高尾山でクマ出没…“最終防衛ライン”八王子の取り組みは? 「ここで食い止めなければ…」市長が語る覚悟

東京・八王子市の高尾山で、ツキノワグマが出没したとの情報が16日、同市から発表された。シルバーウイーク目前の公表に観光への影響も懸念されるが、八王子市ではこれまでどのようなクマ対策を講じてきたのか。ENCOUNTでは今月10日、クマ対策の一環として昨秋に狩猟免許取得を宣言していた初宿和夫(しやけ・かずお)市長を単独インタビュー。八王子市を都におけるクマ対策の「最終防衛ライン」と位置づける初宿市長に、情報発信の重要性と風評被害への本音を聞いた。

ENCOUNTの単独インタビューに応じた八王子市の初宿和夫市長【写真:ENCOUNT編集部】
ENCOUNTの単独インタビューに応じた八王子市の初宿和夫市長【写真:ENCOUNT編集部】

昨秋にはクマ対策の一環として狩猟免許取得を宣言

 東京・八王子市の高尾山で、ツキノワグマが出没したとの情報が16日、同市から発表された。シルバーウイーク目前の公表に観光への影響も懸念されるが、八王子市ではこれまでどのようなクマ対策を講じてきたのか。ENCOUNTでは今月10日、クマ対策の一環として昨秋に狩猟免許取得を宣言していた初宿和夫(しやけ・かずお)市長を単独インタビュー。八王子市を都におけるクマ対策の「最終防衛ライン」と位置づける初宿市長に、情報発信の重要性と風評被害への本音を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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 八王子市によると、高尾山でツキノワグマの出没が確認されたのは8月20日午後11時ごろ。動物観察用に設置されていたカメラにクマが映っているのを都が確認、同市に情報提供したという。都が運営するツキノワグマ目撃等情報マップ「TOKYOくまっぷ」によると、記録が残る2023年以降、都内で目撃されたクマと思われる動物の情報は1112件(9月14日時点)。年間およそ300万人の登山客が訪れ、世界一登山者が多い山としてギネスブックに認定されている高尾山でも、多くの目撃情報が寄せられている。

 八王子市も全力でクマ対策に取り組んでいる。海上自衛隊出身の初宿市長は、昨年11月、クマ問題を巡り「元海上自衛隊自衛官としての経験を生かしたい」と狩猟免許取得を宣言、大きな話題を呼んだ。あれからまもなく1年。初宿市長は取材に「実は、まだ取得できていないんです」と現在の状況を正直に明かす。

「昨年の大量出没の際、高市早苗首相が緊急策として、『警察や自衛隊OBへの協力を要請する』と言及したことから、元海上自衛隊自衛官として『何か行動しなくては』という思いで、その日のうちに猟友会の講習会を申し込みました。ただ、恥ずかしながら東京都の免許制度について、よく分かっていなかった。昨年度はすでに試験の申し込みが終わっており、今年の受験を予定しています。うまくいけば今年度中に(狩猟免許試験に)合格できればと思っています」

 海上自衛隊時代には、ライフル銃の扱いは必須。分解整備や射撃訓練も行っていたという。今後、市長自ら、銃を持って駆除の最前線に立つことは考えているのか。

「制度上、狩猟免許と銃の所持許可はまったく別です。最初は、銃の所持許可を取ればすぐに緊急対応ができると誤解していましたが、そう甘くはなく、実際にはライフルの所持まで10年かかります。現状は自衛官OBがクマ対応を行うのは難しく、非常にもどかしい思いですが、私の主眼はあくまで獣害対策。まずは銃ではなく狩猟免許を取ろうと考えています。狩猟への理解を深めることは今後の政策を考えていく上でもプラスになりますから。ゆくゆくは公務の合間を縫って銃の所持に向けた警察の講習も受講できればと思っていますが、スケジュールの都合もあり、なかなか難しいというのが正直なところです」

 八王子市が置かれた地理的状況から、初宿市長は、クマ問題に対する強い危機感を口にする。

「クマの生息地域と人の住む居住地域が近接しているというのが八王子の特徴。八王子市役所のすぐ真裏、北浅川と南浅川の合流地点でも、イノシシなどの大型野生動物が目撃されています。この合流地点こそが、都内市街地に置けるツキノワグマ対策の最終防衛ラインで、ここで食い止めなければ甚大な被害が生じかねない。国土交通省や東京都建設局にも協力を依頼し、下草刈りなどの対応を行いました。この他、クマ生息地域やその周辺の学校に通う子どもたちへの熊鈴の配布や、地域の自治会、消防団などへの熊スプレーの配布も行っています。こうした目の前の課題への対応を進めながら、八王子の特性に合ったツキノワグマ対策のマニュアルづくりを策定しました」

 今月中旬には、京都・舞鶴市でのクマの駆除を巡り、自治体に苦情や抗議の電話が殺到した。水際対策が基本の一方で、万が一クマが市街地に出没した際、駆除へのクレームには、どのように対応していくのか。

「舞鶴市は海上自衛隊時代の駐屯地で、個人的にも思い入れがあります。(駆除へのクレーム対策は)すべては情報公開、行政のマニュアルをオープンにしていくことにあると思っています。いきなり緊急対応を行えば、なかなか理解を得られないこともある。行政が今何をしているのかを平時から発信していくことが肝心です。その上で、市民の生命と財産に危害が生じないようにすることは、私たちが担わなければならない最低限の責務であることをご理解いただきたい」

 クマ情報の発信は、危機管理に必要な一方で、観光への風評被害を招く恐れもある難しい問題だ。年間300万人の登山者が訪れる高尾山でも、クマ情報の発信にはさまざまな意見があるという。

「情報を出しすぎだ、政治的パフォーマンスだというご批判もありますが、やはり大事なのは正確な情報発信。ただ『クマが出ている、危ない』というだけでは観光への影響は甚大ですが、同時にどういった対策を講じているかも包み隠さずお伝えしています。情報発信はもちろん、観光客の方々に必要以上の不安や誤解を与えないことも大切。クマを正しく恐れ、正しい知識に基づいた対策を講じていることをご理解いただいた上で、安心してお越しいただけるよう努めてまいります」

 市長自ら狩猟免許取得を宣言し、「最終防衛ライン」としての発信を続ける八王子市の取り組みは、クマ被害や駆除へのクレーム、風評被害に悩む全国の自治体のモデルケースとなるか。

次のページへ (2/2) 【写真】「こんなにデカいの?」市役所の1階に設置された等身大のクマパネル
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