シシド・カフカ、ドラマーが女優に挑戦した理由 アクションシーンで役立ったリズム感

ドラマーのシシド・カフカ(38)が、綾瀬はるか主演の映画『リボルバー・リリー』(8月11日公開、行定勲監督)でアクションに初挑戦した。カフェーで働くが、実はウィンチェスターの達人、奈加役。シシドがドラマーとアクションの意外な共通点を語った。

インタビューに応じたシシド・カフカ【写真:矢口亨】
インタビューに応じたシシド・カフカ【写真:矢口亨】

役者挑戦は「下積み時代が長かったから抵抗があった」

 ドラマーのシシド・カフカ(38)が、綾瀬はるか主演の映画『リボルバー・リリー』(8月11日公開、行定勲監督)でアクションに初挑戦した。カフェーで働くが、実はウィンチェスターの達人、奈加役。シシドがドラマーとアクションの意外な共通点を語った。(取材・文=平辻哲也)

 身長175センチ、モデルのような美貌を持つシシド。女性ミュージシャンでは数少ないドラムボーカルというスタイルで注目を浴び、俳優としても才能を開花させているが、アクション映画出演には戸惑いもあった。「運動やアクションが苦手だったので不安があったんです。でも、綾瀬さんと共演したいという思いがありました」と振り返る。

『リボルバー・リリー』は大藪春彦賞を受賞した長浦京の同名小説が原作。大正時代の帝都・東京を舞台に、陸軍と対峙する元スパイ小曾根百合(綾瀬)の物語。シシドが演じたのは、百合とともにカフェーを切り盛りする女性、奈加。実は特務機関の同僚で、ウィンチェスター銃の使い手。百合を助けるために長いライフル銃を自在に操る。

「衣装合わせのとき、行定さんは『ドラマーとして、オファーさせてもらったと考えてください。後ろからボーカリストやベーシストを支えるような感じで、百合を支える奈加を演じてください』と言ってくださったんです。とても面白い指示で、うれしかったです。奈加は普段、穏やかな女性ですが、大切な思いを持っている役だなと思いました」

 アクションでは数か月間、定期的に銃の扱い方について、専門家の指導を受けた。一番難しかったのは、片言の日本語にしてほしい、という演出だが、オリエンタルな容姿と言葉遣いが相まって、奈加のミステリアスな面を引き立てている。

 大正時代の建物を再現したセットや大掛かりなグリーンバックの撮影もあったが、「居心地は良かったです。いい空気が流れていたので、それを壊さないように心がけました。行定さんは非常に丁寧に見てくださって、スタッフ、キャストを信頼してくださっていたので、自由にやらせていただきました。綾瀬さんは飾らない方で、合間にはいろんなお話をさせていただきました。体作りについて伺ったら、ボディービルダーのYouTubeを見て、筋肉飯を作っているとおっしゃっていました」と明かす。

 俳優としては2014年にフジテレビ『ファーストクラス』に出演し、NHK連続テレビ小説『ひょっこ』で注目を浴びるが、きっかけは何だったのか。

「事務所のマネジャーからドラマの企画書を渡されて、『明日、OKだと言ってくるから』って。『私が演技をやるんですか?』という感じでした。私は女優さんが歌を歌うことには抵抗があったんです。逆も同じで、ミュージシャンが役者をやるのは、どうかと思っていました。役者さんもミュージシャンも座席の数は決まっていると思っていましたから、そこに自分が座ることに引け目があったんですね。私は下積み時代が長かったので、余計にそんな思いがありました。ただ、『ミュージシャンのシシド・カフカ』として呼ばれているからと言われ、徐々に楽しさを覚えていきました」

 意外にも、運動は苦手というシシドだが、演技やアクションなどではリズム感も役立ったのではないか。

「確かにそうかもしれません。普段、ドラムをたたく以外はまったく運動はあまりしていません。バンドのパートで一番疲れるのは、ドラムとボーカルと言われているんですよ。それを同時にやっていますから。時間があれば、スタジオでドラムをたたいています。仕事がなければ、午前中に4時間くらいたたいています。それで、歌う仕事が入ってきたときに歌の練習も始めるんです」

俳優業とドラマーのマルチタスクをこなすシシド・カフカ【写真:矢口亨】
俳優業とドラマーのマルチタスクをこなすシシド・カフカ【写真:矢口亨】

 10月13日にはワンマンLIVE『11』(Spotify O-WEST)を開催予定。準備も始めている。

「本当にやることが多すぎるんです。ドラムをたたかなきゃいけない、歌わなきゃいけない。MCもやんなきゃいけないし、顔も作らなきゃいけない」とシシド。こんなマルチタスクをどうこなしているのかと不思議になる。

「でも、この映画のアクションは大変でしたよ。右足を軸に動くのですが、そのときに銃口がどこを向いているのかをとっさに考えるんです。いっぱい回りすぎて、百合に銃口を向けてしまい、NGになったこともありました」と苦笑い。

 今後については「こういう風に知らない世界、知らない時代を経験させてくれるのが面白いと感じました。目標を立てると、視野が狭くなる気がするので、あまり目標は立てないようにしていますが、本当に楽しいことがあれば、意欲的に参加していきたいとは思います」。アクション大作の出演を経て、俳優業への思いも加速したようだ。

□シシド・カフカ メキシコ生まれ。ドラムボォーカルのスタイルで2012年『愛する覚悟』でCDデビュー。以降セッション・ミニアルバムを含む4枚のアルバムをリリース。女優として17年NHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演し一気に話題となり、最近では、ドキュメンタリー映画や番組でのナレーションも務めるなど多方面で活躍する他、18年にアルゼンチンに留学してサイン・システムを学び、同年より100種類以上のハンド・サインを出しながら即興演奏でリズムを奏でてセッションしていくリズム・イベント「el tempo(エル・テンポ)」を主宰している。現在放送中のドラマ、テレビ朝日『警部補ダイマジン』、ABC/テレビ朝日系列『何曜日に生まれたの』にも出演中。

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