『極悪女王』で強烈存在感 40kg増ゆりやん持ち上げた“怪力女秘話” 「今やれって言われたら絶対に無理」
話題沸騰中のNetflixシリーズ『極悪女王』は、女子プロレスラーを熱演する女優たちの肉体改造ぶりに注目が集まった。中でも主役でダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァは40キロ増量を公言して驚かせたが、そのゆりやんをリング上で担ぎ上げる怪力ぶりを見せたのが、モンスター・リッパー役のANNAだ。「今やれって言われたら絶対に無理」というANNAが撮影秘話を語った。
ダンプ松本(ゆりやん)戦に向けた実践練習で悶絶
話題沸騰中のNetflixシリーズ『極悪女王』は、女子プロレスラーを熱演する女優たちの肉体改造ぶりに注目が集まった。中でも主役でダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァは40キロ増量を公言して驚かせたが、そのゆりやんをリング上で担ぎ上げる怪力ぶりを見せたのが、モンスター・リッパー役のANNAだ。「今やれって言われたら絶対に無理」というANNAが撮影秘話を語った。
ダンプの半生を描いた『極悪女王』はその壮絶な生き様や葛藤しながらも希代の悪役へと成長していく姿が視聴者の心をつかみ、日本のNetflix週間TOP10(シリーズ)3週連続で1位を記録するなど話題を呼んでいる。出演女優は女子プロレスラー役になりきるため体重を増やし、長与千種役の唐田えりかやライオネス飛鳥役の剛力彩芽もプラス10キロで撮影に挑んだことを明かしている。
そんな中、ダンプのデビュー戦の相手という触れ込みでリングに登場するのがリッパーだ。実在したカナダ出身のプロレスラーで、現役時代は120キロの巨体を誇り、日本のほかアメリカやメキシコで活躍したパワーファイターだ。
そのリッパー役を射止めたANNAも、また異色の経歴を誇る。カナダ出身で、日本では俳優業のほか、ボクシングの元WBF世界クルーザー級王者・西島洋介のマネジャーを務め、2021年にはキックボクサーとしてプロデビューも果たしている。「格闘技女優を目指そうとデビューして2~3年後にこの役をゲットできたのは運もある」と、不思議な運命を受け止めている。
ただ、現役の格闘家とはいえ、リッパーの再現は一筋縄ではいかなかった。
オーディションがあったのは22年6月。船橋のジムで制作スタッフが見守る中、安全への配慮のもと、プロレス技をその場で実践練習することになった。プロレスは初めてで、どんな技かも分からない。プロ同士の実演を見ながら、無我夢中でくらいついた。
中でも大変だったのが、最後の技った。「バックブリーカーっていう、下から相手を持ち上げる技がありました」。相手は60キロほどの現役レスラー。なんとか担ぎ上げると、長与からストップがかかる。
「ゆりやんさんは今、体重を上げてきてるからこれじゃ実際と違うとなって、リングの下にいた結構ごつい子をリングに上げたんですよ。その子は85キロと言っていました。もうドロっと汗かいて、『ちょっと待って。今やった子と20キロ差の子が上がってくるの』と思いながら、でも構えなきゃと思って、それで頑張って持ち上げたんです」
暴飲暴食解禁、夜中にラーメン爆食「つまみは全部揚げ物に」
気合を入れて立つことができたANNAに長与らの反応は上々だった。その場で水着やブーツのサイズを測られた。ただ、ANNAは、実践練習に手応えをつかみながらも自らのパワー不足を痛感。また、ゆりやんの体はさらに重い可能性があった。
「これは私も体重上げないと上手にきれいに持ち上げられないかも」
不安がよぎったANNAは数日後に正式に合格の通知を受けると、1か月で10キロの増量を成し遂げる。
「その日から好きなものを解禁したんですよ。夜9時以降食べないとか炭水化物食べないとかの制限を全部解除して、夜中にラーメン食いまくって酒のつまみは全部揚げ物に変えました」
同時に、リッパーについての情報収集を開始。すでに亡くなっているため、日ごろから親交のあった元女子レスラーのブル中野に相談した。
