「いつ死んでもいい」絶望の淵から音楽開始→『ワンピース』ED主題歌 オレンジ髪ボーカル・Chi-の奇跡
鮮やかなオレンジ色の髪が、ステージ上で激しく躍動する。ボーカル・Chi-(チー)のソロユニットであるカメレオン・ライム・ウーピーパイは、Chi-と「仲間」のWhoopies(ウーピーズ)1号、2号の3人のみで、楽曲制作からミュージックビデオ(MV)の撮影、編集、アートワークなどの全クリエイティブを完結させている。2019年末のデビュー曲『Dear Idiot』がバズり、米国の世界的フェス「SXSW」に2年連続出演。昨年は、『PUNKS』が、フジテレビ系アニメ『ONE PIECE』(エッグヘッド編)のエンディング主題歌に抜てきされた。サクセスへの道を歩む3人だが、そこに至るまでは「絶望の淵」にいたChi-の衝動からの奇跡的な展開があった。

結成10年、カメレオン・ライム・ウーピーパイの歩み
鮮やかなオレンジ色の髪が、ステージ上で激しく躍動する。ボーカル・Chi-(チー)のソロユニットであるカメレオン・ライム・ウーピーパイは、Chi-と「仲間」のWhoopies(ウーピーズ)1号、2号の3人のみで、楽曲制作からミュージックビデオ(MV)の撮影、編集、アートワークなどの全クリエイティブを完結させている。2019年末のデビュー曲『Dear Idiot』がバズり、米国の世界的フェス「SXSW」に2年連続出演。昨年は、『PUNKS』が、フジテレビ系アニメ『ONE PIECE』(エッグヘッド編)のエンディング主題歌に抜てきされた。サクセスへの道を歩む3人だが、そこに至るまでは「絶望の淵」にいたChi-の衝動からの奇跡的な展開があった。(取材・文=柳田通斉)
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大阪で生まれ育ったChi-は、木登りが大好きな活発な少女だった。中学時代はバスケットボールに打ち込んだが、極端な勉強嫌い。授業中、ノートに文字を書かずにひたすらペンギンの絵を描き、親や教師を困惑させた。我が道をいく性格だったが、その心の内は常に荒んでいた。
「家庭環境があまり良くなくて、心はめちゃくちゃすさんでいました。学校には通えていたけれど、家は本当に良くなかった。自分が存在していることで迷惑をかけているんじゃないか。そんな思いを抱えながら、ギリギリの精神状態で耐えていました」
高校時代はダンス部に所属。留年ギリギリで卒業して短大へ進んだが、限界はすぐに訪れた。「このままでいいのか」。入学から3か月後、大きな決断を下した。
「人生の最後に好きなことをやろう。いつ死んでもいいくらいの気持ちで、最後に好きな音楽をやってみよう」
音楽経験はなかった。楽器も弾けなければ、曲の作り方も分からない。それでも、生きる意味を見出すための衝動だけが、自身を突き動かした。アコースティックギターを買い、コードを3つだけ覚えた。見よう見まねで曲らしきものを作り、ネットにアップ。東京のオーディションライブを見つけ、ステージにも立っていた。
「詞で『悲しみ全部 食べてあげよう』と書いた曲を偶然、Whoopies1号・2号が聴いてくれました。ライブに来てくれて、その場で『一緒にやろう』と誘ってくれたんです。楽曲制作をしていた彼らも、歌ってくれる人を探していて、私も『トラックメーカーがいたらいいな』と思っていました。お互い求めているものがマッチした感じです。音楽を始めて2か月くらいのことでした」
すぐに上京した。親には「応援も否定もしないで。私は出て行くので」と告げ、突き進んだ。
「『ワーキングホリデーに行こう』と思って高校時代からバイトで貯めていたお金を握りしめて、家出同然で上京しました。Whoopiesの存在は大きかったですね。本当に出会えて良かったです。ただ、最初の1年は1人でなりふり構わず、恥をかこうと決めて嫌なことや恥ずかしいことがあっても気にせず活動していました。ぐちゃぐちゃのままライブハウスに出たり、練習している感覚で路上ライブをしていたので、どんなことにも動じない度胸がついたと思います」
路上ライブ場所は、渋谷のセンター街やスクランブル交差点、銀座にも足を運んだ。
「最初は曲にもなっていないようなものを無理やり歌っていました。ギターを弾いてトラックを流して、うるさくしすぎて警察に怒られては逃げるの繰り返し。それでも、『毎日やる』と決めて、本当に毎日路上に立ち続けました。Whoopiesがめちゃくちゃ実力あると思っていたので、『私が対等に話すには、行動をして見せなきゃ』との思いでした。貯金がなくなってからは、アルバイトもしました。当時の髪は青色で、飲食店で深夜におにぎりを握ったり、幕張メッセの設営とか、人目につかない仕事ばかりしていました」

