2023年は、インバウンドが勢いを取り戻した年だった。今年もその流れは続くと見られているが、訪日外国人たちは、いったいどんな買い物をしているのだろうか。東京・台東区のゲストハウス「カンガルーホテル」のオーナー、小菅文雄さんに現状を聞くと、意外な実態が浮き彫りになった。

　小菅さんは、本館、別館合わせて常時30～32部屋を稼働させている。昨年は年間を通じてほぼ満室状態が続き、利用客の半分以上は外国人とインバウンドの情勢に詳しい人物の一人だ。

　買い物といっても、大小たくさんの種類がある。値段も幅広い。そんな中、分かりやすく買い物の傾向を知る方法があるという。

「お客さんのゴミを処分しなくちゃいけないじゃないですか。ゴミからちょっと分かりますね。今はもう接客以外では、お客さんと何かしゃべったりとかはほとんどないんですよ。ですが、ゴミの中から何を目的に日本に来たのかなというのが見えてきます」

　外国人がチェックアウトするたびに、部屋の清掃をしている。ゴミは細かく仕分けする必要があり、その作業はなかなか大変だ。

　小菅さんが外国人の部屋に特に多いと感じるゴミの種類は3つある。

「ゴミで一番目立つのはフィギュアのパッケージ、ガチャポンの空の容器、あとスニーカーの箱やファッションの紙袋です」と明かした。

　小菅さんのホテルは山谷地区にあり、最寄りの南千住駅からは日比谷線で上野、秋葉原、銀座に直通できる。ゴミの傾向から、まず旅行客がサブカルの聖地・秋葉原を目指していることが分かる。

「ガチャポンのカプセルはもう毎回ゴミ箱に入っていますし、フィギュアのパッケージも捨ててあります。年代は問わないですね。いい年のおじさんもいますし。アニメの影響が大きいですし、みんなフィギュアとかゲームとか大好きですね。僕は詳しく分からないのですが、今はこれが当たり前なんだなと思ったりしています」

　また、スニーカーの箱も大量に置かれている。

「スニーカーの箱は毎日のように捨てられていますね。ナイキとかアディダスとかのスポーツブランドが多いです。日本だけにしか流通しないものもあるのでしょうか」

　一方で、アパレルの紙袋には意外な特徴も。

「ユニクロやGUなどのファストファッション系が多いんですけど、結構高級ブランドとかも買っているんですよ。エルメスとかシャネルとかですね」

　実際、部屋から回収した紙袋を見せてもらうと、ルイ・ヴィトンを筆頭にハイブランドの袋がずらり。銀座で買い物をしているのだろうか。

「どれも世界的に認知されているかなりのハイブランドです。普通、身分相応みたいな感じで、こういう服を着る人は、それなりのホテルに泊まってそれなりの旅行の仕方をすると思うんですけれども、その辺がちぐはぐな気もします。円が弱いからこういうことになるのかな」と、首をひねった。

　カンガルーホテルの1泊の料金は3600円から。高くても5000円で、比較的リーズナブルだ。数万円、数十万円もするようなブランド服をたくさん買っていくのは、確かにギャップがある。

　部屋の使い方については、全体的に改善が見られるという。

「前はドライヤーとか備品を盗まれることもありました。こちらも困るので、チェックアウトした瞬間に見に行ったり、気を張っていましたけど、今はあんまり盗まれなくなりましたね。全体的にマナーがよくなっています」

　共用部の使い方も同じで、「自分さえよければいいみたいな使い方もあったのですが、今は割とそういう感じではない。全体的に使い方がきれい。みんな人に迷惑をかけないようにしようとか、物音を立てないとか、意識が高くなっていると感じています。みなさん静かですね」と話した。