女性だけの車イベント「もう来年はやらない」 疲れ果てスープラで爆睡…決意を変えた“免許のない少女”の一言
2017年よりスタートしたクルマ女子の祭典「ガールズカーコレクション」(GCC)が今年で10回目の開催を迎える。女性ドライバーがドレスアップした姿で愛車に乗り、レッドカーペットのランウェイを走るのが見どころだ。参加者を女性ドライバーに限定した車イベントが10回も続くというのは珍しい。主催しているのは、1995年式のトヨタ・スープラに乗るNAOさん。ここまでの歩みと、紆余曲折を聞いた。

ガールズカーコレクションが第10回開催 主催者が明かす秘話
2017年よりスタートしたクルマ女子の祭典「ガールズカーコレクション」(GCC)が今年で10回目の開催を迎える。女性ドライバーがドレスアップした姿で愛車に乗り、レッドカーペットのランウェイを走るのが見どころだ。参加者を女性ドライバーに限定した車イベントが10回も続くというのは珍しい。主催しているのは、1995年式のトヨタ・スープラに乗るNAOさん。ここまでの歩みと、紆余曲折を聞いた。
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11月8日に開催される第10回GCC。今年は恒例だった東京・秋葉原のUDXが改装中のため、会場をアイメッセ山梨に移して行われる。軽自動車からアメ車、スポーツカー、ワンボックスまで、多彩な愛車が集結する予定だ。
今でこそ10回目を迎える恒例イベントとなったが、NAOさんは第1回の終了直後、二度と開催しないつもりだったという。
「本当に手探りでした。自分のやりたいことを詰め込みすぎて、何日も寝ずに準備をしていたんです。当日も全力で動き回って、終わったときは『やり切った!』という気持ちでした」
ところが、帰ろうと愛車のスープラに乗り込んだ直後、思いもよらないことが起きた。
「エンジンをかけて、『さあ帰ろう』と思ったら、そのまま寝ちゃったんです。UDXの駐車場で2、3時間も爆睡してしまって。気づいたら夜中の2時半くらい。『あれ、帰るはずだったのに、私はどこにいるんだろう』って(笑)」
達成感と、安堵(あんど)の気持ちが交錯していた。
「イベントってこんなに大変なんだと思いました。もう来年はやらない。第1回が終わった時は、本当にそう思っていたんです」
しかし、開催後に寄せられた思いがけない言葉が、その決意を揺るがした。
「参加者の方から『来年も楽しみにしています』『次はいつですか』というメールをいただいたんです。全く知らない女の子から声をかけられることもありました」
中でも忘れられないのが、まだ運転免許を持っていない少女からの言葉だった。
「このイベントに出るために免許を取ろうと頑張っています。それまで続けてください」
その一言に背中を押され、翌年も開催することを決めた。
「すごくうれしかったですね。車離れと言われる中で、少しでも車に興味を持ってくれる女の子が増えたらいいなと思って始めたので。じゃあ、できるところまで続けてみようかなって」

