大手鉄道会社が異例のタッグを組み、新たな観光列車を静岡に走らせる。JR東海と東急が30日、静岡市内で合同の社長会見を実施。静岡県の観光振興と地域活性化を目的としたクルーズトレイン『THE ROYAL EXPRESS～SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN～』を運行することを発表した。

　東急が2017年から運営している観光列車THE ROYAL EXPRESSを活用するもので、横浜を出発し熱海を経由して三島・浜松・静岡など静岡の名所を巡り、横浜に戻る3泊4日の豪華旅行プランだ。旅行代金は1人75万円から最大114万円の値段設定だ。

　運行期間は2024年11月8日～12月16日で、3泊4日の旅を計6回実施。運行エリアは横浜～熱海・三島・沼津・浜松・静岡～横浜。特別ダイヤを編成し、横浜～熱海間の運行をJR東日本、熱海～静岡～浜松～新居町間の運行をJR東海が担い、複数の鉄道事業者が協力する事業となる。

　電車旅での観光ニーズの高まりを受け、ターゲット層について担当者は「メインは70代です。日本のいいところを改めて旅したいという方がたくさんいらっしゃいます」と説明する。1回15組最大30人（最少催行人員16人）。5月31日から抽選制での販売がスタートする。

　1日目は名峰・富士山の車窓からの絶景、2日目は景勝地・浜名湖の自然美、3日目は国宝・久能山東照宮を見て回る久能山特別観光が目玉だ。食にもこだわりを見せており、2日目のランチは、“幻の鰻”と称される「共水うなぎ」の名店「鰻処　うな正」（浜松）の逸品が車内で満喫できる。富士山と三保松原を望む「日本平ホテル」（3泊目）など、極上の宿泊体験も楽しめるという。

　JR東海の丹羽俊介社長は「静岡は美しい自然、豊かな文化、東部西部に独自の表情を持っており、多様な魅力に満ちています。魅力あふれる静岡県をまんべんなくご堪能いただける形で、地域の皆様とともに、静岡の魅力を存分に発信することができる機会になると思っています。東急様にプランをコーディネートしていただき、素晴らしい観光列車が実現できます」と、リッチな鉄道旅プランに自信を見せた。

　東急は旅行プランやコンテンツ企画を主に担当。堀江正博社長は「大変喜ばしく思っています。JR東海様とは昨年3月の新横浜線の開業を契機に連携を深めてきました。我々がTHE ROYAL EXPRESS事業で培ってきたノウハウを最大限に生かし、JR東海様の地域連携のノウハウをいただきながら、世界に誇る富士山があり、日本を代表する静岡の素晴らしい魅力を発信していきたいと考えています」と強調した。

　シニア世代を中心に観光熱が高まっており、チケット争奪戦が見込まれる。早くも第2弾を含めた今後の展開を視野に入れているといい、JR東海の丹羽社長は「静岡にはまだまだたくさんの魅力があると思います。東急様にお考えがあれば喜んで一緒にやらせていただきたいです」と声を弾ませた。