75歳・由美かおる、想定外だった“おばあちゃん”役「私が?」 48年ぶり映画で新境地に挑んだ理由

今年で芸能生活60周年を迎える俳優・由美かおる(75)が、映画『小春日和』(松本動監督、公開中)で48年ぶりにスクリーンに帰ってきた。演じたのは、自身初となる「おばあちゃん」役。いつまでも変わらぬ若さを保ち続ける由美が、なぜ新境地に挑んだのか。撮影現場でのエピソードや、再始動した歌手活動への思いを聞いた。

『小春日和』で“鈴子ばあちゃん”を演じる由美かおる【写真:横村彰】
『小春日和』で“鈴子ばあちゃん”を演じる由美かおる【写真:横村彰】

『小春日和』で“鈴子ばあちゃん”を演じる

 今年で芸能生活60周年を迎える俳優・由美かおる(75)が、映画『小春日和』(松本動監督、公開中)で48年ぶりにスクリーンに帰ってきた。演じたのは、自身初となる「おばあちゃん」役。いつまでも変わらぬ若さを保ち続ける由美が、なぜ新境地に挑んだのか。撮影現場でのエピソードや、再始動した歌手活動への思いを聞いた。(取材・文=平辻哲也)

 映画『小春日和』は、多発性骨髄腫と診断された精神科医で俳優の楠部知子が、「困難に向き合っている多くの人に生きる勇気を届けたい」と自ら企画・プロデュースと出演を務めたヒューマンドラマ。ある出来事をきっかけに家出をした主人公の小春(水村美咲)が、偶然働き始めた病院で、がん患者の由紀(柴田理恵)や主治医の博(佐野史郎)、小春を慕うひより(千原ゆら)らと触れ合い、自分と向き合っていく姿を描く。

 由美が演じたのは、そんな小春の心の支えであり、人生の指針となる「鈴子ばあちゃん」だ。

「最初『おばあちゃん』って聞いた時には驚きました。『私がおばあちゃん?』って」と茶目っ気たっぷりに笑う。

「今まで本当に、年齢よりもはるかに若い役をずっとやり続けていたので、自分がおばあちゃんの役をやるなんて考えたことがなかったんです。でも、15歳でデビューしていろいろな方と出会い、自分も高齢者になって学ぶところがいっぱいあったから……、これ、自分なりに表現できたらいいなと思って、楽しみにしながらお受けしました」

 撮影は大阪の実際のコロッケ店を借り、全編関西弁で行われた。インディーズ系の限られた時間の中での撮影だったが、現場の熱気は長年第一線で活躍してきた由美の胸を打ったという。

「慌ただしいスケジュールの中、スタッフの皆さんが、てきぱきと仕事されてるのを見て、『水戸黄門』のスタッフの方々を思い出しました。時間がないのに次から次へと、一生懸命お仕事されている姿は職人さんのようでした。本当に素晴らしいスタッフの皆さんでしたね」

「今は歌というものに燃えています」と熱く語った【写真:横村彰】
「今は歌というものに燃えています」と熱く語った【写真:横村彰】

主題歌『とまり木』を担当し、久々にCDリリース

 映画としては48年ぶりだったが、ブランクは感じなかった。

「『水戸黄門』(1986~2010年)を25年ずっとやらせていただいていたのですが、映画は久々で、みんなの前で演じるのは楽しかったです」と軽やかに振り返る。「『水戸黄門』もフィルムから、デジタルになりましたが、なるべくフィルムのような感じの映像が撮れるように工夫されていらっしゃるとお聞きしましたが、演じる時は映画だから、テレビだからという違いはたぶんないのかなと。もう周りに支えられましたね」

 完成した作品には、人と人との「コミュニケーション」の重要性を改めて強く感じたという。

「病院でのシーンは印象的でした。がん患者の皆さん(劇中ではキャンサーズを名乗る)は病気なんだけれど明るく、もうわがままであったり個性豊かで、前向きに生きていらっしゃって魅力的でした。やっぱりその人のためになることはちょっと厳しくてもちゃんと話しをして、その人がまっすぐに純粋に生きていけるような導きっていうのかな。私たち年長者が、そういう本当の意味での優しい気持ちを伝えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね」

 現代社会の人間関係の希薄さにも触れ、「最近は顔見たらふっと逃げちゃうような寂しい人もいますが、ぱっとアイコンタクトして安心感があるような、もっと心を開いて人間らしさを出したほうがいい。感情があるからその感情をぶつけ合ってもいいと思うの。けんかしながらでもいいと思う。それがどんどん本当の思いやりの優しさに変わっていくと思うんですね」と力を込める。

 本作では主題歌『とまり木』を担当し、久しぶりにCDもリリース。歌手活動を本格的に再開した。

「歌手活動は私にとって『やり残したこと』でした。若いころは歌って踊ってとやっていましたけど、女優業や呼吸法の講演が多くなってどんどん遠ざかっていったんです。『水戸黄門』が終わって、周りのみんなが『やり残した歌を真剣にやりなさい』と言ってくれて。感情がうまく出せたらいいなと思って、なんか自然に涙が出てきちゃって。それぐらい今は歌というものに燃えています」

 75歳にして新たな扉を開き続ける由美。その瞳は、映画のタイトルのようにぽかぽかと温かく、そして力強く輝いていた。

□由美かおる(ゆみ・かおる)1950年11月12日、京都府生まれ。3歳からバレエを始め、中学時代に西野バレエ団に入団。15歳でテレビ番組『11PM』に出演し、抜群のプロポーションとキュートな魅力で話題となる。1966年、映画『夜のバラを消せ』でスクリーンデビュー。1986年から25年間にわたりドラマ『水戸黄門』に「かげろうお銀」「疾風のお娟」役でレギュラー出演し、入浴シーンはお茶の間の代名詞となった。合気道四段。35年以上続ける呼吸法「由美コア・ブリージング」の指導者として全国で講演活動も行う。血液型A。

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