「ベンツが最高」の考えが一変 ベントレーを所有して分かったすごさ 「作りは全然違いますよ」

千葉県の石井俊雄さんはベントレー2台、メルセデス・ベンツ1台の計3台を所有している。かつては長年ベンツに乗っていたものの、ベントレーに乗り換えて「ベンツが最高」との考えを改めた。最高峰の車のとてつもない魅力とは?

1953年式のベントレーRタイプ・サルーン【写真:ENCOUNT編集部】
1953年式のベントレーRタイプ・サルーン【写真:ENCOUNT編集部】

英国王室の定番 「作りはやっぱり全然違いますよ、イギリス車は」

 千葉県の石井俊雄さんはベントレー2台、メルセデス・ベンツ1台の計3台を所有している。かつては長年ベンツに乗っていたものの、ベントレーに乗り換えて「ベンツが最高」との考えを改めた。最高峰の車のとてつもない魅力とは?(取材・文=水沼一夫)

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 石井さんの愛車は、1953年式のベントレーRタイプ・サルーンだ。堂々とした車体、エレガントで気品ある風格には、思わず目がくぎ付けになる。

「購入は5年前ですね。もう6年目。これは私が1952年生まれで、私が生まれたときに出た車に乗りたいなと思って、息子と共有で買ったんですよ」

 愛車はオートマチックだが、1年前にマニュアルが出ていた。そのため、誕生年と同じ52年に販売された車と捉えている。

 購入当時の価格は約800万円だった。追加でオーバーホールに出して350万円、内装に200万円がかかった。「全部ばらしたんですよ。カーテンも運転席から操作できるように全部復元したもので」

 費用の一部は、ベンツを下取りに出して補填(ほてん)した。「夢がかなったという感じですかね。ベンツをずっと乗り続けようと思ってたんですけどね」

 石井さんはベントレー購入まで長年、複数のベンツに乗っていた。そのため魅力を知り尽くしている。だが、ベントレーを手にすると、同じ高級車でも上には上があると実感させられたという。

「ベンツが最高だと思っていたんだけど、内装とかそういうの全部鑑みると、全然ベントレーがすごいなと」

 例えば、内装に使われる革一つ取っても、ベントレーの素材は一級品だった。「見ていただければ分かるんですけど、コノリーという革で、69年前のものをそのままなんですよ」。手間暇かけたディテールのこだわりの数々に敬服。ウッド部分はくるみの木の根っこをそのまま使用し、経年劣化も全くないという。

「だからいかにこの木を寝かせているか。この時代にサンルーフがついているしね。すごいなと思います。作りはやっぱり全然違いますよ、イギリス車は。エリザベス女王は亡くなっちゃっいましたけどね、結婚式とかみんな昔のロールス・ロイス、ベントレーが出てくるじゃないすか。エリザベス女王は最後はベントレーに乗っていましたからね」

リアショット【写真:ENCOUNT編集部】
リアショット【写真:ENCOUNT編集部】

世界限定321台 超貴重なベントレーも所有 「すごくいいタマ」

 発売当初は「今の金額でいくと、5000万ぐらいしたんじゃないかと。貴族しか乗れなかったんですよね」というラグジュアリーカー。「69年前に油圧でサスペンションが硬くなったり柔らかくなって、ステアリングを調整できるんですよ。考えられないですよね」と驚きの連続だという。

 総重量は2.3トン、車体の全長は4メートル96センチほど。クラッチが運転席の右側にあるのもこの時代の特徴だ。大きい車を運転するために、日ごろの体調管理も欠かさない。「朝6時20分のEテレで体操を10分間、それは毎日やっています。あとは通勤のときは大体1.5キロぐらい歩いていますね。パワステだったら全然いいんだけど、重ステだから」

 愛車を披露すると、周囲の反響は絶大だった。「みんな驚きますね。引きますね(笑)」

 威風堂々としたただずまいは、嫌でも注目が集まる。

「孫なんか、みんなで乗ると、ジロジロみられるから恥ずかしいから嫌だよって言うんですよね。原宿に乗せてってあげるよと言ったとき、『みんな見てるから恥ずかしいよ、おじいちゃん』とか言って」

 もちろん、車のイベントでも注目の1台となる。

「イベントなんかも反響がすごいですよね。やっぱり形が形だし、本当に戦前のクラシカルな形してるから」

 ほかにベントレーの希少車コンチネンタルTも4年前に購入している。「1997年式で、手作り。コーチビルダーのマリナー・パークウォードという会社が作ったんですけど、7年間で世界で321台しか作ってない。日本で44台しかない。これはすごくいいタマですね。ベンツの500SLを売って買ったんですよ」

 またベンツ126を保有し、雨が降ったときに運転している。

オーナーの石井俊雄さん【写真:ENCOUNT編集部】
オーナーの石井俊雄さん【写真:ENCOUNT編集部】

100年基準で設計 残り30年、ガソリン車からEVに仕様変更も検討

 製造から70年近くがたつ車だ。今後はどうするのか。

 石井さんは「私はもう5年以上乗ったら息子に譲ります。ベントレー、ロールスは100年基準で作っているんですよ。100年乗れる。部品も出るから、息子に託して100年まで乗ってもらいたい。あと30年ね。そのために息子の名義になっている」

 世界的に電気自動車(EV)普及が加速。ガソリン車廃止の流れにもなっている。

 だが、石井さんは気にしていないという。

「イギリスなんかはみんなエンジンを降ろして電気化にしちゃってますよ。こういう車ごとね。二つに分かれちゃっている。もうそのままとっておいたほうがいいでしょうという人と、やっぱりガソリンがなくなったら電気だからと言って、モーターを乗せている人と」

 石井さんのベントレーもEV化が可能な車体。すでに業者からオファーが届いているという。「長野のイベントで、『ガソリンをやめたいと思ったときは、ぜひうちにやらせてください』と言われたんです。エンジン全部取っちゃって、簡単にできるらしいですよ」

 そのタイミングは息子に任せている。「ガソリンがどのぐらい高くなるかですよね。あと手に入るのかどうか。息子次第ですね」と、石井さんは結んだ。

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