コロナ禍で突き動かされて
Whoopiesの2人が楽曲を作り、Chi-が路上でそれを試すスタイル。3年の月日がたち、「じゃあ、オリジナル曲をリリースしてライブハウスに出よう」と決意した矢先、世はコロナ禍に入った。表現の場を絶たれた逆境が、3人を突き動かした。
「路上もライブハウスもダメなら、ネットで配信するしかない」
すると、2019年12月にリリースした初シングル『Dear Idiot』が、瞬く間に公式プレイリストにピックアップされた。プロモーションを一切していないにもかかわらず、半年で100万回再生を突破した。そこからは破竹の勢いで、Spotifyの新人サポートプログラムに選出され、ニューヨーク・タイムズスクエアの巨大スクリーンにビジュアルが掲出された。
「リリースのタイミングで3人になりました。元々は私とバックDJでしたが、そのDJの方が途中から来なくなって『ヤバい』と。それで、マネジャーさんが『じゃあ、3人でやるのがいいんじゃない』と言ってくれました」
その頃、美容師に「この色がいいですよ。一番維持もしやすいし(笑)」と勧められ、髪色はオレンジに定着。Chi-のアイデアに基づいた楽曲制作だけでなく、古着をアレンジした衣装、カメラ、編集ソフトなどの機材を買い、MVをYouTubeに公開する手法も3人で覚えていった。
「全員内弁慶なんです。3人が仲良くなるまでも本当に3年くらいかかりました(笑)。でも、それからは何でも言い合えるようになって、きょうだいみたいな感じです」
ステージでは、録音したトラックにWhoopiesの2人による生演奏を加え、Chi-が歌唱している。パンクロック、ポップス、エレクトロ、HIP HOPの要素も入った楽曲たちだ。その情報が海外の早耳リスナーや気鋭のアーティストたちの耳に入り、国境を越えたラブコールが殺到。Uber EatsやたまごっちのCMソング、ドラマのエンディングテーマなど、数々のタイアップを勝ち取っていった。
25年には、『ONE PIECE』エッグヘッド編のエンディング主題歌『PUNKS』を担当することが決定。『ONE PIECE』とコラボレーションした自作の狂騒的なリリックビデオも話題を呼んだ。
「昔は自分のネガティブな感情ばかりを歌っていましたが、今は違います。ネガティブからポジティブに変わる瞬間を書きたい。どん底の思いから、最後には『やってみよう』と立ち上がる。そういう歌詞を書き続けています」

ドイツで感じた「届いてる」
今年9月には、ドイツ・ハンブルクで開催された欧州最大級のクラブフェスティバル「Reeperbahn Festival 2026」に出演した。
「めちゃくちゃお客さんが来てくれて、最前列の人たちが明らかに曲を知ってくれていました。日本語の歌詞なのに一緒に歌ってくれてて『届いてるんだな』と思いました。『ONE PIECE』のエンディング主題歌(『PUNKS』)の効果もデカいです」
来年1月23日に大阪・梅田Shangri-La、同30日に東京・Spotify O-WESTでワンマンライブを開催することも決まった。だが、どんなに活動の場が広がってどれだけステージが大きくなっても3人で完結させるスタイルは変わらない。
「これからは日本のフェスはもちろん、ワールドツアーを絶対にやりたいです。どこにでも届く時代だからこそ、世界中の人に私たちの音楽を聴いてほしいんです」
「人生の最後」にしようと思った音楽が、人生そのものになった。オレンジ色の髪を揺らしながら、Chi-は「世界のど真ん中」へ向かって己の生きざまを歌い叫ぶ。
□カメレオン・ライム・ウーピーパイ オレンジの髪が特徴的なChi-によるソロユニット。2016年11月、Chi-とWhoopies1号・2号が出会い、活動を開始。19年12月に初のシングル『Dear Idiot』をリリース。21年にSpotifyの「RADAR:Early Noise 2021」に選出されると、22年には「SUMMER SONIC」に出演。23年、24年と2年連続で米国の世界最大級複合フェス「SXSW」に出演し、米・英の音楽メディアでベストアクトに選出。国内外のクリエイターとのコラボレーションも積極的に行い、23年5月に初アルバム『Orange』、25年4月に2枚目アルバム『Whoop It Up』をリリース。同年5月には、英国で開催されたフェス「The Great Escape」にも出演を果たした。
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