「岬の兄妹」などインディーズの傑作も集結…会場は大盛況

4月に開催された「くまもと復興映画祭2019」では、メジャー作品を紹介する一方、今後のブレークが期待される若手監督のインディーズ作品が上映された。新人監督の登竜門で知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018」国内コンペティション部門で最優秀作品賞と観客賞をW受賞し、全国60スクリーン以上で公開されている「岬の兄妹」(片山慎三監督)を始め、いきのいい作品が集まり、会場は各回ほぼ満席だった。

行定映画祭ディレクター、『岬の兄妹』のヒロイン和田光沙、片山慎三監督(左から)
行定映画祭ディレクター、『岬の兄妹』のヒロイン和田光沙、片山慎三監督(左から)

「くまもと復興映画祭2019」レポート(2)

 4月に開催された「くまもと復興映画祭2019」では、メジャー作品を紹介する一方、今後のブレークが期待される若手監督のインディーズ作品が上映された。新人監督の登竜門で知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018」国内コンペティション部門で最優秀作品賞と観客賞をW受賞し、全国60スクリーン以上で公開されている「岬の兄妹」(片山慎三監督)を始め、いきのいい作品が集まり、会場は各回ほぼ満席だった。

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「上映作品は自分が面白いと思うしか選んでいない。熊本には『わさもん』(「早生者」=新しい物好き)という言葉があります。流行り物を誰よりも早く取り入れたいという気持ちがあるんです。熊本はそういう気質の土地なので、映画もそうなってほしいなと思っています。ヒットしている映画を“右へ倣え”ではなく、自分でチョイスするっていうことです。でも、最初は大変なので、僕がチョイスしたものをまず見てもらおうと思いました。そうすれば、映画の見方が分かるじゃないですか。それで僕が見たものを超えて、どんどん広がっていくといい」

 こう話すのは映画祭のディレクターを務める行定勲監督だ。「くまもと復興映画祭」にはパッケージの妙があった。チケットは1日通し券のみ。スター映画に、無名の監督や俳優が出演する作品を放り込むことで、ファンに新たな映画を発見してもらうのが狙いだ。高良健吾主演の『多十郎殉愛記』、有村架純の主演『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』(吉田康弘監督)、『ナラタージュ』(行定監督)を観られれば、最新のインディーズ映画も楽しめるというわけだ。

『かぞくいろ ―RAILWAYS わたしたちの出発―』『ナラタージュ』の2本が上映された有村架純
『かぞくいろ ―RAILWAYS わたしたちの出発―』『ナラタージュ』の2本が上映された有村架純

 高良、有村の登壇を目的に来場した人も「入場料金が込み込みなら、ほかの映画も観てみようか」と続けて鑑賞する人が多かったようだ。14年から映画祭が開催されてきた菊池市の会場では、初回上映の『多十郎殉愛記』が終わっても、帰るファンはほとんどいない。上映後の監督や出演者によるティーチイン(Q&A)では、「自分で進んで観る映画ではなかったけども、面白かった」という声も聞かれ、会場のロビーでは、新人監督にサインを求めるファンの列が絶たなかった。

行定映画祭ディレクター、『アストラル・アブノーマル鈴木さん』の松本穂香、大野大輔監督(左から)
行定映画祭ディレクター、『アストラル・アブノーマル鈴木さん』の松本穂香、大野大輔監督(左から)

『アストラル・アブノーマル鈴木さん』『僕はイエス様が嫌い』など粒ぞろい

 上映作品は粒ぞろい。インディーズ映画ながら、劇場公開も決まった作品ばかり。「アストラル・アブノーマル鈴木さん」(2019年1月公開)は、ドラマ「ひよっこ」「この世界の片隅に」やauのCMで知られる注目株、松本穂香がやさぐれたYouTuberを演じた異色作。YouTubeで配信された全17話のドラマを劇場版として再編集した。監督は、新人・大野大輔氏。AVの助監督とその恋人が繰り広げる会話劇「ウルフなシッシー」(2018年)で注目を集めての起用で、これが商業映画デビュー作となった。

 転校先のミッション系の小学校でできた親友を事故で亡くした少年の姿を描く「僕はイエス様が嫌い」(奥山大史監督)はベルリン、カンヌ、ベネチアの世界三大映画祭に次ぐ権威のあるスペイン・サンセバスチャン映画祭で最優秀新人監督賞を史上最年少の22歳で受賞した話題作。5月31日からTOHOシネマズ日比谷ほかで全国順次公開も決まっている。

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