“台湾有事”で「東京だって危ない」 鳩山友紀夫氏「自分たちで安全を守っていかないと」

沖縄と日本の現実に切り込んだドキュメンタリー映画『沖縄狂想曲』が公開中だ。映画では、沖縄の米軍基地は本当に必要かを提起している。基地必要論の根拠の1つには、台湾有事がある。太田隆文監督(63)と、映画に出演した鳩山友紀夫氏(76)が台湾有事の可能性について語った。

インタビューに応じた太田隆文監督(左)と鳩山友紀夫氏【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた太田隆文監督(左)と鳩山友紀夫氏【写真:ENCOUNT編集部】

太田隆文監督も台湾有事には懐疑的

 沖縄と日本の現実に切り込んだドキュメンタリー映画『沖縄狂想曲』が公開中だ。映画では、沖縄の米軍基地は本当に必要かを提起している。基地必要論の根拠の1つには、台湾有事がある。太田隆文監督(63)と、映画に出演した鳩山友紀夫氏(76)が台湾有事の可能性について語った。(取材・構成=平辻哲也)

「台湾有事が全くないとは思いませんが、この台湾有事は非常に作られていると思います。有事が言われ、1番得をしているのは軍産複合体です」というのは鳩山氏だ。

鳩山氏「習近平さんは福建省長時代には台湾の方々と親しかったわけです。台湾は中国の一部と言っているわけですから、すぐに武力で統一しようと思うわけがないじゃないですかね。ただ、アメリカが台湾を独立させようと動いて、日本がそれに協力するとなれば、武力行使もあるかもしれません。その時に攻撃されるのはアメリカ本土ではなく、日本です。そうなったら、沖縄だけではなく、東京だって、危ないということは気づかないといけないと思います」

 映画で複数の関係者に取材した太田監督も台湾有事には懐疑的だという。

太田監督「沖縄の方々からも、中国は侵略しようとは思っていないんじゃないか、という話を伺いました。攻めようとして、だれが得をするのかを考えると、ミステリーですよね。マスコミで言われている台湾有事は違うかもしれない、と考えるようになりました。僕としては、どこの国が危険だぞ、と伝えたいわけではなく、時代の流れを見て、考える力が大事。自分の目線を持とうよ、というのがテーマではありますが」

 鳩山氏は、米軍基地の全廃を成し遂げることで、日本の真の意味で戦後、独立があると考えている。

鳩山「もっとこの国は自分たちで安全を守っていかないといけない。でも、自衛隊を強化していけばいい、というわけではないんです。東アジアは運命共同体です。戦争が起こりようもない状態にすればいいだけで、それには周辺の国々と友好関係を築いていくことが大事。それもしないで、脅威を叫べば、相手も当然脅威を感じて、戦力を高めてしまう。軍事費を2倍にする金があったら、教育や高齢者福祉に回せば、もっと住みやすい国にできるんじゃないかなと思います」

 太田監督は、映画の中で、米軍自体も普天間からグアムへの移設案を考えていたのではないかと投げかけている。

太田監督「アメリカは沖縄から撤退したからといって、困らない。むしろ、日本側が『行かないでくれてくれ。その代わりに土地出すから』と言って、そこで儲かる人がいたという構図が取材で分かってきました。それが、何で間違ってしまったのか。沖縄には基地があるから、豊かになれると思っている人がいますが、それは間違いです。むしろ、基地があることで沖縄は全国最低所得になっていますし、基地の跡地に建てられたアメリカンビレッジ(リゾート地)は非常に成功しています」

 今も辺野古移設問題が大きく揺れているが、沖縄から米軍基地がなくなる日は来るのか。

鳩山氏「なくなる日は来ると思います。それは、外から眺めて、『なくなればいいな』ではなく、行動しないといけない。一方、トランプ氏が秋の大統領選に勝てば、来年くらいには全部なくなっても、おかしくない。トランプ氏が大統領在任中、在日米軍駐留経費(年間約80億ドル)を要求したのも、米軍引き上げのための口実作りだと思うんです。彼らにとっては、日本に基地を置くメリットはない。軍事的には中国のミサイルはアメリカ本土に届く性能はある。ならば、別のところにお金を使おうと計算している気もします」

 普天間基地移設問題で「最低でも県外」と発言し、その“公約”を果たせなかった鳩山氏は、この『沖縄狂想曲』に出演し、沖縄問題について語り、映画の発信力に期待もしている。

鳩山氏「私自身は、映画はあまり見ない方で、森繁久弥主演の『駅前』シリーズなど、考えないで見られる映画が好きなのですが、『沖縄狂想曲』は本当に素晴らしい作品になっていると思いました。この国を変える原動力になってくれればと期待しています」

太田監督「私は元々、エンタメの監督で、まさか『ドキュメンタリー沖縄戦』『乙女たちの沖縄戦』、そして、今回の作品と沖縄に関する映画を3本作るとは思っていませんでした。しかし、お客さんの反応を見ると、ニュースでは伝えられないことも、映画にすることでうまく伝えることができる、その役割があるんだと分かりました。次に何を作るか、まだわかりませんが、出会いを大事に、映画を作っていきたいと思っています。次も沖縄の映画を作るかもしれません」

 映画『沖縄狂想曲』は新宿・K’s cimemaほか全国順次公開中。

□鳩山友紀夫(由紀夫)(はとやま・ゆきお)1947年2月11日生まれ。元内閣総理大臣、(一財)東アジア共同体研究所理事長。東京大学工学部卒業、スタンフォード大学工学部博士課程修了。1986年初当選。93年細川内閣で官房副長官を務める。2009年、民主党代表、第93代内閣総理大臣に就任。10年総理大臣を辞任。氏名表記を鳩山由紀夫から鳩山友紀夫に変更。著書に『脱 大日本主義』(平凡社)などがある。

□太田隆文(おおた・たかふみ)1961年、和歌山県生まれ。ロサンゼルスの南カリフォルニア大学(USC)に留学。2003年、大林宣彦監督の映画『理由』でメイキングを担当し、大林監督を師事。2006年、故郷・和歌山を舞台にした映画『ストロベリーフィールズ』を脚本、監督。その後、地方を舞台にした青春映画を発表。『青い青い空』(2010)、『向日葵の丘 1983年夏』(2015)、『明日にかける橋 1989年の想い出』(2019)の脚本、監督を担当。2013 年、原発事故を題材とした『朝日のあたる家』では山本太郎が出演し大ヒット。以降、社会派ドキュメンタリー『ドキュメンタリー沖縄戦 知られされる悲しみの記憶』(2020)、『乙女たちの沖縄戦 白梅学徒の記録』(2022)を発表。

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