YA-MANが「強い=おもしろいではない」と断言するワケ「観客の8割は素人」
自分の試合に間違いはない――。「THE MATCH 2022」で芦澤竜誠を1R109秒の速さで沈め、破竹の6連勝中のYA-MANは試合前、こう豪語する。オープンフィンガーグローブで戦う姿はまさにけんかファイト。格闘家として観客を沸かせるYA-MANの魅力に迫った。(取材・文=島田将斗)
時代は「強い=おもしろい」ではない
自分の試合に間違いはない――。「THE MATCH 2022」で芦澤竜誠を1R109秒の速さで沈め、破竹の6連勝中のYA-MANは試合前、こう豪語する。オープンフィンガーグローブで戦う姿はまさにけんかファイト。格闘家として観客を沸かせるYA-MANの魅力に迫った。(取材・文=島田将斗)
「テクニックの見せ合いなんかしたって楽しくない」。プロキックボクサーとしてこんな発言をしてしまっていいのかと思うが、YA-MANにはそれ以上に大切にしているものがあった。
意識しているのは強さだけではなかった。「観客の8割は素人だと思います。やっぱ自分は殴り合いが好き。見てる人に楽しんでもらうってやっぱり自分が一番楽しくないとダメだと思う」とうなずく。
令和の時代、単純な“強さ”だけでは食べていけない。YA-MANは、積極的にSNSで発信を続ける。舌戦もそのひとつだ。格闘家のSNSの必要性にも言及した。
「絶対にやらないとダメっすよね。格闘家って結構強ければいいみたいな考え方の人が多くて。でも別に『お前が強いとか誰も興味ねーよ』と思います。まず見られないとお金が入らないので」
自身が発信するYouTubeでは、ファンと触れ合う姿や体を張った企画にも挑戦。等身大の姿を見せてきた。
「お客さんが何を求めているのか。やっぱりエンタメ、娯楽なんですよね。おもしろいのを見る代わりに、対価としてお金を払っているんですよね。『強い=おもしろい』って勘違いしている人もいるんですよ」と持論を展開する。
プロとアマチュアの違いについても分かりやすく説明した。
「強いのなんて当たり前で、『それをどうやっておもしろく見せるか』というのがプロ。そこがアマチュアとの違いです。そこでSNSは大事。昔と違って今は自分で発信する場所がある。自分で新聞、ラジオ、テレビができるっていうこの現代で、『なんで、それをやらないのか』みたいなのは思いますよね」
試合をする選手はみな命を懸けてリングに上がっている。格闘技はスポーツなのか、娯楽というひとことで片付けてもいいのか。
「ボクシング、レスリングも競技じゃないですか? プロレスはエンタメ。でもキックとか総合って、競技とエンタメが両立してると思ってるんすよね。エンタメがあって、でも台本はない。だから、みんなが本当に感動するし見る人も多いんです。そこを理解しないといけないっすよね」
最近ではよりエンタメに特化したイベントも行われている。朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める「Breaking Down」だ。YouTubeにアップされている試合の再生回数は700万回を超えているものもある。
大きな盛り上がりを見せているが、一方で一部から「本当に頑張っている若手格闘家にスポットを当てないでどうするのだ」というような声も寄せられている。YA-MANも“青汁王子”こと三崎優太のセコンドとして大会に関わったひとりだ。
「自分は『BreakingDown』は良いなと思っています。プロって一定の競技力が必要じゃないですか。あれは素人の方が多い。自分の人生を変える一歩を踏み出すのに良いなと思っていますね。何かのきっかけとしてはすごい良い」
口調が熱を帯びる。「オーディションを受けることが人生を変える一歩を踏み出していることなんですよね。でも、その後がどうなるのかは自分次第。格闘技を通して人生が変わるって良いですよね。ちゃんと朝倉さんがしっかり考え方をみんなに教えてるんで、そこもまたいい」。否定的な格闘家も少なくない中で、YA-MANは大会の意義を強調する
SNS時代、発言と実力が伴っていない“名前先行”格闘家も見られるようになった。「むしろ全員、名前を先行させろ」とYA-MANは語気を強め、持論を展開する。
「例えば、有名でおいしくないレストランとめちゃくちゃおいしいレストランがあるとします。おいしくない方は、お客さんが来るんで、フィードバックをもらえるんです。『もっとこうしたら、おいしかった』と。それによって、どんどん改良・改善ができるんですよ。結局、最初はおいしくなかったものが、お客さんが来ることによって質が良くなるということ」
格闘家にとって露出度は肝だということだ。「お客さんに見られないと自分が何がダメなのかって分からない。まず見られることから始めないとダメですよね。だからこそ名前先行は全然良いし、むしろそうじゃなきゃダメだなと思います」と口を酸っぱくする。
ビッグマウスにも大賛成する。「リスクを背負わないとリターンはないですから。大きくなりたいんだったら大きいリスク取らないと大きいリターンを得られないんで」とYA-MANらしい。
手に汗握る喧嘩(けんか)ファイト。鮮やかなKO劇の裏側には強さだけではない魅力もあった。“キングオブストリート”から“知能派”へ。格闘技界の未来を担うファイターになりそうだ。