漫画家・山田玲司が抱いた危機感「これからは時間を奪い合う勝負」 動画配信者へ転身したワケ
当時としては革新的なラブコメ漫画『Bバージン』や著名人とのドキュメンタリー対談漫画『絶望に効くクスリ』などを世に放った漫画家・山田玲司先生は、現在は動画配信者として活躍している。ペンを置き、カメラの前を主戦場としたことには、山田先生ならではの考え方があった。

漫画家で地位確立も新たな挑戦「俺はこっちでも勝負できる」
当時としては革新的なラブコメ漫画『Bバージン』や著名人とのドキュメンタリー対談漫画『絶望に効くクスリ』などを世に放った漫画家・山田玲司先生は、現在は動画配信者として活躍している。ペンを置き、カメラの前を主戦場としたことには、山田先生ならではの考え方があった。
漫画家として一定の地位を築きながらも、動画配信者へと大きくかじを切ることを決断したが、その背景には山田先生ならではの“哲学”があった。
「自分は昔から老荘思想が好きなんです。今、何を悪く言われようが、所詮いつか人は死ぬんです。地球の歴史から見たら“今”なんて本当に一瞬です。人は変わっていくことが自然なんです。全てが諸行無常で流転していくんだったら、自分自身も流転していくのが条理だと思っているので、どんどん変わっていきたいんです」
動画配信も始めは漫画執筆の合間での「遊び感覚」だった。しかし、「これからは漫画の時代が終わって、YouTubeの時代になる」と感じたことで考え方に変化が生まれた。「YouTubeだって作品なんですよね。これからはユーザーの時間を奪い合う勝負になると考えた時に『俺はこっちでも勝負できるぞ』と思うようになりました」。
動画チャンネル名は「山田玲司のヤングサンデー」。2008年に休刊した「週刊ヤングサンデー」の名前を継いだ形だ。漫画のみならず、アニメや音楽に映画、時には歴史や宗教など、ジャンルレスに動画ごとにテーマを立てている。
「僕はアンテナが異常なほど広いんですよ。僕らの人生って、長い何億年もの歴史のほんの1ページにすぎないんですよね。そう考えると起こっていることの全部が面白く思えてくるんです。最初は自分の漫画を放っておいて、人の漫画やアニメを褒めることに葛藤した時期もありました。でも僕がしゃべった方が伝わることもあるのかなと思ったんです。それに気付いてから、本腰を入れて取り組むようになりましたね」
動画に挑戦するようになって10年近くの月日がたった。「さらし者になる人生を受け入れる覚悟をするということが1番しんどかったです」と当時の悩みも口にする。「自意識なんてものがあったらやれないです。みっともない自分をさらしてバカにされる覚悟ができてからは配信が楽しくなりましたね」。
サムネイルや冒頭5分の構成など、動画をしっかりと視聴してもらうための戦術も分析しながら日々臨んでいる。企画も数字を獲るためのコンテンツと自分が発信したいことにしっかりと切り分けている。
「月の半分は今はやっているものをやるようにしています。そこをきっかけに知ってくれたらと思っています。残りの半分は非常に個人的でマニアックなものをやっていますね。当然数字が出ないことも多いです(笑)。でも恐竜回とかオカルト回、宗教系なんかは、再生回数は少なかったけど、いまだに『またやってほしい』と言われるんですよ。こういった教養系のコンテンツをもっとやっていきたいですね」
今後については「『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングを漫画家でやりたいんです。ミュージシャンや映画監督でやるのもありですよね。ここは挑戦してみたいです」と新たな企画の構想も明かす。
「だいぶ認知もされきて、ブランディングが進んでいるのかなと思っています。これからも無理なく続けていきたいですね」
漫画家から動画配信者という異色の道をたどった山田先生。紙から映像と形を変化させながらも、作品の前の人々に刺激を与え続ける。
