初代『ポケモン』発売30周年 再発見した“不変の土台”と、冒険譚を演出するマップ構造の妙

2026年2月27日、『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』シリーズが誕生してから30年目の日に、Nintendo Switch移植タイトルとして『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン(以下、FRLG)』が配信された。2004年にゲームボーイアドバンス向けに発売された本作は、初代『ポケットモンスター 赤・緑(以下、赤・緑)』のリメイク作だ。カントー地方の冒険を踏襲しつつ、追加ストーリーの「ナナシマ」やグラフィック・UIを、当時の最新世代に合わせて再設計した作品である。

初代『ポケモン』のリメイクがNintendo Switchに移植【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】
初代『ポケモン』のリメイクがNintendo Switchに移植【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】

初代『ポケモン』発売から30年で待望のタイトル移植が実現

 2026年2月27日、『ポケットモンスター(以下、ポケモン)』シリーズが誕生してから30年目の日に、Nintendo Switch移植タイトルとして『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン(以下、FRLG)』が配信された。2004年にゲームボーイアドバンス向けに発売された本作は、初代『ポケットモンスター 赤・緑(以下、赤・緑)』のリメイク作だ。カントー地方の冒険を踏襲しつつ、追加ストーリーの「ナナシマ」やグラフィック・UIを、当時の最新世代に合わせて再設計した作品である。

 今回は当時のドットグラフィックやBGMといった体験をそのまま移植しながら、ゲームの一部調整に加え、『Pokémon HOME』との連携を予定するなど現代的な機能も追加。30周年という節目において、シリーズの原点を振り返る作品として、昔遊んだ人にとっても、初めてプレイする人の両者にとって、これ以上ないタイミングだと言えよう。

『FRLG』を改めてプレイして感じたのは、『ポケモン』は初代ゲームの枠組み自体が洗練されており、過去作を遊んだ時に古さは感じても見劣りはしないという点だ。『ポケモン』シリーズは「捕獲・育成・対戦」という三要素で構成されており、草むらに入れば野生ポケモンが現れ、弱らせてモンスターボールを投げて捕獲する。仲間にしたポケモンは戦闘を重ねてレベルアップし、技を覚えて進化する。タイプ相性を考えながら、ジムリーダーやポケモンリーグ(一部のタイトルでは同等の役割を持つボス)へ挑戦という流れが常にある。

ポケモンを集めて戦わせる体験はシリーズを通して共通している【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】
ポケモンを集めて戦わせる体験はシリーズを通して共通している【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】

 さらに『ポケモン』には、「収集」というもう一つの強力な動機が存在する。カントー図鑑には151種類のポケモンが記録されており、それぞれが異なる場所に現れ、異なる進化条件を持っている。特定の場所でしか出現しないポケモンを探し、交換でしか手に入らない種類を集め、図鑑を埋めていくのがシリーズの軸だ。この「集める」という欲求が、プレイヤーを自然とフィールド探索へと駆り立てるのだ。

 コレクション欲と育成の達成感が結びつくことで、「新しいポケモンを見つけたい」「手持ちを育てたい」という感覚を刺激する構造になっている。このシンプルで奥深い報酬設計こそが、長い時を経てもコアとなる体験が色褪せない理由だろう。

 そして、もう一つ本作独自の特筆すべき点だと感じたのは、カントー地方のマップデザインだ。マサラタウンから始まる旅は、北へ進みながら各地のジムを巡り、やがて地方全体を回り込む形で進んでいく。一見すると一本道のように見えるが、実際には「ひでん技」によって徐々に探索範囲が広がるよう設計されている。

ジムリーダーとのバトルは重要な要素の一つ【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】
ジムリーダーとのバトルは重要な要素の一つ【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】

“冒険譚の王道”を生み出すマップ構造

 たとえば「いあいぎり」を覚えれば道を塞ぐ木を切れるようになり、「なみのり」を覚えれば海を渡れるように。こうした能力の解放によって、過去に通れなかった場所へ戻ることが可能になる。現在で言うメトロイドヴァニア(※)的な設計に近いが、物語進行と自然に結びついており、ひでん技を手に入れ、ジムを攻略することで探索範囲が拡張されていく。この流れがプレイヤーに、強烈な「冒険している感覚」を与えているのではないか。

※横視点の2Dアクションアドベンチャーゲームのサブジャンルの呼称。探索型アクションとも呼ばれる。

 また『赤・緑』や『FRLG』においては、マップの構造自体が終盤で意味を持ち始める特徴もある。グレンタウンのジムを攻略したあと、プレイヤーが海を渡って北へ向かうと到着するのは、旅の出発点であるマサラタウンだ。ゲーム開始から長い時間をかけて各地を巡り、プレイヤーはついに故郷へと帰ってくることになる。そしてゲーム開始直後にはジムリーダーが不在で挑戦できなかった、トキワシティのジムこそが最終目標という構成だ。

 つまりプレイヤーは、世界をぐるりと一周して帰還したあと、そのまま最初に訪れた町へ戻って最後の試練に挑むことになり、さらにその先には、ポケモンリーグへの道が続いている。改めてプレイしたときに、この流れが実に美しいと感じた。カントー地方のマップは単なるゲーム進行の導線以上の「ゆきて帰りし物語」として設計されており、プレイヤーは冒険を経て成長して、故郷へ戻り旅の総決算を行う。ジュブナイル作品の「スタンド・バイ・ミー」を下地にしたと言われるように、冒険譚の王道と言える構図をマップの円環構造で体験させているのが白眉だ。

優秀なマップ構造がゲーム体験を支えている【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】
優秀なマップ構造がゲーム体験を支えている【画像:(C)2004 Pokémon. (C)1995-2004 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.】

 後のシリーズではメガシンカ、ダイマックス、テラスタルなどのスパイスが追加され、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』ではついにオープンワールド化するなど、様々な要素が加わった。ただし『ポケモン』の面白さの土台には、「捕獲・育成・対戦」という三要素の循環があり、構造はシリーズがどれほど進化しても変わらない。その意味で『FRLG』は、現行ハードにおいて、『ポケモン』というゲームの骨格をプリミティブな形で体験できる作品だ。むしろ装飾が少なかったからこそ、ゲームデザインの強靭さを再確認できたと言えるかもしれない。

 最後に興味深いのは、3月5日に発売されたシリーズ最新作『ぽこ あ ポケモン』の舞台が、荒廃したカントー地方であるという点だ。かつてトレーナーたちが冒険をしていた街並みが廃墟と化しており、だからこそ『FRLG』における旅路は、平和だった時代の各地を巡る「前日譚」として機能するかもしれない。『ポケモン』というシリーズが積み重ねてきた30年という時間、その出発点となる旅路は、いま遊んでもなお色褪せていなかった。

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