車の維持に3~4つの仕事を掛け持ち「寝る間も惜しんで働いた」
そもそもGCCは、女性のクルマ好きが主役になれる場所を作りたいという思いから生まれた。
NAOさん自身、10代の頃から車に夢中だった。愛車のスープラを維持するため、若い頃には仕事を3~4つ掛け持ちしたこともある。
「車の修理にはお金がかかります。でも、(女性は)車だけじゃなくて、美容室にも行きたいし、ネイルもしたい。洋服や化粧品も欲しいじゃないですか。若い頃は寝る間も惜しんで働いていました」
同じように車への情熱を注ぐ女性たちに、特別な舞台を用意したかった。
「車のイベントって、どうしても男性が中心になることが多いんです。でも、クルマ女子だってすごく頑張っている。そんな女の子たちがスポットライトを浴びる場所があってもいいんじゃないかと思ったんです」
その思いを形にしたのが、ドレスアップした女性たちが愛車で走るレッドカーペットのランウェイだ。
「好きな服を着て、きれいにして、愛車と一緒にお披露目ができる。そんな場所があったら最高じゃないですか。一人ひとりが主役になれるイベントにしたかったんです」
GCCは女性限定というコンセプトを貫いている。一般見学は受け付けず、男性の同伴も家族や交際相手に限っている。
男性も参加できるイベントにしようと考えたことはないのか。そう尋ねると、NAOさんは即答した。
「1ミリもないです」
「男性から『メンズカーコレクションもやってよ』と言われることはあります。でも、男性が中心の車イベントはたくさんあるじゃないですか。女性だけのイベントは逆にほとんどない。だからこそ、女子だけの場所を大切にしたいんです」
こうして回を重ねてきたが、決して順風満帆だったわけではない。
「毎年、閉会式では『来年やるか分かりません』と言っていました。毎回、本気で向き合って、持っているものを全部出し切るので、終わると『もう来年はこの気持ちを維持できないかもしれない』って弱気になってしまうんですよ」
10年という年月の中では、仕事が変わり、父親や祖母、愛犬との別れも経験した。
「10年って本当に長いですよね。いろいろなことがありました。自分の気持ちだけでは、ここまで続けられなかったと思います」

「すごく高いイベントですね」 参加費を巡る葛藤と意識の変化
参加者だけでなく、協賛企業や出展企業の存在も支えになった。
「『女性だけのイベントが続いていることが他にはないっていうところも魅力の一つだよ』『始めたからには続けることが大事だよ』と言っていただいて。そういう言葉がすごく心に響きました」
当日の運営を担うのは、わずか5人ほどのボランティアスタッフだ。交通整理は、特に気が抜けない。
「本当に過酷だと思います。休憩もほとんど取れないし、人数も少ない。それでも私が全てを見られないことを分かって、率先して動いてくれる。特にランウェイは、スタッフがいなければ絶対にできません。感謝しかないです」
10回目の開催で、悩んだのは、会場だ。
「一番は会場なんです。これまでは秋葉原UDXという、駅前で、きれいで、食事ができる場所もある、本当にいい会場で開催できていました。でも、今回は改装中で使えない。まず『場所をどうしよう』と思いました」
課題は他にもあった。会場費や設営、バックパネルの制作などを含めると、1回のイベントにかかる費用は約80万円。参加費だけでは賄いきれず、NAOさん自身が不足分を負担することもある。
そこに追い打ちをかけるのが最近の物価高だ。
「今はいろいろなものが値上がりしていますよね。資材も郵便代もコピー代も高くなっている。今回は特に、開催することの大変さを実感しています」。長年続けてきたからこそ、以前とは違う難しさを感じている。
かつて、初参加の女性から「すごく高いイベントですね」と言われたことがあった。
「私としては、できるだけ安く設定しているつもりでした。自分もお金がなかった時期があるので、高くしたら参加できない女の子もいると思っていたんです」
その経験は、今ではNAOさんの原動力になっている。
「だったら、もっといいイベントにしようと思ったんです。参加費以上のものを返せれば、そんなことを言われずに済むのかなって。1日を過ごして『楽しかった』『笑顔になれた』と思ってもらいたい。それはずっと心がけています」

「絶対続けてください」10回目の節目、寄せられたメッセージに涙
今回、10回目のエントリーを受け付ける中で、再び心を動かされる出来事があった。
参加申し込みフォームに設けた自由記入欄に、思いがけないほど多くのメッセージが寄せられたのだ。
「『絶対続けてください。こういうイベントは他にありません』『唯一私が参加してるイベントです』。そういう言葉がたくさん書いてあったんです」
中には、年に一度、自分も愛車も気合を入れて参加する特別な日だと伝えてくれた女性もいた。
「それを読んだらもう泣いちゃったんですけど(笑)」
初開催の後には、もう二度とやらないつもりだった。それでも、女性ドライバーたちの思いに支えられ、10回目までたどり着いた。
NAOさんは今、イベントの形を模索しながら、次の一歩を考えている。
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