仲が良く、4年生くらいからちょっとした仲間外れや嫌がらせは続いていましたが、最初はよくある人間関係のトラブルだと思っていました。ところが、段々とエスカレートして、筆箱をけって男子トイレのゴミ箱に捨てられたり、娘がいじめで早退した際には、娘の机の上に乗って大はしゃぎするようなこともあったと。1万円をよこせと要求され、娘が渡してしまったと聞いて、これはもう黙っていられないとその日のうちに学校を訪れて被害を報告しました」と振り返る。
児童らが在籍していた小学校は、迅速な初動対応にあたった。LINE上に金銭を巡るやり取りの証拠が残っていたことから、クラス全員にアンケートを実施。第三者であるクラスメートから、いじめを裏付ける複数の証言が寄せられ、同月中に「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」とするいじめ重大事態に認定された。その後、被害児童と加害児童3人の保護者同士による話し合いの場が持たれ、加害者側の保護者が謝罪。加害者と被害児童が教室で一緒になることがないよう、それぞれが別室登校するという条件が提示され、事態は収束に向かうかと思われた。
「もうすぐ卒業式だったので、こちらもできれば穏便に済ませたいと思っていました。ところが、加害者の子たちは反省するどころか『いじめられる方にも原因がある』『1万円はこれまでおごった分を返してもらっただけ』とクラス内で吹聴し始めた。加害者側の保護者からも別室登校に対するクレームが入り、加害者だけが普通登校を再開している様子を見て、娘は泣き出してしまって……。卒業式では向こうが壇上で卒業証書を授与され、花道で写真撮影に興じる一方、娘は父兄席で泣きながら参加し、1人別室で卒業証書を受け取りました。私たちが式を台無しにしないよう、PTAから警護の人がつけられたとも聞きました」
被害児童の保護者によると、卒業後は全員が同じ地区の中学校に進学する中、被害児童は市内の別の中学校への転校を余儀なくされた。転校先の中学校ではクラスにもなじめていたものの、同じ市内ということもあり、加害者側が広めた悪口のうわさ話が拡散。結果的に転校先の学校にも通えなくなってしまい、中学2年の4月には、父親が単身赴任していた県外の中学校まで再転校せざるを得なくなったという。
その間、市の第三者委員会ではいじめの具体内容についての調査が進行していた。いじめが「疑い」ではなく「事実」と認められれば、加害者側に指導が入り、被害児童ももともと進学する予定だった中学校に戻れるはずだった。
被害児童が県外の中学校に転校した23年の6月、市の教育委員会は一連の事案についての調査報告書を公表。報告書では、いじめの事実を認めた上で、「学校は被害者が受けた被害を真摯に受け止める姿勢が必要であり、そうした被害の回復に向けどのような支援を被害者本人が求めているのかを被害者側保護者と一緒になって探り、協議をしながら対応をすることが求められている。そのために学校側は積極的に被害者本人や保護者との面談を試みることが望ましい」「学校は加害者側保護者とも十分にコミュニケーションをとりながらなすべき指導・監督を行うよう指示する必要がある」と今後の対応が明記され、会見では教育長も「真摯に対応する」と明言した。
ところがその後、被害児童の保護者と対応を協議する面会の中で、教育長は「これ以上の対応はしない」「報告書の公表で終わり」とまさかの幕引きを宣言したという。
「いじめはなくならない」「転校しか選択肢はない」と力説、被害児童はショックで過呼吸に
「娘はずっと元の学校に戻りたいと言っていて、そのためにできることはないか、加害者への指導や学年集会の開催をお願いしましたが、すべて却下されました。唯一行われた保護者会でも当初の予定が変更され加害者側の氏名は公表されず、一般参加者のふりをした加害者の親が『いじめられた側にも問題があった』と発言し、悪いうわさが撤回されることはありませんでした。進学予定だった中学の校長からも、面会の予定を直前で一方的にキャンセルされたり、『私は加害者側の言い分を信じる』などと言われ、まともに向き合ってすらもらえなかった」
24年3月、保護者の粘り強い説得により、教育長が県外の被害児童の元を訪問。保護者によると、「本人からは話を聞くだけに留めてほしい」と事前に念を押したにもかかわらず、教育長は被害児童に対し「いじめはなくならない」「転校しか選択肢はない」「加害者を排除することは不可能」などと力説、追い詰められた被害児童が号泣し、過呼吸を起こす一幕もあったという。
「そんなことがあったのに、教育長は市長に『わざわざ県外まで被害者の話を聞きに行き、真摯に対応してきました』と報告したそうです。既成事実を作るために来たのではないかとしか思えない内容でした」
保護者はその後、24年7月に行われた市民参加型の「市長と語る会」の場で、一連の教育長の不適切な対応について藤井栄一郎市長に直訴。しかし、市長からは「個別案件には答えられない」「あなたとは話したくない」と話し合いを拒否され、教育長による数々の不適切発言の録音があることを伝えると、「それはダメだよ! 教育長の人権はどうなるの?」と保護者に公開をやめるよう迫ったという。
市長や教育長の対応に不信感を抱いた保護者は、24年9月、市に対し再調査と謝罪を求めた調停申し立てを行った。しかし、市長は市の財源から約233万円を専決処分(本来は議会の議決が必要な事項を、緊急時や軽易な場合に首長が議会に代わって意思決定する手続き)で支出し弁護士を擁立。準備を理由に度々期日を先延ばし、申し立てから3か月後の翌年1月、謝罪も再調査も拒否した上で調停は不成立に終わった。
事案発生からすでに4年あまりが経過。当時小学校6年生だった被害児童は、結局進学予定だった中学校に戻れないまま、県外の学校で卒業を迎えた。PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの症状もあり、かけがえのない中学3年間の青春は永遠に失われたまま、今も希望する高校に通えず精神的に不安定な日々を送っている。
今年に入り、保護者は一連の音声記録をネット上で公開した。
「最初はプライベートな音声を公開するのは違法だと思い、非公開にしていましたが、『市長や教育長は公人であり、公益性があるなら問題ない』という意見を多くいただき、公開を決断しました。私は今世間を騒がせているような、いじめ加害者の特定や私刑は望んでいません。ただ、いじめ認定後の市の不誠実な対応はどうしても許すことができません」
ENCOUNTが今月4日、白岡市教育指導課に、いじめ重大事態に認定された後に市として行った対応や、市長や教育長、中学校校長の一連の発言の事実関係、保護者申し立ての調停が不成立となった経緯、本件への今後の対応などを問いあわせたところ、23日になって文書で回答が寄せられた。
回答では、市が行った一連の対応について、第三者委員会による調査報告書を引き合いに「市としては当該報告書の内容に基づき、必要な対応を行っております」と明記。具体的な内容については「個別の児童・生徒に関する具体的な指導・支援の内容については、児童および関係者のプライバシー保護の観点から、回答を差し控えさせていただきます」としつつも、市内校長会と教頭会の場で教育長から直接指導を行ったとしている。
一方、被害児童が復帰を希望していた中学校に戻れず、保護者が話し合いの場すら設けられなかったと主張している点については「個別の児童・生徒に関する具体的な指導・支援の内容や、保護者様との面談の有無・内容につきましては、児童および関係者のプライバシー保護の観点から、回答を差し控えさせていただきます」。被害児童の保護者が公開した市長や教育長、中学校校長の一連の発言についても「インターネット上で流布している音声データや動画等につきましては、その作成経緯や編集の有無等が不明であるため、当市として個別にコメントすることは差し控えさせていただきます」とした。
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