映画「君たちはまだ長いトンネルの中」（6月17日公開、なるせゆうせい監督）で長編劇映画初主演を果たした加藤小夏（22）。映画は、ネットで話題になったコミック「こんなに危ない!?消費増税！」を原作に、女子高生が消費増税のウソを論破する社会派青春ストーリー。加藤は、自身が“トンネル”にいた時代を明かした。（取材・文＝平辻哲也）

　加藤は幼い時からダンスを学び、中1の時、原宿でスカウトされ、芸能界入り。高校時代はモデルとして活躍し、2018年にフジテレビ「痛快TVスカッとジャパン」の人気コーナーのヒロイン役で注目され、岡山天音主演のドラマ「I”s（アイズ）」ではヒロインの一人に抜てきされた22歳だ。

　初主演映画には「セリフががなり多いなって。知らない用語がいっぱいあって、これは闘いが始まるなぁ、と。自分の無知さに気付かされた感じです。ハッとすることばかりでしたね」。

　演じるのは、元財務省の官僚だった亡き父を持つ女子高生、高橋アサミ。授業では、消費税増税の大切さを力説する教師を論破する。やがて、同級生とともに、消費税を止めるべく行動を起こしていくが……。

「アサミちゃんは何事に対しても、自信を持ってはっきりと言える子で、自分の中に正しい知識と人生の目的を持っている。今回は社会的な内容でしたけど、それが他のことだったとしても、芯を持っている子なんだろうな。重なる部分はなかったです（笑）。すごく体力を使う役でしたね。撮影したのは去年の8月で、とても暑く、撮影初日とクランプアップの日以外の記憶がなかったです」と笑って振り返る。

　高校時代はどんな少女だったのか。「授業中、ずっと寝ていましたね。学校では1時間目から4時間目までぶっ通しで寝て、ご飯を食べてまた寝る……みたいな、睡眠に支配されていた高校生活でした。今思えば、あれは病気だったと思うんです」。

　青春時代は眠くなるもの。しかし、授業中にずっと睡魔に襲われるというのは、健康を害していたのだろう。「眠り続けた後は不眠症になってしまって、病院にも通って、睡眠のメカニズムを調べたり、早寝早起き、朝ごはんをモットーにして、克服したんです。今は健康第一を心がけています」。

　芸能活動は既に約10年にも及ぶ。「中学は義務教育なので、ちゃんと学校に行っていて、土日のどちらかは演技レッスンを受けて、オーディションが組まれるという感じでした。必ず母がついてきてくれていました。母はポップな人なので、楽しんでいたようなんですが、大変だったと思います。本当に感謝しなきゃ、親孝行しなきゃ、と思います」と話す。

　転機になったのは、2018年に桂正和のコミック原作の学園恋愛ドラマ「I”s（アイズ）」でヒロインの一人に抜てきされたこと。「あれがなければ、やめていたと思います。オーディションの最中に、これでダメなら、やめようかな、とふんわりと思っていたんです。ちょうど同級生たちは大学に行くか、どうかを悩んでいる時期だったので、私もうまくいかなかったら、芸能界をやめるしかない、と思っていました」。

　その主演・岡山天音には、大いに刺激を受けた。「天音さんは役者さんとしてずっと尊敬していて、大好きな役者さんです。人としても芯を持っていて、質問をしても、一見ふざけているように見えて、しっかりとした答えが返ってくる。私はまだまだ未熟ですけども、人に憧れられるような存在になりたいです」と決意を新たに。自身の“長いトンネル”時代を明かしながら、飛躍を誓った。

□加藤小夏（かとう・こなつ）1999年6月26日、東京都出身。2018年、フジテレビ「痛快TVスカッとジャパン」の人気コーナー「胸キュンスカッと」で地上波初出演。ヒロインを演じ、話題に。桂正和のコミック原作の連続ドラマ初出演作「I”s（アイズ）」でもヒロインの一人に抜てき。映画本格出演作「踊ってミタ」でもヒロインを務め、ドラマ「取り立て屋ハニーズ」では連続ドラマ初主演を果たすなど、多くのドラマ、映画に出演している。アパレルブランド「ForWe」をプロデュースするなど多岐に渡り活動している。趣味は読書。愛読する作家は恩田陸、町田そのこ。

ヘアメイク：原田琴実
スタイリスト：RYUSEI MORI（DEXI）