奥平大兼「初日にもうご飯行った」 Aぇ! group佐野晶哉との現場で芽生えたリアルな友情

俳優の奥平大兼(21)が主演を務める映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(5月30日公開、中川駿監督)は、「人の気持ちが記号として見える」という少しだけ特別な力を抱えた高校生・京を中心に、5人の同級生の交差する思いを描いた青春ドラマだ。現場では、親友役の佐野晶哉(Aぇ! group)を始め、ニックネームで呼び合うなど打ち解けた雰囲気だったという。そんな中での奥平の呼び方だけ……。

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』での現場の様子を語った奥平大兼【写真:増田美咲】
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』での現場の様子を語った奥平大兼【写真:増田美咲】

映画『か「」く「」し「」ご「」と「』で主演

 俳優の奥平大兼(21)が主演を務める映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(5月30日公開、中川駿監督)は、「人の気持ちが記号として見える」という少しだけ特別な力を抱えた高校生・京を中心に、5人の同級生の交差する思いを描いた青春ドラマだ。現場では、親友役の佐野晶哉(Aぇ! group)を始め、ニックネームで呼び合うなど打ち解けた雰囲気だったという。そんな中での奥平の呼び方だけ……。(取材・文=平辻哲也)

 キャスト同士の年齢はばらつきもあったが、現場では同級生のような関係性が自然に深まっていった。とくにヅカ役の佐野とは、初日からすぐに打ち解けた。

「晶哉(23)の方が年上ですけど、ずっと晶哉と呼んでいます。一言で言うと、“めちゃくちゃいい人”。すぐに話しかけてくれて、初日にもうご飯行ったんですよ。地元の友達と話してるみたいなテンションで、すごく居心地がよかった。今でも連絡取り合ってご飯に行ったりしますし、自分の中でも珍しい関係性です。劇中の京とヅカの関係そのままでしたね」

 共演した女優陣についても、奥平はそれぞれにリスペクトを口にする。

 ミッキーを演じた出口夏希(23)とは、以前に別の作品で共演していたが、しっかり言葉を交わすのは本作が初めて。「今回の役にもぴったりすぎて、“そのまんまミッキー”って感じでした」と振り返る。

 エル役の早瀬憩は17歳の最年少キャストながら、堂々とした芝居と自然体なふるまいが印象に残った。

「年齢は離れてるけど、すごく居心地がよかった。最初は年上に気を使うかなって思ったけど、すぐに『あだ名で呼ぼうよ』『タメ口でいいよ』ってなって、現場の空気もパッと明るくなりました」

 パラ役の菊池日菜子(23)については、「まんまという感じではないけど、大事なシーンに対してちゃんと悩んでいたし、現場全体の雰囲気を明るくしてくれる存在でした」と語る。

 現場ではニックネームで呼び合う映画にちなみ、“あだ名文化”も自然に生まれた。「まさやん」「なっちゃん」「ひなちゃん」「いこちゃん」といった呼び名が飛び交う中、なぜか奥平だけは「奥平大兼」とフルネーム呼び。

「『呼びにくいでしょ』って冗談で言ってたんですけど、気づいたらそれが定着してて(笑)。自分でもしっくりきちゃってました」

 ちなみに学生時代も、特別なあだ名はなかったという。

「“大兼”ってちょっと珍しい名前だから、そのまま呼ばれてましたね。仕事でもあだ名で呼ばれることってあまりないです」

21歳で高校生を演じた心境を語った【写真:増田美咲】
21歳で高校生を演じた心境を語った【写真:増田美咲】

演じる主人公の「自分なんか」に共感

 奥平が演じる京は、自分に自信がなく、「自分なんか」とつい引け目を感じてしまうタイプ。心の奥をさらけ出せないままに抱える苦しみや、周囲との距離感に揺れる姿に、奥平自身も「よく分かる」と語る。

「正直、人の気持ちが見える力はいらないなって思いました」と奥平は笑う。

「見えるからといって、全部が分かるわけじゃない。むしろ不完全なぶん、悩みの原因にもなってる。それが面白いなって感じました。それぞれ登場人物たちは特別な力を持っているんですが、誰もそのことを言えないし、見事にすれ違っていく。『ああ、そうなるよな』って思いながら読んでました」

 本作の演出を手がけた中川駿監督は、あえて表情を“映さない”という手法を取り入れた。セリフの切り返しで表情を見せるのが一般的な場面でも、あえて視線の先や背中だけを捉えるなど、“余白”を生かす演出が際立っていたと振り返る。

「めちゃくちゃ面白かったです。撮影では、監督が“表情は観客に想像してもらっていい”っていうスタンスで。演技面でも、まず自由にやらせてもらって、違うなと思えばフィードバックがある感じ。安心感がありました」

 台本にはセリフが記載されていないシーンもあり、その多くはアドリブで演じられた。

「ナレーションの裏で映ってる場面とかは、ほとんどアドリブで話してました。高校生っぽさは出てたと思います。たぶん言っちゃいけないようなことまで普通にしゃべってたんじゃないかな(笑)。でも、それも含めて楽しくて。中川監督が『それでいいよ』って言ってくれたのがうれしかったですね」

 ところで現在21歳。高校生役を演じることに対して、葛藤はないのだろうか。

「現役の高校生と並ぶと、正直ちょっと怖い気持ちはあります。感覚では勝てないと思う。自分から『まだまだ高校生役やりたい』って言うことは少なくなってきましたけど、求めてもらえるなら頑張りたい気持ちはあります。それが今の本音です」と笑った。

 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』は、5月30日より全国公開。

□奥平大兼(おくだいら・だいけん) 2003年9月20日、東京都出身。『MOTHER マザー』(20年/監督:大森立嗣)でスクリーンデビューし、数々の映画賞で新人賞を受賞。近年の出演作に、『マイスモールランド』(22年/監督:川和田恵真)、『ヴィレッジ』(23年/監督:藤井道人)、『君は放課後インソムニア』(23年/監督:池田千尋)、『赤羽骨子のボディガード』(24年/監督:石川淳一)、『Cloud クラウド』(24年/監督:黒沢清)、TBS系連続ドラマ『御上先生』(25年)など。

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