ブライダル→SP→歌舞伎町“交渉人”→ベンチャー人事…異色経歴の波瀾万丈半生

転職全盛の時代、さまざまな経歴を持ったビジネスマンも少なくない。建築業のサポートやものづくりの文化を残すメディア事業など、複合的な事業を展開する株式会社ファストコムで人事の仕事をする山口大介さんも、ブライダル事業から要人警護のSP、歌舞伎町の“交渉人”を経て現職に就いた異色の経歴の持ち主だ。数々の転職を経て、現在の仕事にたどり着いた波瀾万丈の半生を聞いた。

要人警護のSPや歌舞伎町“交渉人”など異色の経歴を持つ人事の山口大介さん
要人警護のSPや歌舞伎町“交渉人”など異色の経歴を持つ人事の山口大介さん

たまたま転職サイトで求人を見つけ、未経験からSPの道に

 転職全盛の時代、さまざまな経歴を持ったビジネスマンも少なくない。建築業のサポートやものづくりの文化を残すメディア事業など、複合的な事業を展開する株式会社ファストコムで人事の仕事をする山口大介さんも、ブライダル事業から要人警護のSP、歌舞伎町の“交渉人”を経て現職に就いた異色の経歴の持ち主だ。数々の転職を経て、現在の仕事にたどり着いた波瀾万丈の半生を聞いた。

 SPや交渉人の肩書に目がいくが、大学時代は学校の先生になりたかったという山口さん。学習塾のバイトでマネジメントに興味を持ち、新卒では神奈川県の県民共済に入社。ブライダル事業部でマネジメントについて学び、28歳のときに転職を決意した。

「SPになったのは、たまたま転職サイトでセコムグループの求人を見つけて、『人から信頼されて命を預けられる、かっこいい男になりたい! これだ!』とインスピレーションが浮かんだから。学生時代に柔道や合気道はやっていましたが、警護についてはまったく未経験のド素人。それで入社試験を受けに行きました」

 社内では通常、制服警備を3年経たのち、公募でSPになるための選抜試験を受験できるが、山口さんはいきなり「僕もSPになれますか!」と人事部長に掛け合って選抜試験を受験。研修センターで行われた1週間の試験は過酷を極めたという。

「ランニングや腕立て、腹筋など、回数が決められていなくて、これが精神的にすごくキツいんです。初日から6時間ぶっ通しで、50人いた志願者はどんどん脱落していきました。警護技法のほか、刑事訴訟法や暗殺の歴史を学ぶ座学もありましたね。最終日の実技試験では、これまで教わった刃物ではなく、拳銃や手りゅう弾など初見の襲撃方法での対処をジャッジされる。臨機応変さを見ていたんだと思います」

 当時、セコムグループに所属する連結約6万人のうち、SPになれるのはわずか50人ほど。その中でも「一軍」と呼ばれるわずか10人の精鋭に、初挑戦で選出された。現場時代にはさまざまなケースでの警護を担当したという。

「暴力団を親族に持つ依頼者から、結婚式での警護を依頼されたことがありました。新郎新婦の結婚を反対する親族から『式をぶち壊しにする』と脅されていて、警察も協力してくれない。たまたま前職でブライダルの仕事をしていたので、式場スタッフに扮(ふん)して警備にあたりました。式が始まると本当に怖い人たちが来て、とにかく大事にしないため、体を張って敷地に入れないようにガードしました。向こうもこちらの動きが素人ではないと察したようで、穏便にその場を収めることができました」

セコムグループ退社後は、歌舞伎町でトラブルを仲裁する“交渉人”に

 その後、後進を育てるインストラクターを経て、セコムグループを退社したのは36歳のとき。きっかけには、東日本大震災で親戚を亡くした経験があるという。

「皮肉ですが、警備の仕事って世の中が混乱するほど忙しくなるんです。母方の実家が石巻なんですが、自分は震災の翌日から地方勤務が入っていて手伝いに行けなかった。そこで村八分というか、あわや絶縁状態のような感じになってしまって。自分の正義の哲学に迷いが生じて、セコムの看板が重すぎて退職を決意しました」

 セコム退社後は半ば腕試しのつもりで、フリーのセキュリティーオフィサーとして六本木のクラブを営業で回るも、どこからも門前払いをくらい、立ちどころに困窮。食うや食われずやの生活を続け、歌舞伎町に流れ着いた。当時の歌舞伎町は故・石原慎太郎元都知事の浄化作戦で暴力団が一掃。クリーンになった反面、店同士のトラブルを仲介する存在がなく、武闘派のスカウトグループや半グレ集団が幅を利かせていた。

「警察を介入させると目をつけられるという理由で、トラブルは内々に解決するという店同士の暗黙のルールがあるんです。そこで思い浮かんだのがトラブルを穏便に収める『交渉人』という仕事。お金がまったくなかったので、わらをもつかむ思いで頼み込み、なんとか仕事をもらえるようになりました」

 もめ事の仲裁に留まらず、キャバクラの黒服や風俗嬢のマネジメントなどさまざまな仕事を受け持ち、暴力には訴えずに問題の解決を図った。2年ほど世間から離れた特殊な世界に身を投じ、38歳のとき、再び警備会社に転職。人事業務に携わり、会社を急成長させると、この春、建築やウェブ事業などを展開するベンチャー企業の現職に転職した。山口さんの特殊な経歴はメディア関係者の間でも話題となり、AbemaTVの人気番組「ぜにいたち」を始め、テレビ番組にも多数出演している。

「人事は自分を律し、大人しく真面目というイメージを持たれますが、今の会社はどんどん面白いことをやらせてくれる環境。これから社会人になる人たちに、サラリーマンでも自分にしかないドラマで多彩なキャリアが築けるし、こんな働き方ができるんだよと夢を見せたい思いでメディアにも出演させてもらっています」

 数々の転職を経て、たどり着いた人事という天職。唯一無二の履歴書はどんなキャリアにもかえがたい強みとなっている。

○ツイッターアカウント
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○山口大介さんのNOTE記事
https://note.com/y_daisuke/

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