「花粉症かと思ったら…」 まさかのはしか 初期症状酷似、危険な自己診断 医師が注意喚起
全国的に麻しん(はしか)の感染報告が相次いでいる。シンガー・ソングライターVaundyが今年2月に東京ドームで行った公演で、後日、修飾麻しん(麻しんに対する免疫は持っているが不十分な場合に、軽症で非典型的な麻しんを発症するケース)と診断された来場者がいたことがニュースになるなど、社会的関心事になっている。強い感染力を持つはしか。通勤や通学の電車内に感染者がいた場合、どれほどのリスクが存在し、「自己防衛」の手段はどんなものがあるのか。また、春の季節に気になる疑問も。「咳・鼻水・目の充血」といった一般的なはしかの症状は、シーズンが本格化している花粉症に一部似ており、どうやって見分けたらいいのか。晃友上九沢クリニック(神奈川・相模原)院長で感染制御医の川村洋和医師に聞いた。

最近のはしか流行は「海外からの持ち込みが続いていること」「感染力が非常に強いこと」などが背景に
全国的に麻しん(はしか)の感染報告が相次いでいる。シンガー・ソングライターVaundyが今年2月に東京ドームで行った公演で、後日、修飾麻しん(麻しんに対する免疫は持っているが不十分な場合に、軽症で非典型的な麻しんを発症するケース)と診断された来場者がいたことがニュースになるなど、社会的関心事になっている。強い感染力を持つはしか。通勤や通学の電車内に感染者がいた場合、どれほどのリスクが存在し、「自己防衛」の手段はどんなものがあるのか。また、春の季節に気になる疑問も。「咳・鼻水・目の充血」といった一般的なはしかの症状は、シーズンが本格化している花粉症に一部似ており、どうやって見分けたらいいのか。晃友上九沢クリニック(神奈川・相模原)院長で感染制御医の川村洋和医師に聞いた。
現在、日本では麻しん(はしか)の感染報告が散発的に増えています。日本は2015年に世界保健機関(WHO)から「麻しん排除状態」と認定されていますが、近年は海外からの輸入感染症例をきっかけに、国内で感染が広がる事例が見られています。
背景の一つにあるのが、人の往来の回復です。2020年から22年にかけては、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、国内外の人の移動は激減しました。それにより国内の麻しん患者数も大きく減っていました。しかし、23年以降は、海外渡航や観光の再開に加え、海外での麻しん流行の影響もあり、再び輸入感染症例が見られるようになっています。
最近の流行では、成人の感染が目立っていることも特徴です。25年1月初めから5月中旬までに国内で報告された麻しん患者は119例で、年齢中央値は24歳でした。患者は20代が40例(34%)と最も多く、30代・40代と続き、成人の割合が高くなっています。ワクチン接種歴では、2回接種を完了していない、または不明の人が79%を占めていました(出典:国立感染症研究所 感染症発生動向調査)。
麻しんが全国的に広がりやすい理由として、極めて強い感染力が挙げられます。麻しんウイルスは空気感染、飛沫感染、接触感染でヒトからヒトへ広がり、特に空気感染の影響が大きいとされています。感染者がいた空間では、本人が立ち去った後も感染してしまうことがあります。電車や飛行機、イベント会場、商業施設、医療機関など、人が集まる場所では注意が必要です。
さらに、潜伏期間が比較的に長いことも、流行しやすい理由です。麻しんは感染してから約10~12日間の潜伏期間を経て発症し、その後に発熱や咳、鼻水など、風邪に似た症状が出てきます。しかも、周囲へうつす可能性があるのは発症前からとされており、本人が「ただの風邪かな」と思って通勤・通学や外出を続けることで、無意識のうちに周囲へ広げてしまうことがあります。
このように、最近の麻しん流行は、海外からの持ち込みが続いていること、麻しん自体の感染力が非常に強いこと、発症前から人にうつす可能性があること、そしてワクチン接種が十分でない成人が一定数いることが重なって起きています。そのため、一度国内に持ち込まれると、公共交通機関やイベントなどを通じて広い範囲に感染が広がる可能性があり、今後も注意が必要です。
よく「マスクで防げますか?」と聞かれますが…
