高評価のフルリメイク『空の軌跡 the 2nd』 幅広い層に受け入れられた“進化と継承”のバランス
日本ファルコムの新作『空の軌跡 the 2nd』が、9月17日に発売された。本作は、2006年に発売された『英雄伝説 空の軌跡 SC』(以下、空の軌跡SC)のフルリメイク作品であり、『英雄伝説 空の軌跡 FC』(以下、空の軌跡FC)をリメイクした『空の軌跡 the 1st』の続編にあたる。

Steamで「圧倒的に好評」を獲得したフルリメイク
日本ファルコムの新作『空の軌跡 the 2nd』が、9月17日に発売された。本作は、2006年に発売された『英雄伝説 空の軌跡 SC』(以下、空の軌跡SC)のフルリメイク作品であり、『英雄伝説 空の軌跡 FC』(以下、空の軌跡FC)をリメイクした『空の軌跡 the 1st』の続編にあたる。
※本稿ではストーリーの立ち位置上、『空の軌跡 the 1st』のネタバレを含みます。
『空の軌跡』は日本ファルコムを代表するRPG「軌跡」シリーズの第1作として2004年にスタートした作品で、ゼムリア大陸西部に位置するリベール王国を舞台に、遊撃士を目指す少女エステル・ブライトと、義弟ヨシュア・ブライトの旅を描いた。「遊撃士」は各地のトラブル解決や魔獣退治、調査などを請け負う民間組織で、エステルとヨシュアも遊撃士としてさまざまな依頼をこなしながら、リベール各地で発生した事件に関わっていく。『空の軌跡FC』では、準遊撃士としての活動を始めたばかりの2人が各地を巡り、さまざまな人物と出会いながら正遊撃士を目指して成長していく姿が描かれた。

『空の軌跡SC』は『空の軌跡FC』から地続きのストーリーで、前作終盤の出来事を経てエステルが姿を消したヨシュアを追う物語だ。さらにリベール王国を揺るがす巨大な陰謀や、「身喰らう蛇」と呼ばれる謎の結社にまつわる事件に巻き込まれ、『空の軌跡FC』で出会った仲間たちと一緒に解決へと動いていく。前作から続くキャラクター同士の関係性を描きつつ、リベール全土を舞台にしたスケールアップしたシナリオが『空の軌跡SC』の特徴だ。またメインストーリーだけではなく、街の人々との会話やサブクエストまでを含めてリベールという一つの国を描き込んでいた点も、原作を支える魅力のひとつだった。
今回、『空の軌跡SC』リリースから約20年後となる2026年に、作品を現代向けに作り直したのが『空の軌跡 the 2nd』だ。発売後の評価として記事執筆時点では、Steamのユーザーレビューが「圧倒的に好評」(96%が高評価)で、MetacriticもPC版92点、PS5版91点、Nintendo Switch 2版87点というスコアを記録。高い評価を得ている本作が原作から何を変え、何を残したのか。『空の軌跡 the 2nd』の魅力と『空の軌跡SC』との違いを中心に、原作からどのような部分が進化したのかに触れていきたい。
原作譲りのコマンドバトルとリアルタイムアクションが融合
『空の軌跡SC』から大きく変わった部分のひとつがバトルだ。原作ではフィールド上で敵と接触すると戦闘画面へ移行し、敵味方の行動順を確認しながら、キャラクターの位置や攻撃範囲、行動のタイミングを考えて戦う、小規模シミュレーションRPGのような「アクティブタイムバトル」が展開された。

一方、『空の軌跡 the 2nd』では、前作『空の軌跡 the 1st』から導入された「クイックバトル」と「コマンドバトル」が引き続き採用。クイックバトルではフィールド上で敵を直接攻撃したり、攻撃を回避したりしながら戦えるため、敵との戦闘をスムーズかつ素早く終わらせられるのが特徴だ。
さらに本作から、クイックバトル中にブレイブゲージを消費して発動する連携攻撃「ブレイブラッシュ」が追加された。操作キャラクターと仲間が連携して広範囲を攻撃できるため、特に複数の敵を相手にするときに便利だ。前作から続くクイックバトルに新たな攻撃手段を加えることで、フィールド上の戦闘でも状況に応じた判断が生まれ、クイックバトルがコマンドバトルのオマケではなく戦闘における両輪として機能していた。

一方で、「軌跡」シリーズらしいコマンドバトルの重要度が下がったわけではない。クイックバトルとコマンドバトルは随時切り替えられ、強敵との戦いでは従来と同じく敵味方の行動順や位置取りが重要。クラフト(スキル)やアーツ(魔法)を使い分けながら戦略的に戦うことになる。また、クラフトやSクラフト(必殺技)の演出も3Dモデルによるモーションやカメラワークを使った表現へと進化していた。原作のようにすべての敵とコマンドバトルを行うのではなく、相手や状況に応じて戦い方を選べるようになったことで、探索と戦闘のテンポが大きく変化したと言えよう。

