サザン桑田が通った茅ヶ崎のパン店、64年の歴史に幕 早朝から行列 88歳の女性店主が涙

国民的バンド「サザンオールスターズ」の桑田佳祐(66)が中学時代に通った神奈川県茅ヶ崎市のパン店「清月」が15日、閉店した。店主の高橋ツナ子さんが88歳の誕生日を迎えた同日、64年の歴史に幕を下ろした。大勢のサザンファンや常連客が集まり、感謝の思いを伝えた。

茅ヶ崎のパン店「清月」の高橋ツナ子さんに桑田佳祐から花が贈られた【写真:ENCOUNT編集部】
茅ヶ崎のパン店「清月」の高橋ツナ子さんに桑田佳祐から花が贈られた【写真:ENCOUNT編集部】

桑田から感謝の花届く 集まったファンからは「おばちゃん、ありがとう」

 国民的バンド「サザンオールスターズ」の桑田佳祐(66)が中学時代に通った神奈川県茅ヶ崎市のパン店「清月」が15日、閉店した。店主の高橋ツナ子さんが88歳の誕生日を迎えた同日、64年の歴史に幕を下ろした。大勢のサザンファンや常連客が集まり、感謝の思いを伝えた。(取材・文=吉原知也)

 桑田の故郷・茅ヶ崎。JR茅ヶ崎駅から海へと続く「雄三通り」に構える、ツナ子さんと亡き夫の清さんが開いた地元の人気店だ。2000年8月に行われた、桑田にとっての凱旋(がいせん)コンサートであるサザンの「茅ヶ崎ライブ」で、ツナ子さんが野球部だった桑田少年の当時を語るインタビュー映像が流された。西部劇ドラマ「ローハイド」を歌っていたというエピソードが披露され、清月は多くのファンに“聖地”として知られるところとなった。

 パンはツナ子さんが前夜9時ごろから丹精を込めて仕込む。魚肉ソーセージ、トマト、レタスをはさんだ「サザン佳祐ドッグ」が名物。地元の人によると、あんドーナツも隠れた名品という。

 この日は午前6時の開店を前に、整理券は事前に用意した100枚がなくなり、100人以上が並んだ。地元客や県外のファンらが駆け付けた。開店前、ツナ子さんが店頭に姿を見せると、茅ヶ崎市観光協会の新谷雅之事務局長から花束が渡された。ツナ子さんは思わず感極まる。集まったファンからは「おばちゃん、ありがとう」の声が上がり、大きな拍手に包まれた。ツナ子さんは涙を浮かべながらピースサインを作って応えた。

 1番乗りで並んだのは、三重県津市から来た会社員の増井孝充さん(54)。前日の夜8時に店の前に到着したという。1978年にサザンが「勝手にシンドバッド」でデビューした当時からのサザンファン。清月には初めて来たといい、「お母さんにはお誕生日おめでとうございます、ご苦労様でしたという気持ちを伝えたくて。実際にお会いしたら想像以上にオーラがある方でした。最後になるのは悲しいですね」と語った。

最後の日にもツナ子さんが丹精込めて作ったおいしそうなパンが並んだ【写真:ENCOUNT編集部】
最後の日にもツナ子さんが丹精込めて作ったおいしそうなパンが並んだ【写真:ENCOUNT編集部】

 この日は、通常の倍となる314個のパンを用意。次々と売れ、約1時間半で完売。最後にツナ子さんは残っていた客やファンに、「長い間、皆さんお世話になりました。ありがとうございました」と言葉を寄せ、深々と一礼。何度も涙をぬぐった。そして、多くの人たちから愛された名店は閉店となった。7月15日は清月が開店した日でもあった。

 ツナ子さんは、桑田の優しい思いに支えられた。15年前、清さんが亡くなった際に、一時期店を休んだ。その際に桑田から「清月の灯を消さないように頑張れますか」とつづられた手紙が届いた。「2、3か月は頑張れるかなと思ったけど、こうして励ましてもらえたことで、15年間頑張ることができました」としみじみ語った。閉店を前に今回、桑田から花が届いた。「お誕生日おめでとうございます&長い間大変お疲れ様でした!!」とのメッセージが添えられており、ツナ子さんは「うれしかったです」と粋な計らいを喜んだ。店のシャッターが下り、ツナ子さんは「長い間、皆さんのおかげで頑張ることができました。無事にここまでこられましたので、本当にありがとうございました」と、万感の思いを込めた。

次のページへ (2/2) 【写真】看板メニュー「サザン佳祐ドッグ」や桑田佳祐から届いた花も…涙の閉店シーン
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