次に電車内での感染リスク、自己防衛についてお話します。電車内では、条件がそろうと感染が起こり得ます。感染力が非常に強いため、感染者と同じ車両や同じ空間にいた場合、直接会話や接触がなくても感染する可能性があります。また、感染者がその場を離れた後でも感染することがあるとされています。さらに麻しんは発症前から感染力があるため、本人が気付かないまま通勤・通学している間に周囲へ広がることがあります。
個人の対策として最も重要なのは、その場の対策よりも事前に免疫を確認しておくことです。厚生労働省によると、麻しん含有ワクチンは1回接種で約95%、2回接種でより確実に免疫を得られるとされています(出典:厚生労働省「麻しんについて」)。
そのため、個人でできる対策としては
①自分がワクチンを2回接種しているか確認する
②未接種・1回のみ・接種歴不明の場合は医療機関で相談する
この2点が重要です。接種歴は母子健康手帳などで確認できます。
よく「マスクで防げますか?」と聞かれますが、麻しんは空気感染するため、マスクや手指消毒だけで完全に防ぐことは難しいとされています。もちろん咳やくしゃみを減らす意味はありますが、麻しんに対して決定打になるのは、やはりワクチン接種による免疫です。
とはいえ、電車内でできる有効な対策はワクチン接種以外にないのか、と思われていることでしょう。残念ながら同じ理由で、マスクや手指消毒だけで感染を完全に防ぐことは難しいとされます。そのため、電車内でできる対策は限定的です。ただし、リスクを下げるために意識できることはあります。例えば、体調が悪い時は無理に通勤・通学をしないこと、周囲に高熱や発疹など麻しんが疑われる症状の人がいる場合はできるだけ距離をとることなどが挙げられます。
しかし、こうした対策はあくまで補助的なものです。個人として最も確実な予防は、やはりワクチンを2回接種して免疫を持っていることです。
「高熱や発疹があるかどうかが重要なポイント」
最後に、麻しんと花粉症の「見分け方」についてです。花粉症、インフルエンザ、麻しんは、初期症状が一部似ているため、初めは見分けにくいことがあります。しかし、それぞれの病気には特徴があり、症状の出方や経過を見ることである程度の見分けは可能です。
花粉症は、くしゃみ、水っぽい鼻水、鼻づまり、目のかゆみが中心です。目の症状がある場合でも、麻しんのような「目の充血」というより、かゆみや涙目が目立つのが特徴です。微熱やだるさを感じることはありますが、一般的には高熱や全身に広がる発疹は見られません。
インフルエンザは、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、強いだるさなどが急に現れるのが特徴です。のどの痛み、鼻水、咳が出ることもありますが、症状の中心は鼻や目よりも、急な高熱と全身症状の強さです。通常、麻しんのような典型的な発疹は見られません。
一方、麻しんは、発熱、咳、鼻水、目の充血などの症状が出た後に、高熱と発疹が現れるのが大きな特徴です。潜伏期間は通常10~12日程度で、初期(カタル期)には38度前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血などが見られ、その後に発疹が出現します。
花粉症のある人は、麻しんの初期症状に気付きにくいことがあります。鼻水やくしゃみ、目の症状だけだと「いつもの花粉症かな」と思いやすく、発熱が出ると「インフルエンザかもしれない」と考えることも自然です。しかし、麻しんは気付かないまま行動すると周囲に感染を広げてしまう可能性があります。
そのため、自分で見分ける際には、「花粉症らしいかどうか」だけで判断するのではなく、「花粉症やインフルエンザらしくない症状がないか」を見ることが大切です。
麻しんの特徴として最も分かりやすいのは、発熱に続いて全身に発疹が出てくることです。ただし、その前の段階では、咳や鼻水、目の赤みなど、花粉症や風邪に似た症状が出ることがあるため注意が必要です。家族や友人の症状を見る場合も同様で、鼻や目の症状に加えて、高熱や発疹があるかどうかが重要なポイントになります。
また、麻しんを疑った場合に最も重要なのは、自己判断で直接医療機関を受診しないことです。麻しんは感染力が非常に強く、待合室や移動中に周囲へ感染を広げてしまう可能性があります。発熱や発疹があり麻しんが疑われる場合は、まず医療機関に電話で相談し、指示を受けてから受診することが大切です。特に、花粉症だと思っていた症状に発熱や発疹が加わった場合は、麻しんの可能性も考えることが重要です。
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