雪道スリップ、奇跡の衝突回避 当事者ドライバーに聞いた“紙一重”のブレーキ操作

雪道で前方の車が思わぬスリップ、後続ドライバーの必死のブレーキ操作もあって、あわや衝突事故を奇跡的に防いだ動画が、ネット上で話題を呼んでいる。2つの車両がぶつかることなく事なきを得た、とっさの判断と行動。後続ドライバーで投稿者の銀楽さんに当時の状況、雪道での安全運転意識の向上への思いについて聞いた。

雪道でギリギリのブレーキ操作により衝突事故が防がれた【写真:本人提供】
雪道でギリギリのブレーキ操作により衝突事故が防がれた【写真:本人提供】

札幌の雪道で緊急事態 「あとは全力で祈っていただけなので、完全に運としか申し上げられません」

 雪道で前方の車が思わぬスリップ、後続ドライバーの必死のブレーキ操作もあって、あわや衝突事故を奇跡的に防いだ動画が、ネット上で話題を呼んでいる。2つの車両がぶつかることなく事なきを得た、とっさの判断と行動。後続ドライバーで投稿者の銀楽さんに当時の状況、雪道での安全運転意識の向上への思いについて聞いた。

「えー、マジでマジでマジで!」。

 前方の車両がゆっくりと左にスライドする。どんどん縮まる車間距離、銀楽さんの生々しい声、緊迫感が伝わる。ブレーキを踏み、最後はサイドブレーキをかけてストップ。前方の車両は少し前に動いた。事故を回避。銀楽さんは「あっぶねえ!」「これで当たってないっていうのがすごいよ」と、車内で驚きの声を上げている。銀楽さんがツイッターにアップしたドライブレコーダーの映像だ。「閲覧数」でみると、2000万件を超えている。

 年始早々の今月3日夕方、日暮れで暗くなった札幌市内での出来事。銀楽さんが詳細を説明した。

「当時の気温はマイナス6度で、元々交通量が多くツルツルだった路面に新雪が乗って、より滑りやすくなっていました。周囲の車の流れもそのせいで遅くなっており、時速30キロ前後で流れていました。

 そんな中、交差点の信号の変わり目で少し急いだ前方の車両が赤信号に間に合わず、慌ててブレーキを踏んだ(?)ところ止まり切れず、スライドして横を向いてしまい、予測だにしない動きに慌てた私は動画の通りの行動をし、何とか当たらずに済んだ…というのが事の顛末(てんまつ)です」

 ギリギリで衝突を回避できた要因はどこにあったのか。

 銀楽さんによると、「動画が始まるより1秒ほど前の段階で、こちらもフットブレーキをかけてましたが、速度域が低いせいでブレーキをかけたその瞬間すぐにタイヤがロックし滑り始めていました。この時点ではまだ前方の車両は交差点を突っ切るだろうと判断し、自分は何とか停止線までで止まれるだろうと思っていました。

 しかし、前方車両がスライドしてしまう動きになったため、私は全力でブレーキを踏み、それでも止まらないため、止まるか車体の向きを変えるかして、(当たるのは前提として)直接真っすぐに衝突するのを避けるためにサイドブレーキをかけた次第です」。運命を決めたブレーキ操作について明かした。

 さらに続けて、「この行動が正解なのかどうかはともかく、僕自身はできることをやったまでですし、前方の車両もこちらの動きを見ていたのか、スライドしたせいでパニックにならずスッと前に出てくれたおかげで、当たらずに済んだのかなと思います。あとは全力で祈っていただけなので、完全に運としか申し上げられません」。まさに紙一重だった。

多くの教訓が得られる映像内容 「冬道の恐ろしさをお伝えできたのならそれで良かったかなと思います」

 銀楽さんは「【音量注意】 年始早々、今年分の運をたぶん使い切ったと思います」などと文面を添えて投稿。動画は多くの反響を集めている。

「動画をアップすることに関しては少々ためらいがありましたが、仲の良いフォロワーに見てもらって『いやー当たらなくてよかったねー』と笑い合えればそれでよかったのです。ところが予想だにしない勢いで拡散されてしまい、正直困惑しているのも事実です。しかし、結果論ではありますが、冬道の恐ろしさをお伝えできたのならそれで良かったかなと思います」。率直な思いを明かした。

 雪道での事故防止。多くの教訓が得られる映像でもある。銀楽さんはアドバイスを教えてくれた。

「まずは速度をしっかりと落とし、車間距離を十分に取ることが大事です。私自身も今回の件で身をもって体感致した次第です。

 また、冬用タイヤは古いものをケチって使い続けるのではなく、なるべく新しく山(目)のあるものを使用することも重要です」とのことだ。

 実際に滑ってしまった際については「滑った時のとっさの動きとしては、ブレーキを踏み続けてロックさせるよりは、ポンピングブレーキ(小刻みにブレーキを踏む操作)でタイヤを転がしつつ、ステアリングを切って向きを変えて避けるのが1番の正解かなとは思います。

 しかし、とっさの場合は人間の体は思うように動かないのも事実です。その場合にできることは、全力でブレーキを踏み続けて衝突しないよう祈ることくらいではないでしょうか。昨今では電子式パーキングブレーキの車種も増えておりますし、今回のようなサイドブレーキでどうこうするということも行いにくいでしょうから…」。

 そのうえで、安全運転のメッセージとして「このコメントをお読みになられた皆様の、雪道での安全運転への意識の向上に少しでもつながるのなら幸いです」と、真摯(しんし)な思いを寄せた。

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