「『実は私もモンスター・リッパー役で出ることになったんです』と言ったら、すごく喜んでくれて、『モンスター・リッパーのことみんな裏でモンちゃんって呼んでたんだよ。必ず高い声で、“アイムナンバーワン”って叫んでたんだよ』って言われたので、それを実際に使わせていただきました」
台本には他のセリフがあったが、白石和彌監督は快く快諾。「アドリブのセリフも結構あったけど、監督は全部OKしてくれた」。文字通り、リッパーになりきろうと、ANNAは準備を進めた。
そして、いよいよゆりやんを担ぎ上げる日。バックブリーカーには自信が持てるようになっていたが、ゆりやんは40キロの増量を遂げ“リアル・ダンプ松本”に変貌。その姿を見て、「本当にもしかしたらこのシーン無理かもって思ったんですよ」と弱気が顔をもたげた。
「全然バランス取れなくて、何回も何回もゆりやんさんを持ち上げて、4~5人に支えてもらいながら途中で『待って、この技厳しいかも』と思ったんですけど、『ANNAさんならできる』って助監督さんに言われた時にスイッチが入った。ちょっとずらした瞬間にぴたってはまったので、『ゾーンに入りました。ごめんなさい。みんな離れてください』と言って、1人で歩いたら拍手が起こって、もう泣きそうになりました。できたって」
ゆりやんには、「trust me!」(私を信じて)と言い続けた。持ち上げられるほうも怖い。返ってきたのは「ok!」との言葉。「今やれって言われたら絶対に無理。(本物の)試合だったらできていないと思う。役に入り込んで、カメラが回っていたからやれた」。努力した分、達成感は格別なものがあった。
「髪の毛が私の体に…」泣きそうになった“唐田えりかの丸刈り”
共演者の役者根性に魂を揺さぶられる場面もあった。
「髪切りデスマッチのシーンは一発勝負だったんですよ。バリカン入れたら撮り直しがきかないから、本番まで何度もリハーサルをやりました。結構長いし通しで全員何試合かしたような気分でヘトヘトの中、私が唐田えりかちゃんを押さえて、ゆりやんさんがバリカンを入れるんですけど、髪の毛がバーって切られて私の体についたんです。もう心の中で『頑張れ、えりかちゃん!』って思いました。たぶん、あそこで泣いてる子たち、みんな本当に泣いてたんじゃないかな」
容赦なく髪を剃られる唐田の姿に、撮影現場は分かっていても言葉を失った。
「カットってなった時、リングの奥で長与さんとダンプさんが抱き合って泣いていて、余計胸が熱くなりました。長与さんに聞いたら『いや、思い出したよ。涙出ますよ』って。だって当時人気絶頂の中で、女の子にとっては大事な髪の毛を全国ネット生放送で切られるってありえない状況ですよね」
現在、ANNAのもとにはプロレスのオファーも届いている。これまで5試合に出場し、全勝の大暴れだ。それでも『極悪女王』に登場する昭和の女子レスラーは「別世界」と断言する。
「一生懸命お客さんを喜ばせるだけじゃなくて、自分たちも一瞬一瞬を生きている。何十キロの人を持ち上げるのも普通にやっているし、今までない刺激を受けました」
作品は190以上の国・地域に配信。カナダに住む弟からは現地でも話題になっていると聞いている。
「俺の友達みんな見てるよって、姉ちゃんが出てるって自慢しているよって言ってました。すごくうれしいです」
情報解禁後、ANNAのSNSにはプロレスファンから賛辞の声が続々と寄せられた。「モンスター・リッパーにそっくりだね」「再現力がすごい」「懐かしい」。海外からリッパーの雑誌の切り抜きや写真を添える人もいた。ゆりやんからも「モンスター・リッパー最高だった」と連絡をもらい、苦労が報われた思いがした。
多くの人に見てもらいたい作品とANNAは言う。
「今、夢を諦める人が多いんですよ。ダメだ、面倒臭い、大変だとか上司がうるさいからとかでやめたって言う。そうじゃない。ダンプさんも長与さんもみんなそうだけど、リングの下で寝ながらビール瓶を売っても笑顔に変えられる。その原動力というのは夢があるから。この作品は夢に向かって走る人たちが輝いている。夢に向かって一生懸命頑張ってた少女たちを見てください。感動しますよ」と実感を込めた。