令和に生まれたレトロゲーム専門フロア 秋葉原「RETRO:G」の背景にある“ゲーセン”熱狂への思い

秋葉原のゲームセンター「GiGO秋葉原3号館」の6階には、昭和から平成初期にタイムスリップしたかのような、“レトロ”な空間が広がっている。「アーケードゲーム全盛期の熱量とゲームが体感できる場所」をコンセプトとした「RETRO:G(レトロジー)」だ。株式会社GENDA GiGO Entertainment都市営業部で首都エリア エリアマネージャーを務める馬場俊輔氏に、「RETRO:G」がスタートした経緯や現在地、これからの展望について聞いた。

「RETRO:G」にはかつての“ゲーセン”を想起させる筐体が並ぶ【写真:ENCOUNT編集部】
「RETRO:G」にはかつての“ゲーセン”を想起させる筐体が並ぶ【写真:ENCOUNT編集部】

秋葉原「GiGO秋葉原3号館」6階に広がるレトロ空間

 秋葉原のゲームセンター「GiGO秋葉原3号館」の6階には、昭和から平成初期にタイムスリップしたかのような、“レトロ”な空間が広がっている。「アーケードゲーム全盛期の熱量とゲームが体感できる場所」をコンセプトとした「RETRO:G(レトロジー)」だ。株式会社GENDA GiGO Entertainment都市営業部で首都エリア エリアマネージャーを務める馬場俊輔氏に、「RETRO:G」がスタートした経緯や現在地、これからの展望について聞いた。(取材・文=片村光博)

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 秋葉原の中心にあるGiGO秋葉原3号館。その6階に足を踏み入れると、昭和から平成まで、さまざまな年代の懐かしいアーケードゲームが並ぶ。「スペース・インベーダー」のような“ザ・レトロ”なタイトルはもちろん、平成世代が熱中した「タイムクライシス」のようなシューティングゲーム、数々のドライビングゲームなど、そのバリエーションは多岐にわたる。もともとはVRゲームを設置するフロアだったが、コロナ禍でインバウンドが見込めなくなり、方向転換した経緯があるという。

「なぜレトロゲームかといいますと、秋葉原5号館にが2019年にオープンして、その4階にコンセプトのあるフロアを作ったんです。1970年代のアメリカンなテイストにして、ダーツ、レトロゲーム、ピンボールなどを用意しました。20~30代の働く男性や女性がふらっと来て楽しめるような、レトロでカッコいいコンセプトで作ってみたところ、手応えが良かったんです。そこに可能性を感じて、5号館から移してワンフロアで面積を広くしてみよう、というのがきっかけですね」

 一言でレトロと言っても、その定義は必ずしも固定されたものではない。どのようなコンセプトを軸に筐体を集めているのか。

「物理的な調達の問題もあり、例えば70年代で揃えようと思っても難しい面があります。レトロゲームをどういうコンセプトで広げていくかとなったときに、幅広い年代の方が『懐かしいね』『昔よく遊んだね』と楽しめる感じにしたいという企画になりました。大型筐体が出てゲームセンターが盛り上がった時期は80~90年代だと思いますが、特徴的な筐体が多い時期でもあります。人によっては2000年代のゲームでも『昔遊んだね』となるかもしれません。レトロとは言いつつも、アーケードゲームの歩みが体感できるようにしたいという中で調達した形になります。

 レトロという言葉も人それぞれですし、あまりすごく古いものにはこだわっておりません。蓋を開けてみて、最初はどんなお客様が来るのかと思っていましたが、コーヒー片手にインベーダーゲームを楽しむサラリーマンの方もいらっしゃれば、10代の方が『タイムクライシス2』を楽しんでいることもあります。初めて昔のゲームに触れて、楽しさを知るということもありますし、想定していたよりも幅広い年代の方に来ていただけているというのが印象です」

 特定の年代にこだわらず、さまざまな世代に少しずつ“刺さる”構成となった。ただ、やはりフロアを埋め尽くすほどの筐体を集めるのは簡単ではなく、一部の筐体はレンタル。アーケード好きが高じてレンタル事業を営んでいる業者から調達するケースも含め、ラインナップを拡充している。

