バイト掛け持ちで食いつないだ20、30代 名バイプレイヤー・山口森広を生んだ“糟糠の妻”の一言

名バイプレイヤーとして知られる俳優の山口森広(41)が、6月開幕の舞台『パラサイト』に出演する。韓国の大ヒット映画を舞台化したもので、金持ち一家の運転手役を務める。11歳の時に子役としてデビューして31年。数多くの舞台、映画、ドラマに出演してきたベテランには、“糟糠の妻”の存在があった。

インタビューに応じた山口森広【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた山口森広【写真:ENCOUNT編集部】

山口森広インタビュー 舞台『パラサイト』で金持ち一家の運転手役

 名バイプレイヤーとして知られる俳優の山口森広(41)が、6月開幕の舞台『パラサイト』に出演する。韓国の大ヒット映画を舞台化したもので、金持ち一家の運転手役を務める。11歳の時に子役としてデビューして31年。数多くの舞台、映画、ドラマに出演してきたベテランには、“糟糠の妻”の存在があった。(取材・文=中村智弘)

『パラサイト 半地下の家族』は2019年に公開された韓国映画。カンヌ国際映画祭でパルム・ドール、米アカデミー賞では作品賞を受賞し、世界的なヒットとなった傑作だ。その舞台化が日本で実現する。

 古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉、江口のりこら豪華俳優陣が出演予定で、どのような内容になるのか、期待は高まるばかり。山口が演じるのは、高台の豪邸に暮らす金持ち一家の運転手役だ。

「実際、映画を観ましたが、ハラハラドキドキで先の読めない展開で本当に面白かったです。基本的に室内で起こる出来事を中心に描かれていて、まさに舞台にぴったりだなと思いました。今回の舞台は、映画の核となる部分を忠実に描いている一方で、うまく日本の作品に“シフト”されていると思います」

 山口の顔を見れば、どこかで見たことがあるという人も多いかもしれない。最近では、今年のヒットした日本テレビ系『ブラッシュアップライフ』第4話に宇多川役で出演。Netflix『新聞記者』やテレビ朝日系『家政婦のミタゾノ』、フジテレビ系『イチケイのカラス』など、数多くの映画やドラマに出演してきた名バイプレイヤーの一人だ。実は11歳のときに子役としてデビューしていて、今年で俳優生活31年目のベテランでもある。

「幼稚園のときに、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』を観ていて、加藤茶さんと志村けんさんの2人が大好きだったんです。テレビに出たら、あんなに面白いことできるんだと思って、憧れていました。それで、親にずっと『テレビに出たい』と言い続けていたら、小学5年生のときに児童劇団に入れてもらえたんです。小学、中学、高校、大学と役者を続けてきて、そのまま役者として生きていこうと決めたんです」

 これまで「自分でも数えきれないくらい」の作品に出演してきたが、その道は決して順風満帆だったわけではない。20、30代の頃は、俳優一本で生活していくのは難しく、バイトをしながら食いつなぐ日々が続いた。

「引っ越しや球根を見分ける作業……本当にいろんなバイトをやりましたね。パソコンのテクニカルサポートセンターでクレーム処理もやっていました。『お前の体にウイルスをばらまいてやろうか』と言われたのを今でも覚えています。生活のためでしたが、今ではあのときのバイト経験が全部、役に生かされていますね」

20、30代はバイトで食いつないだという【写真:ENCOUNT編集部】
20、30代はバイトで食いつないだという【写真:ENCOUNT編集部】

26歳で結婚「子どもができて『もっときちんとやらなきゃ』と腹をくくった」

 26歳の時に同じ年の女性と結婚。30代半ばで子どもも授かる。

「それまでは先のことをあまり考えなかったんですが、子どもができて『もっときちんとやらなきゃ』と、より腹をくくった感じになりました。そのとき、妊娠中の妻が『バイトを一度全部やめて、役者に集中してみな』と言ってくれたんです。それで、全部バイトをやめて、いくつものワークショップに行ったり、舞台のオーディションを受けたり、芝居に集中したんです。すると、少しずつ声をかけてもらえるようになって、バイトをしなくても、ギリギリ生活できるようになりました。妻には本当に感謝しかないですね」

 最近、現場に行くと十数年ぶりに、かつての共演者やプロデューサーと再会することもあるという。以前はアシスタントディレクターだった人が監督になっていることもある。その縁で、また仕事がくることもあるそうだ。長く第一線で活躍できる秘訣は何なのか。

「何が起きても変化できるような柔軟性ですかね。1話だけの出演とかも多いので、その作品の空気感にうまく対応できるようにしています。あとは、100パーセント楽しんでやること。もちろん、苦しいこともあるし、反省もするし、悩んだりもします。でも、やっぱり、現場は楽しくてしょうがない。死ぬまで役者をやると決めています。できることなら、舞台上で死にたい……迷惑でしょうけど(笑)」

□山口森広(やまぐち・しげひろ)1981年9月23日、神奈川県横浜市出身。11歳のときに子役としてデビューして以来、数多くの舞台、映画、ドラマ、配信作などに出演する。最近では、日本テレビ系『ブラッシュアップライフ』、テレビ朝日系『家政婦のミタゾノ』、フジテレビ系『イチケイのカラス』、Netflix『全裸監督2』などに出演。2021年には短編映画『捨てといて捨てないで』で初めて監督・脚本にも挑戦した。

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