【RIZIN】躍進続ける中央アジア勢 ウズベク戦士が明かした“遺伝子”の強さ「歴史的に見て私たちの血には」

中央アジア勢の躍進が止まらない。あまりの衝撃的なKOシーンに北の大地のアリーナには一瞬の静寂が訪れていた。好試合が多く生まれた14日開催の「RIZIN LANDMARK 11 in SAPPORO」。SNSを中心に反響が多かった選手の一人がイルホム・ノジモフ(30=ウズベキスタン)だ。近年RIZINの舞台で急速に台頭してきた彼らの強さの理由、戦うモチベーションは何なのか。試合の2日前にノジモフに聞いた。

TKO勝ちしたイルホム・ノジモフ(右)【写真:(C)RIZIN FF】
TKO勝ちしたイルホム・ノジモフ(右)【写真:(C)RIZIN FF】

背景に政府の支援「ポテンシャルが爆発している」

 中央アジア勢の躍進が止まらない。あまりの衝撃的なKOシーンに北の大地のアリーナには一瞬の静寂が訪れていた。好試合が多く生まれた14日開催の「RIZIN LANDMARK 11 in SAPPORO」。SNSを中心に反響が多かった選手の一人がイルホム・ノジモフ(30=ウズベキスタン)だ。近年RIZINの舞台で急速に台頭してきた彼らの強さの理由、戦うモチベーションは何なのか。試合の2日前にノジモフに聞いた。(取材・文=浜村祐仁)

“タシュケントの闘犬”が振り抜いた前蹴りが顎を打ち砕いた。第13試合でノジモフとマッチアップされた地元出身の新居すぐる(34=HI ROLLERS ENTERTAINMENT)は試合後に「よく覚えていない」と語るほどの衝撃でスイッチが切れたようにマットに倒れこんだ。レフェリーはすぐに試合を止め、ドクターが駆け足でケージに集まっていった。1R・2分9秒の豪快なKO劇だ。

 勝利したノジモフはRIZIN3戦目。24年4月にTKO勝ちした山本空良(24)戦で左膝の前十字靭帯を断裂し、長期のリハビリをへての再起戦だった。母国は中央アジアに位置するウズベキスタン共和国。現フェザー級王者のラジャブアリ・シェイドゥラエフ(24=キルギス)や10連勝中のカルシャガ・ダウトベック(31=カザフスタン)の出身国と国境を有する、旧ソビエト連邦から独立した国の一つだ。世界最高峰の格闘技団体「UFC」にも複数の選手がランカー入りしているほか、近年の国際舞台ではMMA以外のさまざまな競技でも躍進を続けている。

 その象徴の一つがサッカーのウズベキスタン代表だ。24年には史上初めて五輪出場権を獲得。今月6日にはその勢いのまま中央アジア勢としては初めてFIFAワールドカップ本大会への切符を獲得した。セリエAのASローマや、イングランドプレミアリーグのマンチェスター・シティなど名門クラブで活躍する選手を国内で育成して成し遂げた歴史的な快挙だった。

 母国の躍進についてノジモフに質問すると何度もうなずきながら「近年、国がサッカーやボクシングなどさまざまなスポーツの世界で活躍する選手たちをサポートするようになったんだ」と説明した。「元々持っていた僕たちのポテンシャルが今、爆発的に発現している。それに誇りを持っているし、みんな良い結果を出しているから自分が戦うモチベーションにつながっているんだ」と明かす。国のアスリート同士が互いを刺激し合い好循環を生む環境が存在している。

愛国心が彼らを支えている【写真:(C)RIZIN FF】
愛国心が彼らを支えている【写真:(C)RIZIN FF】

アドバンテージはフィジカルと愛国心「国旗を掲げるのが夢だった」

 彼らが戦ううえで大きなアドバンテージとなっているのがフィジカル面だ。ノジモフは「歴史的に見て私たちの血には遺伝子がずっと受け継がれている。非常に強い戦士、闘志としての遺伝子が脈々と流れているんだ」との強さの理由を語った。試合当日に見た身体つきはシャープで、一切の無駄がなく筋肉がついていた。

 また、自身のルーツである国への熱い思いも異国の地で戦う彼らを支えている。「自分の母国を背負って戦うという愛国心というものを強く感じる。子どもの頃から自分の国の国旗を掲げるというのが夢だったんだ」とその思いの深さを明かす。同じ中央アジア出身のシェイドゥラエフやダウトベックも、勝利後はすぐに国旗を持ちリングで自身の国をアピールしている。ノジモフもこの日の試合で勝利するとリング上で母国の国旗を背中に掲げ、「ウズベキスタン!」と大きな声で叫んでいた。

 すでに中央アジアの選手はRIZINに欠かせない存在となった。試合後の会見で榊原信行CEOは、ウズベキスタンやキルギスの大使とすでに接触していることを明かし、「中央アジアは良い選手がたくさんいる。(大使たちからは)ぜひRIZINと何かコラボしたいと言っていただいている」と今後のさらなる提携にも興味を示した。

 先日、新たなファイターであるヌルハン・ジュマガジ(23=カザフスタン)がRIZINと契約したことが現地で報道された。試合前のトラッシュトークやSNSでの過激な投稿を好まず、一見地味にも見える中央アジアの選手たち。しかし、その愚直なまでの強さとファイトスタイルで日本の格闘技ファンの心を確かに掴んでいる。

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