西島秀俊、ウィル・スミスのビンタ現場は「見ていなかった」 “トイレ休憩”から戻れず

第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」の凱旋会見が5日、東京・内幸町の日本プレスセンターで行われ、濱口竜介監督、主演の西島秀俊、山本晃久プロデューサーが出席した。国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の日本人の受賞は2009年、滝田洋二郎監督の「おくりびと」以来の快挙。

会見に出席した山本晃久プロデューサー、濱口竜介監督、西島秀俊(左から)【写真:ENCOUNT編集部】
会見に出席した山本晃久プロデューサー、濱口竜介監督、西島秀俊(左から)【写真:ENCOUNT編集部】

「ドライブ・マイ・カー」のオスカー受賞凱旋会見に出席

 第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」の凱旋会見が5日、東京・内幸町の日本プレスセンターで行われ、濱口竜介監督、主演の西島秀俊、山本晃久プロデューサーが出席した。国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の日本人の受賞は2009年、滝田洋二郎監督の「おくりびと」以来の快挙。

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 オスカー像を持参した濱口監督は「本当にありがたい。多くの方に受け入れられて驚いています。理由は私も分からないです。心の傷、希望まで受け入れるまでを描いたのが国境を越えていったのかも。説得力を持って、画面に定着させられたのは役者さんたちの力だと思う」。主演の西島も「僕も分かりません。世界で起こっていることが身近になっているのかもしれない。誰もが喪失感、傷ついたりしているのかな。それが希望への道筋が描かれていて、共感を呼んだのかなと思っています」と話した。

 濱口監督は、ほぼ英語であいさつした受賞式については「その場でたくさんの人にお礼を言うには英語だと思いました。村上春樹さんにもお礼を言いたかったが、言えなかった。素晴らしい通訳さんだったのに、その力を発揮させることができなかったのは申し訳なかった」と振り返った。

 作品賞、監督賞、脚色賞にもノミネートされた濱口監督は3週間、米国に滞在。「オスカーが自分の人生に関係しているとは思っていなかった。(本日の会見のように)こんな数のカメラにさらされたこともない。アカデミー賞は自分が体験したことのない世界に導いてくれるものだと思っています。(ハリウッドは)ケタ外れな世界。予算を言うと、驚かれる。スケールが違う。段階的でもスケール感を調整していかないといけない。一方、監督は個人的なものを映画にしているところは変わらないと思った」と話した。

 前日、前々日の候補者招待のディナーでは、スティーブン・スピルバーグ監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督と一緒のテーブルになった。「なんで、ここにいるんだろうと思いました。これは素晴らしいことだが、初とか、何年ぶりではなく、今後も続けていかないといけない。現在の日本映画への関心は正直いうと、ない。是枝(裕和)さん以外、そこまで注目されていないが、アジア全体に目が向いているのは分かったので、(後進の人たちも)野心を持ってやってくれれば」と期待した。

「アカデミー賞関連のニュースは恥ずかしくて見られない」ともいい、ハリウッドからのオファーがあったら、との質問には「(『ノマドランド』の)クロエ・ジャオさんからは正気でいなさい、と言われましたが、足をしっかりつけてやっていく題材があれば、やっていきたい」。

 山本氏が「面白い映画とは何かを練り上げていくのが大切。映画をもっと見た方がいい。面白い映画を作る人は映画をいっぱい見ている」というと、濱口監督も「自分も『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』や『ターミネーター2』を見て、映画はこんなにすごいのかと思った」。東京藝術大学大学院卒だが、「北野武さん、黒沢清さんに学んだ。特に黒沢清さんから直接学んだ。映画観を更新してもらった」と語った。

 映画界の今後については「大きい視野で自分が語るのは難しい。僕はアートハウス系の映画を見て育ったが、重要なのは志を持って、諦めないでやること。その先に誰もが認めるようなことがあるのではないか。正直、どこかを目指しているのではなく、よく分からず、毎回手探り。一歩一歩行った先に、思いも寄らない結果に結びついていくのかもしれない」と話した。

 一方、西島は「アカデミー賞に行くまでは緊張するだろうと思っていましたが、意外に緊張しなかった。今日の方が緊張しています。アカデミー賞は、お互いに称え合う場で、居心地がよかった。スピルバーグ監督を始め、いろんな方に会いましたが、前日にジョン・カサヴェテス(監督)のお墓参りに行ったときが驚くくらい心が動きました」と振り返った。撮影にあたっては、カサヴェテス監督、ロベール・ブレッソン監督の作品を見て、役に臨んだそうで、感慨深かったようだ。

 式典ではウィル・スミスが妻に対して侮辱的なジョークを口にしたプレゼンターのクリス・ロックに平手打ちを食らわせるハプニングもあったが、西島は「たまたま、チームでトイレに行って、見逃しました。まったく知らずに、日本に帰ってきて、後から知ったので、みなさんと同じような状況です」と話した。

 同映画は村上春樹の短編小説を原作に、妻(霧島れいか)を失った演出家の家福(西島)が専属ドライバーみさき(三浦透子)との出会いなどを通して、乗り越えていく姿を描く物語。すでにブルーレイ&DVDが発売中だが、全国の映画館でもロングラン公開中だ。興収10億円、82万人を突破した。

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