釣りや攻撃料理、カジノなど原作の遊びを現代化
『空の軌跡SC』からの進化を考える際には、バトルだけでなく本編の合間に楽しめる寄り道要素にも触れたい。『空の軌跡 the 2nd』では釣りやカジノ、失敗した料理を敵へ投げつけてダメージを与えられる「攻撃料理」が『空の軌跡 the 1st』から追加。いずれも『空の軌跡SC』から存在する要素で、メインストーリーだけを追うのではなく、レシピを集めたり、釣りをしたりしながらリベールを巡る遊びに繋がっており、リメイクではリッチな演出とともに復活した。

また、リメイク版では寄り道を含めたゲーム進行自体が遊びやすく進化。移動については、一度訪れた場所へ瞬時に戻れるファストトラベルが用意されたほか、ハイスピードモードによってゲームの進行速度を上げられるようになった。
ストーリーを優先したいときは移動を短縮し、サブクエストやフィールドを見て回りたいときはじっくり進めるといった使い分けができるため、リベールを巡る構造を残しながら、プレイヤーが時間の使い方を選べるようになっている。

さらに『空の軌跡SC』のサブクエストに加えて、新規のクエストやイベントも増加。メインストーリーだけではスポットが当たりにくかったキャラクターを掘り下げたり、本編だけでは描かれなかった部分を補足したりする内容で、原作を知っているプレイヤーにとっても新たに楽しめる要素となっているのが嬉しい。
『空の軌跡 the 1st』とは異なる「リベールを旅する」感覚
『空の軌跡FC』と『空の軌跡SC』では、同じリベール王国を舞台にしていても、旅の感覚は異なる。『空の軌跡FC』では、エステルとヨシュアが準遊撃士として各地を巡り、ロレント、ボース、ルーアン、ツァイス、グランセルと旅を重ねながら人々と出会い、事件に関わっていく。物語の進行に合わせて訪れる場所が変わっていくため、2人と一緒にリベールを知っていく構成だった。

対して『空の軌跡SC』では、失踪したヨシュアの行方を追い、すでに知っているリベールをもう一度巡ることになる。前作で訪れた街や街道を再び歩く場面も多いが、エステルの目的は前作とは異なり、ヨシュアを探しながら結社の陰謀を追っていく。さらに前作で出会った仲間たちも、それぞれの立場から事件に関わるため、同じ土地を訪れても前作とは違った出来事が描かれるのが特徴だ。
新しい土地を巡りながら世界を知っていく『空の軌跡FC』に対して、知っている土地を再び訪れることでヨシュアの不在を際立たせ、物語を広げていくのが『空の軌跡SC』だ。リメイクの『空の軌跡 the 2nd』も、同様の構造を引き継いでおり、『空の軌跡 the 1st』から続けてプレイすると、前作で訪れた街やフィールドを再び目にすることになる。
こうした構造を踏まえると、『空の軌跡 the 2nd』で印象的なのが、リベール王国自体の描かれ方だ。『空の軌跡SC』では2Dで表現されていた街やフィールドがフル3Dで再構築され、建物や自然、街道などを立体的な空間として捉えられるようになった。本作ではかつて訪れた場所を再び歩くことになるため、知っている土地が新しい姿で描かれていること自体が、原作との違いを実感させる要素になっている。
さらに、キャラクター同士の会話も3Dモデルによるモーションやカメラワーク、ボイスなどを組み合わせた演出へと変化。原作ではドット絵と立ち絵を中心に描かれていたシーンも、キャラクターが驚いたときに表情を変えたり、相手へ視線を向けたり、会話に合わせて身体を動かしたりすることで、文章から想像していた感情の動きが映像として表現される。特に『空の軌跡SC』はエステルとヨシュアを中心としたキャラクター同士の関係性や感情の変化を描く場面が多いため、表情や声、仕草が加わったことによる違いは大きかった。

これはストーリーそのものを大きく変更するものではない。だが、原作プレイヤーにとっては「この場面がこういう演出になるのか」という新しい発見になり、初めてプレイする人にとっては、キャラクター同士の関係や感情を映像やボイスから読み取れるようになった。『空の軌跡SC』が描いてきた物語を別の切り口で見せることで、同じ出来事でも原作とは異なる印象を受けられるようになっていた。
『空の軌跡 the 2nd』と『空の軌跡SC』を比較すると、グラフィックやイベント演出、バトル、移動、寄り道要素など、ゲームの大部分が総じて現代向けに遊びやすく作り直されているのが魅力だ。一方で、リベールを舞台にエステルとヨシュアを中心とした物語を描き、遊撃士として依頼をこなしながら各地を巡るという作品の骨格は受け継がれている。
原作を知っているプレイヤーにとっては、馴染みのある街や出来事がどのような姿で描き直されたのかを確かめながら遊べる作品であり、初めて触れる人にとっては、『空の軌跡SC』が持っていた物語や世界観を現代のゲームとして体験できる作品になっている。約20年前の作品を再現するだけではなく、システムや表現を現代化しながら、エステルとヨシュアの旅、そしてリベールという舞台を描く『空の軌跡SC』の軸を残していることが、『空の軌跡 the 2nd』というリメイクの大きな特徴だ。
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