中川大志、壮絶復讐劇で初座長「僕自身のトラウマにも触れていく」 強い覚悟で挑戦

ウィリアム・シェイクスピアがダーク・ヒーローを描いた人気作「リチャード三世」をベースにした音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」が東京(11月6~30日、明治座)、福岡(12月8~12日、キャナルシティ劇場)、大阪(12月17~25日、新歌舞伎座)で開かれる。昭和の芸能界を舞台にした復讐(ふくしゅう)劇で、初座長を務める俳優の中川大志(24)は「僕自身のトラウマに触れ、自分のこととして演じたい」と情熱を傾けている。

舞台「歌妖曲~中川大志之丞変化~」の製作発表会に出席した中川大志【写真:ENCOUNT編集部】
舞台「歌妖曲~中川大志之丞変化~」の製作発表会に出席した中川大志【写真:ENCOUNT編集部】

歴史ある明治座公演に「震える」

 ウィリアム・シェイクスピアがダーク・ヒーローを描いた人気作「リチャード三世」をベースにした音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」が東京(11月6~30日、明治座)、福岡(12月8~12日、キャナルシティ劇場)、大阪(12月17~25日、新歌舞伎座)で開かれる。昭和の芸能界を舞台にした復讐(ふくしゅう)劇で、初座長を務める俳優の中川大志(24)は「僕自身のトラウマに触れ、自分のこととして演じたい」と情熱を傾けている。(取材・文=西村綾乃)

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 畠山重忠に扮(ふん)したNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で見せた壮絶な最期が話題を集めた中川。11月に幕が開ける舞台では、みにくい容姿を持つ男・鳴尾定と、人気歌手・桜木輝彦の2役を演じる。

「物語のベースとなった『リチャード三世』は英国が舞台ですが、今作は舞台を昭和の芸能界に移して作られています。昭和の時代を彩った歌謡曲は大好き。この時代の歌い手の方は、現実の世界で背負っているものも含めて、その歌を表現されていると思います。今回僕が演じる桜木もそう。光を浴びてマイクの前に立っていますが、ステージに上がるまでに彼がたどっていく時間も、音楽に乗せていきたいです」

 舞台では、戦後の芸能界に君臨する「鳴尾一族」の中で、見た目の醜さからその存在を闇に葬られた定が、闇医者の施術により絶世の美男子・桜木に変身。裏社会でのし上がろうとするチンピラや、恨みを持つ者と結託し、一族に報復しようと動き出す。

「2人とも、時代背景も含めて、なかなか自分が経験できない状況を生き抜いてきた男。定と桜木との距離感を縮めるためには、僕自身が思い出したくない過去、トラウマなどにも触れて行かなくてはいけないと考えています。大変きつい作業ですが、それが彼らについて、『自分のこととして知ること』につながる。どこまでいけば見える景色があるのか、もしかしたらこれまでにない暗いトンネルの中にいるような時間が続くかもしれませんが、役者としてはそういう負の部分も含めて利用して、役に昇華していく時間が、大変であればあるほどやりがいがあると感じます」

 本作は、NHKのコント番組「LIFE!~人生に捧げるコント~」で中川のコメディーセンスを開花させた1人で、中川も信頼を置いている倉持裕が、中川のために当て書きしたもの。

「倉持さんの作品は、今年2作拝見させていただきました。演出を受けるのは初めてです。復讐劇という大きな軸がある中で、倉持さんらしい笑いの要素がどんな風に散りばめられるのかワクワクしています。作品から受け止めるイメージは悲劇的で残酷。すごく苦しい時間も多い作品なのですが、稽古を繰り返していく中で、シリアスな部分が笑えるようになったり、その逆もあると思います。その広がりを楽しみたい」

 初座長への思いは――。

「カンパニーのみなさんと、長い間毎日顔を合わせて、稽古を繰り返して、一緒に作品を作り上げることは初めての経験。心強い先輩方ばかりなので、不安になったら、頼りたいなと思うところもあります。でも、演じる定と桜木は孤独な男なので、どこかで孤独に耐えなくてはいけないのかなと……。感じた孤独は役にも生きてくる時間と感じています。東京公演が行われる明治座は、来年4月に創業150周年を迎える歴史ある場所。休館日で誰もいない明治座で、客席に座らせていただく機会があったのですが、人がいなくても、すごいパワーを感じて、震えました。先人の方々が守ってこられた場所に、真摯(しんし)に向き合いたいです」

□中川大志(なかがわ・たいし)1998年6月14日、東京都生まれ。3歳のときに始めたジャズダンスでステージを経験。小学校4年生のときに東京・原宿でスカウトされ、2009年に俳優デビュー。11年に放送されたドラマ「家政婦のミタ」で一家の長男を演じ、注目を集めた。NHK大河ドラマ「真田丸」(16年)ドラマ「花のち晴れ~花男Next Season~」(18年)、「オールドルーキー」(22年)など話題作に出演。映画「坂道のアポロン」、「覚悟はいいかそこの女子。」(ともに18年公開)で見せた演技が評価され、「第42回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を獲得した。12月23日には映画「ブラックナイトパレード」が公開。2023年には映画「スクロール」の公開も控えている。

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