昭和に大ヒットした1人乗り自動車「ミニカー」って何? 日本屈指のコレクターが語る“エモさ”

原付とも軽自動車とも異なる、まるでおもちゃのようなひと際小さな車体。1970年代後半から2000年代の短い期間に生産された超小型自動車、ミニカー(マイクロカー)を専門に集めるコレクターがいる。日本初となるミニカー専門の博物館「マイクロカーミュージアム WAZUKA」館長の長谷川薫さんに、不思議な魅力を持つミニカーの世界を聞いた。

まるでおもちゃ 誰もが足を止める光岡自動車のミニカー「BUBU501」
まるでおもちゃ 誰もが足を止める光岡自動車のミニカー「BUBU501」

総排気量50㏄以下または定格出力0.6kW以下の1人乗り専用の超小型自動車

 原付とも軽自動車とも異なる、まるでおもちゃのようなひと際小さな車体。1970年代後半から2000年代の短い期間に生産された超小型自動車、ミニカー(マイクロカー)を専門に集めるコレクターがいる。日本初となるミニカー専門の博物館「マイクロカーミュージアム WAZUKA」館長の長谷川薫さんに、不思議な魅力を持つミニカーの世界を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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 ミニカーとは、総排気量50㏄以下または定格出力0.6kW以下の1人乗り専用の超小型自動車のこと。現行の道路交通法では普通自動車に分類され、法定速度は60キロと定められている。84年の道路交通法改正以前は、原付免許で運転でき、車検もなく税金も安かったことから、主婦層を中心に大ヒットした。

 45歳の長谷川さんがミニカーの存在を知ったのは、高校1年生だった16歳のとき。通学途中にある自動車屋の敷地の隅で、放置されている1台を目にしたのがきっかけだ。

「自動車屋の人に聞いたら『持って帰れるならタダであげるよ。動かないけどね』と言われたので、知り合いに頼んでトラックで運んでもらった。当時は免許がなかったし、車自体動かないので、自分だけの隠れ家というか、秘密基地のような感じで使っていました。うちは家が裕福ではなく、父も車を持ってなかったので、エンジンのついた乗り物への憧れがずっとあった。そのミニカーは手放して人に譲ってしまったんですが、30代も半ばになって、また乗りたいなと探し求めるようになったんです」

 ベンツやBMWに乗っていた時期もあったが、普段から1人で乗ることが多かったためミニカーでも十分と、会社の営業車以外は手放し古い時代のミニカーを収集。光岡自動車のBUBUシャトル、BUBU501、BUBU502、日本グランドのピアピア、乗りもの館のサイデスカー、イタリア車のタイガービート、スルーキーなど、7台あまりを集めた。いずれも50年近く前の車で、実動する状態のものが出てきたことは一度もなく、安く手に入ったとしても運転できる状態にするまでは「1台あたり軽自動車1台分くらい、全部合わせればゆうに高級車1台分くらい」の費用がかかったという。

「いつ、何が出てくるか分からない。地方に行ったときに家の前で雨ざらしになっているのを見つけて、チャイムを押してその場で譲ってくださいと交渉したこともあります。ボディーが鉄ではなくFRP樹脂なので、意外と処分が面倒なんですよ。所有者のおばあちゃんから『タダでもいいから持ってっておくれよ』と言われたこともあります」

 こだわりは1台1台に施した、どこか古くも懐かしいオリジナルのラッピングだ。「BUBU501の『ナショナル』は、昔にあった『明るいナショナル』というキャッチコピーから街を明るく照らせる存在になればいいなと。ミニカー自体が昔懐かしの乗り物なので、今ではあまり見ることのなくなったノスタルジーあふれる、今風に言うと“エモい”デザインにしています」と思い入れを語る。

 あらためて、ミニカーの魅力とは。

「無駄を楽しむ乗り物、ですかね。何でも便利でシンプルな世の中ですが、あえて無駄や不便を楽しむのもいいもの。自分で乗っていても、それを見ている周りも楽しい。今となっては珍しいぶん、人から喜んでもらえる乗り物だと思います」

 一部はミュージアムに展示しつつ、これからも街中を走らせ多くの人に笑顔を届けに行くつもりだ。

次のページへ (2/2) 【写真】店内騒然? コンビニ前に駐車されたイタリア製のミニカー「スルーキー」
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