 馬場氏は「特に古いものや人気のある者は市場に出てきづらく、大変ではありますね」と語る。そして調達よりも大変なのが、筐体のメンテナンスだ。古いものは当然ながらメーカーからの供給がなく、手探りでの調整になるという。

「純正の部品をメーカーが作っていないので、些細なものは近所で買ってきたりしています。モニターが壊れたらブラウン管を修理してくれる業者さんを探したりしますし、ゲームのICが壊れてしまったら修理が効きません。古いゲームですから、それなりに壊れるんですよね。だから調達の難しさよりも、圧倒的に維持する難しさがあるというのが運営の苦労になります」

RETRO:Gに込める思い「1980~90年代のゲームセンターの熱狂を取り戻したい」

 そんな苦労をしながらも1年以上の運営を続けてきた「RETRO:G」。20代のスタッフはゲームの“現役時代”を知らないものの、新旧関係ないゲームの面白さに気付くことがあるという。一方、ゲームセンターの全盛期を知る世代のスタッフは、「RETRO:G」の運営に特別な思いも抱いている。

「私のように20~30年務めている従業員が何人かいまして、そういったスタッフがゲームを選定してきました。われわれには、ゲームセンターが盛り上がっていた時代の熱狂を、コロナ禍だからこそ『また取り戻したい』という思いがあります。40代以上の方が、『よく遊んだな』と昔を思い出して没入してもらいたいという思いですね。今が盛り上がっていないとは言いませんが、かつては家庭用ゲームとの差も大きく、ゲームセンターでしか味わえない熱狂があった。それをもう1回思い出してもらえればという思いがあります。あの空気感は当時学生だったこともあり『楽しかったな』という思い出があります。同じような体験、熱狂、みんなで一つものに打ち込む、そういう思いや体験を復活させたいなという思いがありますね」

 認知度の点では折よく“昭和レトロ”という言葉が浸透し始め、「RETRO:G」は“映える”場所としてアーティストの撮影場所としても使われるようになった。かつての熱狂とは毛色が違うものの、10代の若者がレトロな場を求めてやってくることもある。

「10~20代くらいの女性、それこそ女子高生がカップヌードルを自販機で買って、古いUFOキャッチャーでお菓子を取って、映像を撮ってTikTokに流すということが目につくようになってきました。どこで知ったのかは分からないんですが、昭和レトロ、平成レトロというところから紐づいてきているんだろうなと。まだまだたくさんの方に来ていただく状況ではないんですが、認知が拡大していけば、“レトロかわいい”のような観点でのご来店も見込めるのかなという手応えがありますね」

 幅広いレトロゲームを揃えたことにより、逆に新たな潮流にも乗りつつある「RETRO:G」。今後はどのような歩みを見せるのか。

「まず1年続けられてよかったなと思っております。これを2年、3年と続けていって、ビジネス的にも軌道に乗せたいですね。それに加えて、インバウンドも含めてたくさんの方にレトロゲームの魅力に触れてほしいというのが一番です。イベント、PR含め、人の目に触れることが多くやっていきたいと思っておりますし、このフロアのいろいろな活用の仕方、発信をしていただきたいです。いわゆる昭和レトロ、平成レトロのような世間的な追い風も今はある中で、たくさんの方にこのフロアを知っていただいて、活用していただきたい。ユーザーも含めて、どんな展開があるのか探っていきたいですね。

 あとは80~90年代のゲームセンターの熱狂を取り戻したいという思いが強くありますので、今まで触れたことのないゲームに触れる機会を少しでも多く作って、『ゲームって面白いね』と言ってくれるような人を一人でも多く作りたい。それが最終的には経済合理性にもつながると思いますし、私たちの店に来ていただく理由になればいい。1年やってある程度の手応えはありますので、コツコツやっていければと思います」

 かつて“ゲーセン”の熱狂に身を置いた元・学生も、創作物の中でしか当時を知らない若者も、一度「RETRO:G」に足を運んでみてはいかがだろうか。

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