日本プロレス界の「未来」を背負う逸材がトンネルから脱出か【連載vol.20】

「苦しみ抜いたこの1年を、大逆転で終えたい」。日本プロレス界の「未来」竹下幸之介が2020年の大どんでん返しを誓った。

思い悩む日々から脱出を誓う竹下幸之介【写真:柴田惣一】
思い悩む日々から脱出を誓う竹下幸之介【写真:柴田惣一】

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「苦しみ抜いたこの1年を、大逆転で終えたい」。日本プロレス界の「未来」竹下幸之介が2020年の大どんでん返しを誓った。

 11・3東京・大田区大会で「王道からきた刺客」秋山準に敗れ、プロレス大賞・三賞受賞でもDDTのライバル・遠藤哲哉(技能賞獲得)に先を越された。今年は「考えることばかり。苦しかった」と声を絞り出した。

 2012年のデビュー以来、プロレスを楽しんできた男がジレンマに陥っている。DDTのKO-D無差別級王座を4度も戴冠し、同王座11度連続防衛の最多記録も保持。「若きエース」の称号を文字通り、わが物としてきた。

 ところが、秋山戦の敗北でその自信も自負も、もろくも崩れ去った。「僕のやってきたことは正しかったのか」と、うつむく日々だった。

 秋山へのリベンジの機会は、思いのほか早くやってきた。D王GPリーグ戦で、竹下はAブロックを勝ち上がり、秋山がBブロックで勝ち残った。2人は12・27東京・後楽園ホール大会の優勝決定戦で対戦する。

 ただし、秋山の上から目線は、ますます急角度になっている。竹下の「正直、大田区大会からのこの1か月半ぐらいで、答えが見つかるような簡単なことじゃない」という言葉に「変わってないな。今の精神状態では俺に勝てない。もっと開き直らなくちゃな。やってきたことが正しいか、どうか、なんて俺にも分からない。ただ、俺は自分のやってきたことは、全部正しい、と思っている」と自信満々に反論。全日本プロレス、ノア、そして全日本プロレスへのUターンからのDDT参戦という道を「正しかった」と言い切る。

 酸いも甘いもあった28年のレスラー人生に絶対の確信を持つ秋山にしてみれば、竹下の苦悩は「若造のちんけな悩み」ということなのだろう。

 世界中の先人たちや現在進行形のファイト映像を常にチェックするプロレスマニアの竹下が、秋山戦敗戦後は「ほとんど見てない」という。自分のたどってきた道に、プロレスに、思い悩む日々で、暗いトンネルに突入してしまった。

 とはいえ、一筋の光明もある。D王GPリーグ戦を、悩みながらも生き残ったのだ。MAO戦で、空中弾を失敗したMAOに付け込んで逆転勝利をゲット。「あの白星が大きかった」と振り返る。

 自分だけではなく秋山も決勝戦に進出してきた。「運だけはまだある」と、やっと竹下の目に光が戻ってきた。心配なのは、負傷中の左腕だが「狙ってくるのは分かっているので、逆に、裏をかく戦略をたてられる。しかも、このまま順調にいけば、12・27までに100%に戻る」と、笑みまで浮かんできた。

 勝利が唯一絶対の特効薬。勝てば正義。歩んできた「プロレスの道」への悩みは一気に吹っ飛び、自信を取り戻せる。

 D王GPに優勝すれば、来年2・14神奈川・カルッツかわさき大会で、KO―D無差別級王者・遠藤に挑戦できる。「三賞で先にいかれたので、僕はMVPしかない」と、ベルト奪還はもちろん、2021年のプロレス大賞MVP取り宣言まで飛び出した。

 地獄の底でもがきながらも、秋山へのリベンジのチャンスをD王GP決勝戦という最高の舞台で勝ち取った竹下。苦悩の今年から栄光の来年へ。苦悩の中でも「未来」を、しっかりと見据えていた。

次のページへ (2/2) 【写真】秋山準に見下されている竹下幸之介
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